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ギジン5980号・インターフェイスロボバードの徒然日記


○月×日
僕たちのお父さんが、行ってしまった。
ジェペット博士は、死んでしまったんだ…
前から働きづめで、身体の調子もよくないのに…って、心配してたのに。
ボクは、哀しくて、悲しくて、わあわあ泣いた。
けれど、ギジン5984号は…この間完成したばかりのジョゼットは、いつもと変わらずにこにこ笑っていた。
博士が死んだのに、いつも通りに、にこにこと。
…無理もない、造られたばっかりで、何にもわからないんだから。
ジョゼットは、博士が眠ってしまっただけだって思ってる。
ボクは、ジョゼットがしあわせだとおもった。
そして、馬鹿だとも、かわいそうだともおもった。
でも、ボクは泣いてばかりはいられない。
博士は、死ぬその前に…僕たちに、「ブルーランド」という島に行け、って言った。
そこで「プレイヤーさん」という人の世話になれ、って。
博士がなぜこのコルロ島を離れろ、って言うのかわからないけれど、今のボクたちにはそうするしかない。
不安だけども…ボクは、そうするしかない。
ギジンたちにも博士のことを伝えなくちゃいけないし、いろいろ急に忙しくなった。
荷物をまとめるようにジョゼットに言ったら、何にもわかっていないあの子は、不思議そうな顔でとりあえず片づけをはじめた…
馬鹿なジョゼット。かわいそうなジョゼット。

○月△日
ブルーランドについた。
僕たちは、艦(ふね)をメガフロート・ノアの2番ピアに停泊させ、そこで暮らすことにした。
お隣の1番ピアには、深海猟師のフィッシャさんがいた。
ところが、ジョゼットときたら、アイサツもろくにできないもんだから、フィッシャさんに呆れられてしまった…
そりゃそうだ、博士以外の人間になんて、ほとんど会ったこともないんだから。
でも、これからこの島で暮らすんだから、アイサツくらいはできないと!
そう思ったボクは、早速艦(ふね)のアイテムショップで国語の本を買い、ジョゼットに与えた。
けれど…ジョゼットは、「食物センイ…」とつぶやいたと同時に、それを一気に飲み込んでしまった。
500コルロが一瞬のうちに消え去った。
ボクは泣きたくなった。
博士、ボクもうくじけそう。

○月■日
気力オイルを費やし、何とかあいさつはマスターさせた。
「ウ〜ッス!」は女の子型ロボットとしてどうかと思ったけれど、とりあえず…ってことで。
フィッシャさんも何とか認めてくれたようなので、何よりだ。
お金を稼がなきゃ生活できないので、深海猟師の仕事をすることにした。
深海猟師になるためには、海に潜って貝殻を探してこい、って言われたので、早速やってみる。
…ジョゼットの操縦は、むちゃくちゃだ。
マップのインプットに時間がかかって苦労したけど、やっぱりブルーランドに来る時自動操縦にしておいて本当によかった。
ドルフィン号、壊れちゃった…
ああ、またコルロが減っていく。
アルバイトしなきゃ。働かなきゃ、ボクらの体力オイルも買えないよ…

○月◇日
ジョゼットが、さっきからムカムカしっぱなしだ。
ゴミ捨て場で、ネコに驚かされてきたらしい…
ムカムカジョゼットも怖いんだけど、さっきからそんなジョゼットにしつこく「ネコのぬいぐるみ」を与えさせようとする「プレイヤーさん」も怖いよ…
しかも、ジョゼットが「カワイイ…」って抱きしめたら、それが「×」だって指示出してきてさ。
何させようとしてるのかわかって怖いよ、博士…
どうしよう、ジョゼットが暴力ロボットになっちゃうよ…

○月□日
ジョゼットにヘンな友達ができちゃった…
影響されちゃったのか、ジョゼットがオルゴールかけては「マンキー!」「サティスファクション!」とか言いながら踊り狂っている。
「プレイヤーさん」も調子に乗って、「○」連発しすぎだよ!
ジョゼットの感性回路がメーター振り切れちゃうよ!
あああ、ボクとしてはマジメ回路上げて、ちゃんとバイトに精を出してほしいんだけど…
「プレイヤーさん」もその辺のこと考えてほしいよ…
ゴキブリとか買ってジョゼットに喰わせて、何考えてんの??

○月※日
カレンさんという人のところで、バイトができるかもしれない!
ウェイトレスのバイトらしいので、トレーでモノを運ぶ練習だ!
…そういうわけで、今日一日はそれに費やしちゃった。
トレー、一回食べられちゃったしな…
もう、オイルとプリン以外のモノは食べないように「×」出してくれないかな、「プレイヤーさん」。
飛行機の本もメカマニュアルも百科事典も食べられて…
まったく、コルロがいくらあっても足りゃしないよ!

○月◎日
ジョゼットが、唐突に「人って、カオなのかなあ…?」と言い出した。
間髪いれず「プレイヤーさん」からの「○」の指示が入った。
ボクは、カオがどうだろうと、結局は性能じゃないかなーって思ったけど。
でも、何かジョゼットがションボリしたんで、プリンを食べさせた。
ネクラ回路が起動しちゃったら、言うこと聞いてくれなくなるもんなあ…

○月$日
今日は大変だった…
ジョゼットに料理をつくらせて、カレンさんに食べてもらったけど…どうやら、ひどかったらしい。
「ずいぶん、コセイテキなアジだね…」って言ってくれたけど、顔真っ青だったもん…
失敗だよ…失敗だ!
リョウリの本をインプットさせただけでやらせちゃったのが悪いんだよなあ…
そうだよな、人間はアジを気にするんだもんね。
アジなんてよくわかんないよ、ボクらギジンには!
あああああ、もうボク自己嫌悪だよ…
でも、あんな状態でやらせた「プレイヤーさん」も悪いんだからね!

○月☆日
ジョゼットは、公園にいる女の子たちになんか言われたらしい。
でも、それより「プレイヤーさん」だ、「プレイヤーさん」のせいだ!
何も、「ねえ、私ってニオウ?」って聞いたジョゼットに、「○」出すなんて!
一応女の子型ロボットなんだから、そういうハイリョだって必要なのに!
「私は、クサイ女の子だったのね…」って言ったきり泣き通しだよ…
けれど、うっかりしてたな、ボクも。
次はシャワーの使い方を教えなきゃ。
あーあ、インターフェイスロボの仕事も大変だよ…

○月★日
もう、セにハラはかえられない。
とうとう残りコルロが4しかなくなった…!
深海猟師の仕事も、ビラ配りもやってるけど、それだけじゃアイテムがぜんぜん買えない!
ジョゼットはまだあまり体力がないから、やらせたくなかったんだけど…
プロトン鉱石の採掘の仕事に登録することにした。
まずは、ジョゼットにツルハシの使い方を教えなきゃ。
そのためにはツルハシを買わなきゃで、そのためには他のバイトでお金を稼がなきゃで…
もう!「プレイヤーさん」は無駄づかいばっかりだ!
50000コルロもする水晶玉なんて、何で今買っちゃったんだよ!

▲月▽日
ジョゼットは、「サファイア」という女の子と会ったらしい。
何だか見たところキツそうな子だったけど、ジョゼットと仲良くしてくれるらしい。
よかった…
やっぱり、女の子の友達がいるほうがジョゼットにはいいもんね。
それに、ネコをいじめるようなことがよくないことだってジョゼットがわかってくれたし…
「プレイヤーさん」にも言ってあげてほしいよ、それ。

▲月×日
大発見!
プロトン鉱石って、食べると体力オイルと同じ働きをするみたいだ!
これでジョゼットの体力切れも問題なしだ!
ジョゼットも喜んで、今日も朝から鉱山に入りびたりだ!
けれど、泥と土にまみれて働くジョゼットを見てると、お金が稼げるっていう安心感もあるけど、ちょっと不安。
キンロー少女もいいけれど、もうちょっと内面をみがかなきゃダメなんじゃないかなあ?

▲月○日
お金はもうイヤって言うほど稼げたから、もうちょっといろんなカツドウをしてみよう、ということに。
というわけで、いろんな映画をみることにした。
ちなみに、ジョゼットの感想は↓
ミオロとリジュエット:イチャイチャしてた
バトル・オブ・シリコニアン:興奮した
11のいましめ:不思議
サウンド・オブ・ダンス:マンキーな感じ
マジメな労働者:わりとおもしろかった
う〜ん、映画の影響が、すぐ回路に反応しちゃうみたい。
でも、これは便利。ジョゼットの回路をいじるのに使えそう!
とりあえず、マジメな労働者を3回ほど見せたら嫌がられた。

▲月△日
森で、クララちゃんという女の子と会った。
目が見えないらしく、人工島病院に入院しているらしい。
さっそくお見舞いに行ったら、ちょうどフィッシャさんの奥さんが赤ちゃんを産んだところだった。
フィッシャさん、うれしそうだったなあ…
そのフィッシャさんに向かって「赤ちゃん、しわくちゃでヘンな顔!」ってジョゼットが口走った時は、本当どうしようかと思った。
ああ、ボクにゲンコツがあれば…
あ、でも、セッカンはよくないよね。


▲月■日
深海船工場のガンテさんていう人のところで、ジョゼットがバイトできることになった。
ところが、そこでジョゼットがギジンだってバレてしまった…!
これはまずい!と思ったけど…
でも、ガンテさんはすごくいい人だった!
ジョゼットがギジンだったのに、「オレはギジンが大好きだ!」と言ってくれて…
「いい加減な人間よりも、よっぽどジュンスイで人間らしい」って…
ボクは、胸がじいんとした。
博士は、ジョゼットがギジンであることを隠しておけ、ってボクらに言った。
けれども、もし、この世界の人が、みんなみんなガンテさんみたいなら…

▲月☆日
今日は、哀しいけれど、とても大切なことがあった。
人工島病院で、フィッシャさんのお父さんが死んでしまった…
そのことを不思議に思ったジョゼットに、医学書を読ませた。
そうして、とうとうジョゼットにもわかったんだ…
「死ぬ」ということが。
「死ぬ」ということは、「体の機能がすべて止まって」しまい、「二度とお話できなくなること」だと。
だから、
もう、
ジェペット博士とも、もう、二度と会えないということも…
ジョゼットは、泣いた。
あの日のボクみたいに、哀しくて、悲しくて、わあわあ泣いた。
僕も、それを見て、またわあわあ泣いた。
それでも、
それでも、ボクは思った。
哀しいけれど、それは必要なことなんだ。
どうしても、どうしても、必要なことだったんだ、と。
泣き疲れるほど泣いたら、ふっと感じた。
ジョゼットは、この島に来て…ずいぶん、変わったんだ。
アイサツも、アルバイトも、トモダチと話すことも…みんなできるようになった。
そして、「死ぬ」ということもわかったんだ。
ボクは、思った。
ジョゼットは、もうしあわせでも、馬鹿でも、かわいそうでもない。
それは、もうボクが決めることじゃないんだ―
ジョゼットのしあわせは、ジョゼットが決める。
これからもこの島で、いろんなことがあるだろう。
そのたびに、ジョゼットは変わっていく。




そのために、ボクはいっしょうけんめいがんばろう。




ジョゼットとボクを見守っている、
「プレイヤーさん」といっしょに―