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◆ 破滅的な壊滅〜捲土重来、過去からの再来
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アーガマ・娯楽室。
向かい合うのは、ガンダムZZのパイロット、ジュドー・アーシタと、アイアン・ギアーのメカニック、コトセット・メムマ。
「アニメだもんねええええええええええ!」
「アニメじゃねえええええええええええ!」
「アニメだもんねええええええええええ!」
「アニメじゃねえええええええええええ!」
『ホントのこぉとさああああああああ〜〜〜!!』
片隅には、プルとプルツー。
「…うっく、ひっく…ぷ、プルツーぅ…ど、どーしよ、ジュドーが、ジュドーがぁぁ…」
「み、見るな、プル…見ちゃいけないんだ、見ちゃ…ッ!」

アーガマ・食堂。
向かい合うのは、ウイングガンダムのパイロット、ヒイロ・ユイと、アルトロンガンダムのパイロット、張五飛。
「五飛、教えてくれ…俺は、後何回あの子とあの子犬を殺せばいいんだ?」
「…いや、その…」
「五飛、教えてくれ…俺は、後何回あの子とあの子犬を殺せばいいんだ?」
「お、おい、ヒイロ…貴様、」
「五飛、教えてくれ…俺は、後何回あの子とあの子犬を殺せばいいんだ?」
「…助けてくれ、誰か」
「五飛、教えてくれ…俺は、後何回あの子とあのこい」

アーガマ・廊下。
向かい合うのは、波嵐万丈のアシスタント、ビューティ・タチバナと三条レイカ。
「…はぁ、はぁ、はぁ…」
「だ、だいぶ逃げたわね…うまくまけたのかしら」
「さ、さあ…」
「あっちではファが襲われたらしいけど…」
…その時、突如あらわる黒い影!
飛び込んできたのは、エルレーン。
「?!」
「きゃう〜〜〜〜〜〜〜〜〜☆おっきいおっぱい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜☆」
「きゃ、きゃあ?!つ、つかまないでえッ!」
「ぽよぽよ、ふあふあ、むにむになのぉ!『ぼいんちゃん』なのぉ!」
「ちょ、ちょっと、エルレーンちゃん、痛い痛い痛い痛い!」
「わけてぇええぇぇええ!!わぁぁあぁぁああぁぁけぇぇぇええええてぇぇええぇぇえええぇぇえええ!」
「むむむ、無理だってばー!やああん、勘弁してぇーッ!」
「ひ、ひえー!」
「あっ待ってよレイカ!逃げないでーッ!」
「ぼ、『ボインちゃん』警報発令ーッ!逃げてーッ!」
「レイカーーーーーッ!!」
「『ボインちゃん』狩りよーーーーーッ!エルレーンちゃんが来るわーーーーーーーッ!」
「助けてよーーーーーーーーッ?!」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ…☆」

「そ、そういうわけで!…このアーガマはもちろん、ソレイユも、フリーデンも、アイアン・ギアーも!伝染病が蔓延して、どうにもならない状況だッ!」
「…」
「…」
「…」
そして、アーガマ・ブリッジ。
クワトロ・バジーナに召集を受けたゲッターチーム、流竜馬・神隼人・車弁慶は、無言のままそれを聞いていた。
クワトロの隣には、アイアン・ギアーに同乗している医者、メディックの姿もある。
「ソレイユはロランをはじめ、パイロットはほぼ全滅!ブリッジもてんやわんや!
フリーデンでは、ジャミル艦長以下数名が罹患!もう暴れて暴れて、艦を動かしている場合じゃないらしい!」
「アイアン・ギアーでも、コトセットが…アレ、じゃからのぉ。その他にも、ラグやチルがやられちまったわい」
「あ、あれは、一体何なんですか、先生?!」
「…ラット熱、じゃ」
困惑気味のリョウの問いに、メディックは腕組みをした姿勢を崩さぬまま答えた。
「らっとねつ?」
「原因不明の奇病じゃ」
「…」
「タチの悪いことに、あれにはいくつか段階があってな…はじめの段階のうちは、患者はあのように正気を失ってしまう」
メディックの表情は硬い。
彼の口から語られる言葉も、それを伝える声の厳しさも、事態を相当重く見ているということを示している。
「次の段階では、身体のあちこちが熱を持ち、膨れ上がり…そして、高熱を発し、行き着く先は…」
「…」
思わず、一同は黙り込む。
「行き着く先」は、決まっているからだ。
これだけ多数の患者が出ている状態で、その「行き着く先」にまで病状が到達してしまえば…!
だが、メディックは知っていた。
そこまで状態が悪化する前に、自分たちに出来ることがある、と。
「せ、先生!そ、それ、薬とかないんですか?!」
「大丈夫じゃ…ラット熱には、すでにワクチンが開発されておる!」
「!」
「…よ、よかったぁ…」
「少し大きな町の薬局なら、手に入れることが出来るじゃろう…このあたりなら、ポイントR…じゃろうか」
「そ、そういうことなんだ…ゲッターチーム」
安堵するゲッターチーム(当然のことだ…彼らの妹分とも言える、エルレーンも罹患しているのだから)に、クワトロが説明を継ぐ。
「き、君たちで、ポイントRに向かい、そのワクチンを入手してきてほしいんだ!」
「は、はあ…」
「で、でも、何で俺たちが、」
「この近辺の状況は、今だ調査されていない。ひょっとすると、『敵』が出現する可能性もある…
だが、君たちの真・ゲッターなら、何とか交戦…もしくは、最悪…回避して帰還することが出来るだろう」
「…はい、わかりました!」
「頼んだぞ、リョウ君…急いでくれ、こうしている間にも、みんなどんど」
クワトロの言葉は、そこで突然断ち切れた。
雄たけびが、ブリッジ中にとどろいた。
「…修正パァーーーーーーーーーーーーーンチィ!」
「げ、げはッ?!」
「くくく、クワトロさーーーん?!」
…そして、クワトロは飛んだ。
思いっきり顔をぶっ飛ばされて。
「あ、アムロ君?!何を…」
「歯ァ喰いしばれッ!そんな大人、修正してやるぅぅぅうぅううぅ!」
「いやそれカミーユ君のセリフだから!っていうか、何で私が君に修正を…」
見ると、そこには…拳を固めたアムロ・レイの姿が。
鼻血をぼたぼたこぼしながらも、絶好調にわけのわからないことを叫ぶアムロに突っ込むクワトロ…
だが、そのセリフもまた、そこで突然断ち切れた。
「修正キィーーーーーーーーーーーーーックゥ!」
「のぱりゃッ?!」
再び、クワトロは飛んだ。
「人間」のモノとは思えない悲鳴をあげて。
彼を蹴り飛ばしたそれは、足を雄々しく蹴り上げたポーズで静止する、そう我らが艦長ブライト・ノア。
「ぶぶぶ、ブライトかんちょ…」
「それが『甘ったれ』なんだ!殴られもせずに一人前になった奴が、どこにいるというんだァッ?!」
「む、無意味な暴力反対!!」
『エゴだよそれは!!』
「ぐわーーーーハモりやがったーーーー!」
クワトロの至極まともな反論に対し、罹患患者二名は…シンクロ具合も見事な指差しポーズをびしっとキメ、高らかにとどめのセリフをハモらせた。
その光景を、もはや遠くから見ているしかないゲッターチーム…
ブリッジの(まだラット熱に感染していない、無事なメンバー)は、ブリッジ中央で始まったバトルロイヤルをすでに見てみないふりをしている。
「…先生…これ、本当に病気の症状なんですか?」
「おお」
「何か、俺の目には…それにかこつけてストレス解消でもしてるように見えるんスけど」
「…アホか、早く行って来い!これをほっとくと、死んじまうんだぞ!」
ベンケイの素朴かつ真芯を突く質問を怒鳴り飛ばし、ドクターは三人を促した。

「いやー案外楽勝だったな。な、リョウ?」
「そうだな…」
編隊を組み空を行く、三機のゲットマシン…真・イーグル号、真・ジャガー号、真・ベアー号。
ポイントRで首尾よく相当量のワクチンを入手したゲッターチームは、すぐさまに帰還すべく、道のりを急いでいた。
「早いこと帰らなきゃあな…エルレーンの被害がこれ以上拡がらないうちに」
「ああ…」
くすくすと微笑いながら放たれたハヤトの冗句に、リョウも苦笑を浮かべる。
そう、あんな風になっていても…皆、病に苦しんでいるのだ、早くワクチンを持っていってやらねば。
リョウたちの駆るゲットマシンは、空を滑るように舞う。
周りの景色は飛ぶように流れ、あっという間に風景が移り変わっていく…
そして、ポイントRから遠ざかるにつれ、やがて目に映るものは茶色い大地と岩山のみになった。
ごつごつした岩肌は、じりじりと照りつける陽光を吸い込み、無機質なその表面をぎらつかせている。
灼熱の荒野、生命の影の見えない、死の荒野。
だから、彼らはまったく予想も出来なかった。




自ら手の内に飛び込んできた獲物を屠らんとする獰猛な龍が、その下に潜んでいたことなど―




『?!』
「な…こ、これ?!」
「しまった…!」
レーダーに、突如大量の光点が踊った。
それとほぼ同時に、大地があちこちで穿たれる。
地面を貫いて空中に飛び出す、影、影、影。
ゲットマシンの存在を知ったそれらが、取り囲むかのように姿をあらわす。
影は吼え、影は雄たけび、影は唸る。
日光に照らされたその影は、その光をはねかえし輝く…
猛る恐竜の姿となって!
「!」
「メカ…ザウルス!」
「ちっくしょう、恐竜帝国かッ!」
一瞬のうちに周りを囲まれたゲッターチームの間に、冷たい緊張が走る。
その総数は、十二、三機…
姿かたちも様々なメカザウルスたちは、明確にこちらにその敵意を向けている。
「どうする、リョウ?!…真・ゲッターなら、何とかやれるだろうがよ?!」
「だ…だが、しかし!ワクチンを少しでも早く、皆のところに持って行かないと…!」
挑まれた戦い、逃走の必要性。
その二者の間で、惑うリョウ…
「敵」であるこのメカザウルスたちを叩き潰さねばならない、だが一刻も早くワクチンを持っていかねばならない…!
だが、決断をくだすそのわずかな時間すら与えられなかった。
群れるメカザウルスの中、大地を踏みしめて立つ肉食恐竜が…その背には直線的な鋼鉄の翼が備え付けられ、銀の装甲が彼の身体を覆う…一歩、前に進み出た。
残りの機械蜥蜴たちは、動かない。その一機の動きに、注目しているようだ。
思わず、リョウたちもそのメカザウルスに視線を集めてしまう。
ゲットマシンの音声回線が外部割り込みで開いた。
そこから伝わる声は、涼やかにリョウたちの耳に鳴り渡った。
「…ゲッターロボ、そして、ゲッターチーム。
この未来の世界においても、お前達と剣を交える事になろうとはな…」
そのリーダー格と思われるメカザウルスからの通信だった。
何処か憂いを秘めたその声は、それでいながら穏やかで…だが、覚悟を決めた者の落ち着きがあった。

そして、その声を、リョウとハヤトはかつて聞いたことがあった―

画像回線が、開いた。
モニターがかすかにさざめきながら、その声の主の姿を造り出す…

その瞬間。
彼らの疑念は、確信に変わった。

モニターに編み出された、メカザウルスたちを率いる者の顔…




その中でひときわ異彩を放ちきらめき輝くのは
あの、忘れようにも忘れられない、美しい金色の瞳




澄んだ金色の瞳が、まっすぐにこちらを見返していた。





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