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◆ super robot wars alpha gaiden another story epilogue
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「…」
「…」
薄ぼんやりと光る巨大な遠見水晶から、二人の視線は離れない。
そこに何の映像も映らなくなってからも、彼らの視線は動かない…
遠く離れた荒野で、甲児たちによって敗れた戦闘獣ダンテ…その最期を、彼らはマシーンランドから見ていたのだ。
「あのダンテが、負けるとは…」
ゴーゴン大公の嘆息。
信じられない、という顔つきで…
だが、その時だった。
響き渡る忍び笑いが、闇を揺らした。
「くっくっく…」
「!…暗黒大将軍?」
「…プリベンター、か…なるほど、な…」
暗黒大将軍は、静かに笑っていた。
それは、闘志に燃える「戦士」の笑み。
「やるではないか、『人間』どもめ…そう来なくては、おもしろくない」
「暗黒大将軍…」
「…ゴーゴン大公よ、決戦の時は近いようだ。準備をする必要があるな」
「ええ…そうですな」
ゴーゴン大公も応じ、静かにうなずいた。
彼が胸のうちに燃やすものは、暗黒大将軍と同じ…
暗黒大将軍が見つめる、遠見水晶…
その中に、彼は…あの少女を、今はあの「No.39」とか言うモデュレイテッド・バージョンに取り込まれたという、あの少女の姿を一瞬見たような気がした。
(小娘よ…お前が望んだ、あの『自由』の蒼天は)
彼は、こころの中で…今はすでにこの世にいない、その少女に呼びかけた。
(我らとて、「ハ虫人」たちとて、同じく望むものなのだ…それゆえ)
暗黒大将軍の瞳が、ぎらり、と光った。
「容赦はせんぞ、『人間』どもめ。次に、合間見える時は…」
暗黒大将軍の言葉は、途中で…闇の中に、かき消えていった。

「…そ、そういうわけでしたが、あ、あの…ダンテ殿が、あれほどに簡単に屠られてしまうとは、あの…」
「…もう、よい」
帝王ゴールの短い一言に、ガレリイ長官は言い訳をする口をつぐまねばならなかった。
恐竜帝国マシーンランド・帝王の間。
ガレリイ長官の敗戦報告を聞く帝王の表情は、かすかな落胆の色をにじませてはいるものの…
その無様な結果に動転する様子も激昂する様子も見せてはいない。
嘲りあなどっていた「人間」に、またも敗北を喫した…
その屈辱的な事実を、避けることなく重く受け止めている、ということだ。
「…結局、奴らにまたしてやられた、というわけだな…」
「も、申し訳ございませぬッ!」
「はっ、愚か者め!真・ゲッターに続いて、マジンカイザーをも奪われるとは!この失策、いかにして償うつもりだ、ガレリイよッ!」
「…〜〜ッッ!!」
「よせ、バット将軍よ」
バット将軍の言いたい放題の罵倒に、ただ頭を垂れて歯噛みするばかりのガレリイ長官…
が、帝王の低い声が、それを止ませた。
二人の視線が、玉座の主に向けられる。
帝王ゴールは、沈痛そうに両目を閉じ…半ば独り言のように、吐き出した。
「ゲッターチーム、そしてプリベンター…『人間』どもは、我々の想像以上の力を持っておった。それだけのことだ」
「し、しかし、ゴール様…」
「だが」
帝王が、再び瞳を開く。
紅い瞳が、静かな、だが堅固な意思でらんらんと光っている。
「だからと言って、あきらめることは出来ぬ」
その『ハ虫人』の瞳が見据えるのは、希望に満ちた遠き「未来」―
「我々には、誇りがある!あの地上を統べるべき種としての、『龍』としての誇りが…!」
『…!』
帝王の言葉が、広がる薄暗闇に吸い込まれていく。
わずかに反響しながら広がっていくその言葉は、強い信念と自負に満ちたものだった…
己が種族、ハ虫人類…「龍」の末裔としての誇りに―!
「その誇りにかけて…必ずや、次こそは、」
帝王の喉が、唸った。
厳かに鳴り渡るゴールの声が、猛る熱をはらんで闇に響き渡っていく…




「次こそは、彼奴らを倒すのだ!ゲッターチーム、そしてゲッターロボを…!」




闇を吹き抜けていく風が、低く唸り返した。





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