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◆ the decisive Battle(2)
 <Libera me〜Lacrimosa, dies illa(私を解き放ちたまえ〜涙の日)>
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夜空にきらめく無数の綺羅星、そして月。
その月光が、今…少年少女の駆る、四体の「兵器」を照らし出している。
ゲッタードラゴン。ウォーカーギャリア。ガンダムエックス。そして…真・ゲッター1。
荒野に立ち尽くす、同じ陰影で染め上げられた四機の姿…
あたかも、それは映画の一シーンのように。
そのやりとりを見守っている、母艦の中にいる「仲間」たちの目の前で…その舞台は異様な静けさを誇っていた。
通信画面の中、少女はさきほどからずっと口をつぐんだままうなだれていた。
その表情は見えない。
じっと動かぬまま、何かを考えているようだ…
「…」
「なあ、No.0…それに、さ」
ジロンに続き、ガロードが彼女に穏やかに話しかける。
「…俺たちの部隊は、元『敵』だった奴とかうじゃうじゃいるくらいでさ、…変な言い方かもしれないけど…居心地いいと思うよ?
…わざわざ、新しく生きてくところ探さなくったってさあ…ここに来ればいいんだよ、No.0」
「…」
「それに、リョウさんの言葉は嘘じゃない。『敵』だろうが何だろうが、お前のこと本当に心配してるんだよ。
…プリベンターの『仲間』が、いくらお前を殺そうとしても、その度に懸命になって反論して、お前のこと救おうとして…
まるで、『おかあさん』みたいにさあ」
「…」
「No.0。…お前はやっぱり、リョウさんたちと一緒にいるべきなんだよ。
…だから、出てきなよ。そんで…俺たちと、一緒に行こうよ…」
「…」
No.0は終始無言のまま。ガロードのほうを見やりもせずに…
そして、再びの空白。
誰も何も言わぬまま、真・ゲッター1を見ている。
彼女の「答え」を、リョウたちは黙って待っている。
風切り音。乾いた砂が吹き散らされていく。
だが。
長い長い長い沈黙の後、少女が出した結論は…彼らの想いを裏切っていった。
「ダメだ…」
「え…?!」
ぽつり、と、あまりに小さくつぶやかれたNo.0の言葉。
それがよく聞き取れず、耳をそばだてたガロードたち…
彼らの表情が、次の彼女のセリフで動揺に変わる。
「やっぱり、ダメだ…」
「な、No.0…?!」
「俺は、やっぱり…ゲッターチームを、殺さなきゃ、いけない…!」
「…!」
「な、何でだよ?!何で?!そんな…」
震える声で、彼女はなおもそう結論付けた…
失望とやるせなさで泣きそうな顔をしたジロンが叫ぶ。
しかし、No.0はその時、再び面を上げ…悲痛な表情を浮かべ、彼に向かってこう言い放った…!
「…お、俺には…あいつが、ロウが、いるッ…!」
「!」
…そうだ…彼女には、唯一無二の、人ならぬ友が在ったのだ…
かつても共に死出の旅路を往った、そして今もお互いを信じ護りあう…硬い絆で結ばれた、あの機械蜥蜴が!
「あ、あいつを、恐竜帝国に置いて行くことは、出来ない…お、俺は、あいつを置いてはいけないッ!」
「う…」
「メカザウルスのあいつを、『自由』にしてやるためには…お、俺は、やっぱり!流竜馬を、ゲッターチームを、殺さなきゃならないんだよぉッ!」
「No.0…!」
言葉を失うガロードたち。
彼女とメカザウルス・ロウとの間にある、強い結びつき…その強さがわかるだけに。
「あいつは、俺の『トモダチ』なんだ!俺を守ってくれる、俺のために戦ってくれる!
…あ、あいつも、『自由』にしてやるためには…やっぱり、お前らを殺さなきゃならねえんだよ…ッ!」
「…!」
「…俺は、俺だけは、あいつを裏切らない!俺は、あいつを救ってみせる…!」
そして、No.0はリョウたちをねめつけながら、だがどこかつらそうな表情をしたまま…吐き捨てるかのごとくそう言い放つ。
己が友を救わんと、そのために彼らを殺す、と。
「…だから、」
彼女の表情が…その刹那、一変した。
そのリョウのクローンは、にこりともせずに…まったく真顔で、冷静に言い放った。
「俺のために死んでよ、…『おかあさん』?」
「!」
凍りつき、言葉すら発せなくなったゲッターチーム。
その彼ら目がけ、ゲッタードラゴン目がけ…真・ゲッター1が、何処からともなく取り出した、身の丈ほどもある巨大な光線銃を構える。
ゲッターブラストキャノンの照準は、ゲッタードラゴンへぴたりと合わされた。
「ジロン!ゲッタードラゴンをガードするぞ!」
「ああッ!」
だが、それをすばやく見てとったガロードとジロン。
すぐさまゲッタードラゴンの前へと滑り出、己が機体を彼らの楯、彼らの壁とする…!
「!…ジロン、ガロードッ!…やめろ、そこをどけよォッ!」
『嫌だッ!』
No.0の叫びに、ガロードとジロンの抵抗が調和(ユニゾン)を為して応えた。
彼らのセリフに、一瞬、No.0の表情が哀しみでゆがむ…
そして、彼女の震える唇は…やるせなさを叩きつけるかのようにこう叫んだのだ!
「どけよ、どけってば!…畜生ッ、そうでないと!…お前らにも、当たっちまうだろうがッ!」
「…!」
静かなざわめきが、プリベンターや未来世界の「仲間」たちの間に生まれて拡がっていった。
驚きをもって、彼らは邪神を見る…
あの狂女…いや、狂女だと今まで思い込んでいた少女の在る、真・ゲッター1を…!
「そこをどけよ、早く…ッ!」
「嫌だって言ってるだろ!俺たち、死んでもどかねえぜッ!」
「俺たちが邪魔なら、殺してひっぺがえしてけってんだッ!」
「…〜〜ッッ!…お、お前ら、まだわかんねえのかよぉッ?!…俺は、俺は、ッ!」
じゃきん、と音を立て、真・ゲッター1の手の中に在る光線銃…その銃口がゲッタードラゴンから、天に向く。
ゲッタードラゴンの前に立ちはだかる、彼らからそらされる…
「…俺は、お前たちを傷つけたくはないんだ!」
「!」
「俺が殺すのは、ゲッターチームだけでいいんだッ!…だ、だから、お前らまで怪我させたくないッ…!」
「やさしいこったな、No.0ッ!…だけど、絶対どかないよッ!」
「ジロン…!…な、何で、何でそこまでして、そいつらをかばうんだよッ…?!」
「…お前勘違いしてるぜ、No.0!俺たちがかばってんのは、リョウたちだけじゃないッ!…お前もだ、No.0ッ!」
「…!」
ガロードの言葉に、No.0は少しいぶかしげな顔をした。
しかし、ガロードはきっぱりと言ってのける…
「リョウさんたちを殺したら、お前…お前、何処へもいけなくなるぞッ!」
「何…?!」
「自分の兄弟を殺したら…お前は、この世界の何処へ行っても、それから逃げられない!一生ついてまわるんだッ!」
「一生お前は救われない!一生、苦しみ続けるんだッ!」
「け…けど!」
少女の表情に、やりきれない苦悩がよぎる。
紅く色づいた唇が、その行き場のない怒り、哀しみ、苦しみといった感情を…今まで繰り返してきた不変の定言に込め、一挙に吐き捨てた。
「お、お前らには、わかんないよッ…お、俺は、『兵器』なんだぞ?!」
「…!」
「げ、ゲッターチームを抹殺するため!ゲッターロボを破壊するため、って!
俺は、そのためだけに造られた流竜馬のクローン!…そ、そんなイキモノが、他にいるかよッ?!」
「…No.0…」
「俺は、そのためだけに造られた!…俺は、戦うために、造られた…だから、戦う!」
「ば、ばっかやろう…!お前、俺がさっき言った事、聞いていなかったのかよ!それは、だから…」
「うるさい!…ジロン、お前にはわからない!」
異論を叫び返すジロンに、やはりNo.0はぞんざいに怒鳴りつける。
しかし、追い詰められた彼女の顔に浮かぶのは、どうしようもなく深い煩悶だ。
「No.0…ッ!」
「もとから、『人間』だった、お前になんて、わからない…ッ!」
「…!」
それが証拠に、そういった時、No.0の表情が…一瞬、泣き出しそうなまでに大きくゆがんだ。
「オープン・ゲーット!」
少女の絶叫が、闇夜を裂いた。
「?!」
「な…」
刹那、真紅の巨人は三機の戦闘機に分離した!
…そして、飛燕のごとくに飛び交い…No.0の放つ命令で、新たなる巨人へと姿を変えてみせる。
「チェンジ・真・ゲッター2!スイッチ・オンッ!」
真・ベアー号に真・イーグル号が後方から突っ込む。
胴体部・脚部と変化した二機は、そのまま真・ジャガー号を刺し貫いていった…!
「?!」
「か…カタチが、変わった?!」
「真・ゲッター2…?!」
先ほどとはうってかわって、細身のフォルム。
だが、その右手には、己に抗する者を全て砕くであろう、鋭く尖ったドリル…
それは、純白の真・ゲッターロボ…最凶のスピードを誇る形態、真・ゲッター2!
その真・ゲッター2は、一瞬…ざっ、と地面を軽く蹴った。
次の瞬間、しかし…その姿は、闇に尾を引く真白き流星になる!
「…う、うおおぉぉおおおぉおおぉぉおッ!!」
跳ねる。舞う。飛ぶ。
まるでゲッタードラゴンら三機のマシンを取り囲むかのように…!
あまりにそのスピードが速すぎるため、その動きを追うのも至難の業だ。
もはや常人の目に、それはロボットの形を為してみる事は出来ない…
闇にひらめいているのは、ただ真っ白い筋だけだ!
「!」
「な…なんてスピードだ?!」
ゲッタードラゴンがその高速移動に必死についていこうと頭をめぐらすが…
しかし、はたから見ていれば、彼が馬鹿か間抜けのように見えてしまうほど、その動きはまったくといっていいほど流星についていけていない。
白き影はそんなゲッタードラゴンを嘲笑うかのように、きょろきょろとしているその真後ろで停止した。
突如現れた白い悪鬼に、リョウがようやく気づいた時。
「おらぁッ!」
「ぐうッ?!」
「…があッ?!」
リョウたちが衝撃にうめき声を上げる。
真・ゲッター2のミラージュドリルが、したたかにドラゴンの背を打ちつけた。
そしてすぐさま高速移動状態に移る…
どさあっ、と大地に倒れ付すゲッタードラゴン。
ドラゴンのマッハウィングは、今のたった一撃でずたずたにされていた。
「No.0ッ!やめろッ!」
「げ、ゲッタードラゴンじゃ、ついていけないのか?!」
「…!」
真・ゲッター2の超高速移動モード、真・マッハスペシャル…
ゲッターロボGの空戦用モードであるゲッタードラゴンでは、その動きを捉えきれないのだ…!
その様を目にしたティファ…
彼女は、ふっと短く息を吐き出し、そして一旦大きく深く吸い込んだ。
そして、感覚を研ぎ澄ませる。
邪神の描く「だろう」軌道を、未来の在り様をこころの中からイメージにして引き上げる…!
閃光。彼女は、再び目を見開いた。
「ガロード!もう少し、右へ向けて!」
「え…?!」
ティファの鋭い命に、思わずたじろぐガロード。
彼女が指差した方向は…何もない、誰もいない空白の場所。
自分がゲッタードラゴンから離れてしまえば、なおゲッターチームが攻撃を受けやすくなるのでは…と案じたガロード、彼は動けないままでいる…
「そのまま、真っ直ぐ!」
「で…でも!」
「いいから…!」
「あ…ああ!」
だが、ティファが再三促すに至って、ようやく彼も思考で鈍った腕に力を込める…
そして、彼女の示したとおり、何もない空間に向かってガンダムエックスを走らせた!
が…彼が数歩も行かぬ、その瞬間。
高速移動状態から、ゲッタードラゴンを再び攻撃すべく真白き邪神が姿を為した。
だが、そのミラージュドリルの先には…何と、ガンダムエックスの白い機体!
真・ゲッター2の軌道を遮るかのように走ってくるではないか、まるでこちらの動きを予測していたかのように…!
凶悪なドリルの切っ先は、まっすぐゲッタードラゴンに…そして、あたかもその前に立ちはだかるような形となってしまった、ガンダムエックスにまっすぐ向かっている!
「?!」
「な…ガロード、ッ?!」
どくん、と、彼らの心臓が、同時に奇妙なリズムを刻んだ。
そして、瞬間停止した。あまりのショックで。
息まで止まるかと思われるその瞬間…
状況を、そしてその後に起こるであろう避けがたい破滅を理解したガロードとティファ…
彼らの顔を、恐怖の色が一挙に染めあげていった。
「う、うわあぁぁあああぁぁああ?!」
「…!」
ガロードの驚愕の悲鳴。
通信機から伝わる「トモダチ」のその声は、瞬時にNo.0の脳を突き抜けていった。
「お、オープン・ゲェット!」
焦燥交じりの絶叫は、夜闇を貫き、確かにそう響いた…!
「?!」
「な…し、真・マッハスペシャルを、途中で…?!」
「あ、あんな急に合体解除(オープン・ゲット)したら…ッ?!」
ハヤトが驚きのあまり、かすれた叫びを上げる。あまりに突然で危険な行為に及んだNo.0に。
彼らは知っていた、その機体が持つ機能、そしてそのすさまじい威力を…!
そう、かつてその邪神を駆りて戦っていたのは、他でもない彼らゲッターチームだったのだから!
ガンダムエックスを刺し貫くその寸前に、真・ゲッター2は…三機ばらばらのゲットマシンへと分散した!
そして、すぐさま急旋回を図る三機のゲットマシン…
ガロードたちの眼前すれすれで、その影が勢いよく跳ね飛んでいった。
だが、高速移動中の真・ゲッター2が保っていた慣性の威力はすさまじく…
その力は、三機に分散したゲットマシンそれぞれに襲い掛かり、それらはまったく制御する事すら出来ず、強烈な重力を帯びて三機ばらばらにかっとんで行った。
身体を強張らせ、激突の衝撃に対し構えていたガロードとティファ…
だが、何も異変が起こらぬことに気づき、恐る恐る目を開いてみる。
拡がるその視界の中に映しだされたモノ。
真・ジャガー号が放り出される。真・ベアー号が地面を擦る。
そして、真・ゲッター2の脚部を構成していたゲットマシン、真・イーグル号…その真紅のマシンは、まさしくはじけ飛ぶようにして後方に投げ出された。
「…いやああぁぁあああぁああぁあぁああぁ?!」
強烈な遠心力で吹っ飛ぶ真・イーグル号…コックピットのNo.0は、身体がシートにめり込むと思えるほどのGを受け、悶絶する。
があん、と強い衝撃。真・イーグル号の胴体が、合体解除時の衝撃を和らげる事も出来ないまま、猛スピードで地面に激突した。
「があ、ぐはッ?!」
回転し、転がり、跳ねるゲットマシン。その揺れに翻弄され、連続してコックピットに叩きつけられるNo.0の肺腑から、苦痛のうめき声が搾り出される。
「No.0ッ?!No.0ッ!」
「う…うう、うあッ」
チルが必死になってNo.0に呼びかけんとする…
が、彼女が明瞭な返答を発するより前に、No.0の唇から大量の鮮血がぼたぼたと落ちてきた。
口中に鉄の味が広がる。
激突のショックで口内をひどく切ってしまったようだ…
その血の味はいつまでもNo.0の舌の上に残り、なかなか消え去ろうとはしない…
「No.0ぉッ!痛いのかあ、大丈夫かあッ?!」
「…ちる…」
「もう、止めようよおッ!アタイ、もうヤダ…!…ね、No.0、出てきてよおッ!」
「…」
チルは懇願する。だが、No.0からの返答は皆無のまま。
ひゅうう、ひゅうう、という、風を切るような細い呼吸音だけを立てながら、半ば死人のように生気のない表情で、No.0はそれをぼんやりと聞いている…
それを見たリョウ…ゲッタードラゴンが、静かに真・イーグル号の前に歩み出てきた。
「No.0…お前、今…何故、危険を冒してまで合体を解除したんだ?」
「…」
「ガロード君とティファさんを、守るためだろ…?そうだろう、No.0?」
「…」
「お前は、自分の身を張ってまでそんなことができるぐらい、本当は…」
「…」
No.0は、やはり何もいわないまま、リョウの言葉を聞いている。
彼女は、軽く目を伏せた。
「…No.0。だから…俺たちは、お前を殺したくない。
…出てくるんだ、No.0。俺たちは…お前を、ひとりにはしないから…!」
「…」
そうして、もう一回目を開く。
ガラスのような瞳が、混乱と疲弊とでうすぼんやりとくもりきっている…
だが。
それでも、とうとう再び開かれた彼女の唇がつむいだのは…
「…ち、チェンジ、真・ゲッター、1…」
「?!」
「な、No.0ッ…?!」
「…スイッチ・オン…ッ」
戦いへの意思、そのモノだった…!
再び合身する三機のゲットマシン。
そして、ゲッタードラゴンのそのすぐ目の前で、邪神は形を為してそびえたつ…!
「…!」
ゲッターチームの間に緊迫が走る。
「…」
ゲッタードラゴンの頭部…そこにあるコックピットが、ガラス越しに見える。
見える。自分のオリジナルの姿、自分の殺すべき「敵」の姿が…
真・ゲッター1は、再びゲッタートマホークを振り上げた。
「…う、うらあぁあああぁああッ!」
「…はぁッ!」
斧の一撃。それに、リョウは斧ではなく、ゲッタードラゴンの両腕で応じた。
ゲッタートマホークの刃、その刃先がゲッタードラゴンの顔面すれすれまで近づいた時…タイミングを見事見計らい、ゲッタードラゴンの両腕がそれを挟み込んだ!
それは、あたかも剣豪の見せる真剣白羽取りのごとく…!
ぐぐっ、と強まる、斧を握る手にかかる抵抗。
「?!…ぐ…う?!」
「ふ、ふふ…だ、伊達に、俺がお前のオリジナルなんじゃ、ないんだぜ!」
「う、うるせえ…その、やかましい口も、もうきけなくなる!」
激しい攻防に脂汗を流しながらも、軽く笑みながらおどけたようにそう言ってみせるリョウ…
怒号でそれを跳ね返すNo.0に、にわかに真剣な表情になったリョウが、今まで幾度も交わしてきたあの問いをまた繰り返す。
「No.0…お、お前は、何故俺たちを殺そうとする…?」
「何度も言ったはずだ!てめぇらは、俺の『敵』!殺すべき『敵』だからだ、ゲッターチーム!」
「はッ…だ、だったら!…『敵』じゃなくなりゃ、いいんだろッ!」
「?!」
目を見開くNo.0。
その彼女を真剣なまなざしで見つめたまま、リョウはこう絶叫した…!
「だったら!…今日から、俺は、お前の『仲間』…お前のッ、『トモダチ』になってやるッ!」
「?!」
「メカザウルス・ロウの事も、俺が何とかしてやるッ!…だから、俺たちのもとに来いッ、No.0ぉッ!」
「ば…馬鹿か、てめぇ!…な、何わけのわからねぇこと言ってやがる?!お、お前は…本当に馬鹿だ、流竜馬…ッ!」
「はん!馬鹿で結構だ!…だがな、No.0!何と言われようが、俺はお前に殺されてやるつもりもないし、お前を殺しもしない!
俺は、お前を救いたいんだ!」
「…!」
だが、いくら馬鹿扱いされてもリョウは退きはしない。
彼はただ繰り返すだけだ、愚かかもしれないが、だが大切な己の信念を…!
ハヤトとベンケイが不敵に笑んだ。そして、こう叫んでリョウに和する。
「あきらめたほうがいいぜ、No.0さんよ!こいつはな、史上最強の馬鹿野郎なんだよ!
いくら自分が殺されそうな目にあってても、それでも相手のことを助けようとして…エルレーンが死んじまう運命まで変えちまうほどの、大馬鹿野郎なんだよ!」
「ああ、そうだぜ…!…おまけに、一旦思い込んだらしつこいんだぜぇ!
殺されたって、きっとゾンビになってでも生きかえってくらぁ!…No.0、お前を救うためにな!」
少女の玻璃の瞳が、浮かんできた透明な液体で揺らいだ。
「…う、う・る・せ・ええぇええぇええぇぇえええぇッ!!」
荒れ狂う混乱に流されるまま、それでもNo.0はリョウたちをはねつける…!
斧に更なる力が込められる。ゲッタートマホークの刃が、ぐん、とゲッタードラゴンに近づいた。
歯をぎりぎりと喰いしばり、リョウは全力かけてそれに抵抗する…!
「…な、No.0ッ…!…俺は、俺は…!…おまえ、を、」
押される力に耐えかねたゲッタードラゴン…彼が力負けし、大地に片膝をついた。
衝撃と激音が、大地を揺さぶっていく…
その二つが、リョウの続きの言葉をかき消してしまった。


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