A War Tales of the General named "El-raine"〜とある戦記〜(21)


「小説・衛将軍昇進試験コネタ〜その後」

*次の日の朝*

キャプテン・ラグナ「+(0゚・∀・) + ワクテカ +車弁慶殿、それで昨日はどうでした?」
車弁慶「( ゚Д゚)ハァ?なんだ、昨日がどうした?」
キャプテン・ラグナ「+(0゚・∀・)だからー、うまくいきましたか、とお聞きしているのですよ」
車弁慶「( ゚Д゚)うまくいく?何がだ?」
キャプテン・ラグナ「(・∀・;)…え、じゃあ、…何もなかったんですか?本当に、何も?」
車弁慶「( ゚Д゚)…何のことだかちっともわからん、ただ俺はあいつを家に放り込んできただけで」
キャプテン・ラグナ「(・∀・#)…まったく!あなたって人は、本当に!
ここぞって時に決められない優柔不断な人ですね!」
車弁慶「Σ(゚Д゚;な、な、何をいきなり怒っているのだ、キャプテン・ラグナ?!」
キャプテン・ラグナ「(・∀・#)失望です!もうがっかりですよ、車弁慶殿!」
車弁慶「( ゚Д゚;)…(お、俺は何故、今こいつに真剣な顔で怒鳴られているのだろう…)」





〜そして〜




「…」
「ねえ、何なの?弁慶先生」
「…いいから、ついてこい」
翌日、昼下がり。
車弁慶に連れられて、エルレーンは市場に来ていた。
理由を問うても、彼は何も言わないまま。
そして、彼の歩みが止まったのは…骨董商の、店の前。
なかなかの高値で取引される珍しい服飾や家具が所狭しと並んでいる…
店構えの前で、車弁慶は立ち止まったまま、動かない。
いぶかしげに彼を見る少女の視線にも、答えない。
「…?」
「…何でもいい。好きなのを選べ」
「え?どうして?」
きょとん、となったエルレーン。
問いかけても、偃月刀使いはちっともこっちを見返さないまま…
そのまま、やや赤くなった顔のままで、下を向いたまま、
とうとう…ぼそり、と、彼は吐き出した。
「…昨日の、詫びとでも思ってくれ」
「…」
耳まで朱に染めて、視線をまったく合わせないで。
何処かふてくされたような態度のまま、短く言うだけ言って黙り込んでしまった。
…ひょい、と、伏せられた顔を覗き込もうとする。
と、また、ぱっ、と顔をそっぽに向けてしまう。
意地でも、羞恥の色を呈している自分の表情を、彼女に見られまいと。
「…えへへ、」
ふっ、と、少女の面に、柔らかな笑みがこぼれ出る。
(それはもう聞いたから、いいのに…)
だが、まあ。
せっかく買ってくれる、というものを、無碍にすることもない。
たくさん並んだ素敵な商品の群れに、エルレーンは期待の目を向ける。
「じゃあ…これッ!」
「それで、いいのか?」
「うん!」
しばし、豪奢な服飾たちを、わくわくした瞳で見回して―
彼女が選んだのは、真っ白い百合の花をかたどった装飾品・百合花飾(ユリカショク)。
「…ねえねえ、弁慶先生」
「何だ」
「ふふ、かわいい…?」
「…」
呼びかけられて、頭を上げると。
黒髪に、百合花飾を飾った宝剣使いの少女が嫣然と自分に微笑みかけている。
清楚な百合の花は、彼女の愛らしさをよりひきたて、美しく見せる―
だが、それをそのまま口に出来るようなある種の根性など、この剛直一本槍の男にあるはずもなく。
…かあっ、と、顔を赤くしたまま、うつむいて。
「お、俺は…そういうのは、全然わからん」
ぼそぼそ、と、負け惜しみみたいな、言い訳みたいな言葉を口に出来ただけ。
「もう…!」
少女は、ちょっとばかりむくれた風を装って見せる。
けれど、そんなことはエルレーンだってわかっている。
そう、この厳格なる偃月刀使いは、そんな男なのだ。
恥ずかしそうに戸惑いながら、所在なさげに金色の短髪をせわしなくいらっている…
それでも、これが彼なりの誠意なのだから。
彼女だって、わかっているのだ。
ぶっきらぼうで、天邪鬼で…そして、自分のことをとても大切に思ってくれている。
彼は、そんな男なのだから。

「…」
「…」
「…う〜ん、まあ行動に移しただけはマシですが」
…少し離れた、曲がり角の影から。
四つの目が、その有様をつぶさに観察していた。
ため息混じりにそう評したのは、やはりあの蛮拳使いのキャプテン・ラグナ。
どうやら、彼は偃月刀使いの言動に合格点はやれなかったらしい。
「それにしても、即物的ですねぇ…
モノを渡すことくらいしか思いつかなかったんでしょうか」
「…」
「ああいう場面でも、女性に何かしら言ってやるべきでしょう。
せっかくの好機だというのに!」
種々の問題点を次々にあげつらう彼に、同行するキャプテン・ルーガが一言。
「…キャプテン・ラグナ、あなた…本当に楽しそうだな」
「え?」
「もともと、今回はあなたがいらぬ口を挟んだからこうなってしまったのでは?」
「とんでもない」
キャプテン・ルーガの呆れ入ったような口調に、殊更に演技じみた返答をかえす。
そうして、また、あの穏やかで底知れぬ微笑を浮かべて、平然と―
「私としては、少しでもあの硬骨漢が前に進めるようお手伝いをしているつもりなんですがね」
「どうだか…!」
こんな風に抜かした蛮拳使いに、流麗なる双戟使いは軽く鼻白み、何処か非難めいた目線を彼に向けるのだった。

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