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青春Fire!〜知力・体力・チームワーク!〜(4)


司会の河豚澤朗(ふぐさわ・あきら)アナが舞台から降りる。
それに続くように、マイクを握ったスタッフが俺たちに明日の説明事項を述べ始めた。
「えー…それでは、明日の収録、第一回戦についてもう一度説明させていただきます〜…」
が、その説明の声も、ざわめきはじめた会場の空気の中では、あまり鮮明には響かない。
そのざわめきの中で、俺は口火を切った―小声で。
「おい、お前ら…どう思う?」
「…」
「どう、って、何がだよ」
「…決まってんだろ」
リョウの表情も、ベンケイの表情も、硬い。
まるで、ゲットマシンに搭乗し、戦場に飛び立つ時のように…
さっきまで浮かれまくっていたのに、そんなモノは跡形もなく吹っ飛んでしまっていた。
「…まだそれはわからんが…けれど、人違いとは思えない」
「ああ、俺もそう思う」
リョウの発言に、ベンケイが和す。
「あいつら…俺たちの紹介の時、間違いなくこっち見てたぜ」
「ああ…ツノがなくったって、だまされるもんか!」
そう。それは、俺も感じていた。
あの目を、俺たちは知っている。
澄んだ翠玉色(エメラルド)の瞳。百鬼帝国百鬼百人衆・胡蝶鬼。
強い虎目石(タイガーアイ)の瞳。百鬼帝国百鬼百人衆・自雷鬼。
そして…
深い黒曜石色(オブシディアン)の瞳。百鬼帝国百鬼百人衆・鉄甲鬼!
かつて、早乙女研究所のゲッター線増幅装置を狙い、俺たちゲッターチームの命を狙って襲撃してきた三人組…
ゲッターロボGとまったく同じ、三機の戦闘機による合体マシンを駆って現れた、まさにあいつらに違いない…!
奴らの百鬼メカロボットは、強かった。
俺たちのゲッターロボGと互角、いや―
あの時の戦いでは、俺たちのほうが…負けていた。
偶然にヒドラー元帥の妨害(それは奴らの意図したものではなかったらしい)が入り、それを転機に状況は一変し、俺たちは辛くも勝利することが出来た。
―だが。
あれで、本当によかったのか?
そんなもやもやする思いが、その時からずっと俺の中にはあった。
どろどろと澱む、重苦しいヘドロのような、すっきりしない思い。
その思いは、リョウもベンケイも同じはずだ…
「…」
「…」
だから。
無言で、再び神奈川県代表の座るテーブルをねめつけるリョウの目つきにも、
目を閉じたまま、ゆっくりと息をつくベンケイの顔つきにも、
俺はそれを、はっきりと感じたのだ。

「…それでは、皆さん。明日に備えて、どうぞゆっくり休んでください!」
そんなせりふを最後に、全ての説明が終了したようだ。
散会。
各チームががたがたと椅子の音を鳴らして、三々五々に立ち上がる。
何やら談笑しながら、自室に帰るべく出入り口をくぐっていく。
そんな楽しそうな他チームなど、俺たちの目には入らなかった。
リョウが立ち上がり、無言のまま目で促してくる。
俺たちも無言でうなずき、立ち上がる。
そして、そのまま真っ直ぐに会場を後にした…
廊下には、まだたくさんのチームが残って、しゃべったり笑ったりしてダベっている。
―だが。
俺たちが探しているのは、そのうちの1チームでしかない。
壁にもたれかかりくっちゃべりながら、けらけらと笑っている連中がいた。
はたから見れば、それは高校生のグループにしか見えないだろう。他の参加チームと同じく。
けれど、俺たちは知っている。
その正体を、奴らの隠しているものを、奴らが『人間』ではないことを知っている―!
長身の三人組。男が二人に、女が一人。
そのうちの一人、鷹のような目をした男。
仲間と話していた、その男の目が―俺たちの視線を、捕らえた。
「!」
「…」
その視線を、受け止め返す。
奴の顔から、笑みが薄れて消えていく。
一瞬、奴の目が光ったような気がした。
鷹の瞳が、すっと細くなり…俺たちを、射抜く。
「…どうした、テッちゃん?」
「…自雷鬼!」
もう一人の男、そして女も、様子が突然おかしくなった男に気づいた。
そして、俺たちを凝視する男の見ている先に視線をやる…
その先には、俺たちがいる。
奴らの表情も変わる。敵意の表情。
俺たちゲッターチームが浮かべているものと、同じ表情に…
「!」
「ふん…」
見開かれる翠の瞳。軽く鼻を鳴らす、虎目の男。
俺たちを見下す、六つの瞳。
だから、リョウも、ベンケイも、そして俺も、負けずに睨み返す。
ちょうど、あの時と同じだ―
ゲットマシンの向こうに、通信機の向こうに、百鬼メカの中にいた奴らと対峙した、あの時と。
十二の瞳がそれぞれに邪気をこめて、降り注ぐ敵意をはねかえす。
「…久しぶりだな」
「ああ…」
「生きていたとはな…!」
視線の応酬を、張り詰めた無言の緊迫を最初に破ったのは、リョウだった。
それに応えたのは、奴らのリーダー格と思われる男…「鉄甲鬼」。
だが、今の奴はその「名前」を隠している。
奴の左胸、洋服につけられたバッジには…それは俺たちがつけさせられているものと同じ…まったく別の「名前」が印字されていた。
「神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園 霧伊鉄人(きりい・てつひと)(18)」、と。
腰まであるストレートの金髪をなびかせた女、「胡蝶鬼」は、「神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園 蝶野友里香(ちょうの・ゆりか)(18)」と書かれたバッジを。
190cmはありそうなほどの長身の男、「自雷鬼」は「神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園 自雷正樹(じらい・まさき)(18)」と書かれたバッジを、それぞれ身につけている。
…しらじらしい偽名だ。
そして、奴らの頭には、ツノの姿は見えない…
あれほどまでに存在を主張していた、百鬼一族としてのプライドのかたまりが。
だが、幾ら見た目を普通の高校生らしく変え、ツノを消そうとも、俺たちの目をごまかせるものか。
「てめぇら〜、一体何たくらんでやがる!」
「たくらむ、だと…?」
「ああ、そうさ!」
ベンケイが、一歩前に歩み出る。
たぎる敵意を隠そうとすらせずに、三人に怒鳴りつける…
だが。
「…お前ら、百鬼の鬼どもがよ!こんなところで何しでかそうとしてるのかって聞いてるんだよ!」
「…」
意外なことに。
怒鳴り返しもせずに。
ベンケイのせりふを、奴らは真顔で聞いていた。
…そして。
いったん、ぽかん、とあっけにとられた表情をした後で。
「…くっ」
「?!」
にやり、とその唇が、笑みを形どるように変わった。
「くっくっくっ…ふ、ふははははは!」
「あははははは!」
「ふっふっふっふっ…!」
次の瞬間、廊下に哄笑がはじけた。
げらげらと哂う、鉄甲鬼たち…
突如笑い出した奴らに、ベンケイが惑ってなおも怒鳴りつけようとする。
「な…何がおかしい?!」
「くく…いや、なあに!」
自雷鬼が、あごを軽くさすりながら、ベンケイをにやにやと見下して言った。
「…何かお前ら、勘違いしてんじゃねえか?」
「なんだと?!」
「いいか、それに俺たちはな…お前らなんか、はなッから相手にしてねえんだよ」
「!」
奴の言葉に、リョウたちの表情が変わる。
「お前らなんか、はなッから相手にしてねえ」。
自雷鬼は、こともなげにそう言ったのだ。
百鬼帝国に抗する、俺たちゲッターチーム…
その俺たちを相手にしていない、というのは、いったいどういうことなのか?!
困惑する俺たち。
その俺たちを見やり、今度は鉄甲鬼が言葉を継ぐ。
「そうだ、俺たちの本当の『敵』は…」
「!…鉄甲鬼!」
が。
胡蝶鬼の短い叫びが、奴の口をつぐませた。
促され、鉄甲鬼と自雷鬼は振り返る。
鬼ども三人が振り向いた先に、三つの人影が立っていた―
「!」
「…やあ、はじめまして」
…黒縁の眼鏡をかけた、小柄な男がそこに立っていた。
そしてその脇を固めるように、二人の仲間の姿。
「あんたらは…」
「…!」
鉄甲鬼の目が、鋭く光る。
そして、奴の口から、うめくような声が漏れた…
「鹿児島県代表、マ・メール高校!」
その名に、胡蝶鬼と自雷鬼の表情が変わった。
途端に三人の表情に、警戒の色が強まっていく。
それは、さっき俺たちに見せていたよりも、はるかに緊迫した表情で…
「くっ…西の強豪か」
「いやいや、とんでもないよ〜!」
しかし、警戒心丸出しの奴らに対し、鹿児島県代表マ・メール高校チームの眼鏡君は…にこやかに笑い、照れくさそうに手を振った。
「僕らだって、通れると思わなかったもん〜」
「な〜」
そんなふうに、チーム同士でそう言って軽く笑う彼らは、本当に普通の高校生然としていた。
―だが。
「ま、でも…」
リーダーの眼鏡が、ぎらり、と光った。
「…君らに負けるつもりも、ないから」
「…!」
そして、淡々と言い放つ。
まったくの、笑顔で。
それは、すさまじい自信と矜持が言わせる言葉。
この「高校生クイズ」の常連たる名門私立チームの背後に…俺は一瞬、オーラのようなものを見た。
―その気迫に、あの百戦錬磨の百鬼百人衆、鉄甲鬼たちが軽く押されている。
自雷鬼が、思わず息を呑む音が…俺たちにも、聞こえた。
「あ、神奈川県の…!」
「!」
そこに、さらに三つの人影がさす。
振り返る鉄甲鬼たち。俺たちもそちらに目をやる。
「…栃木代表、鉄橋高校!」
「じ、常連校のお出ましだな…!」
またもやあらわれた三人組は、どうやらこれまた強豪チームの一つらしい。
鉄橋高校、と呼ばれたそのチームの連中も、にこにこ笑いながら、鉄甲鬼たちに応じた。
「いえいえ、お手柔らかに…」
「百鬼帝国…青龍学園さん、だっけ?よろしく〜」
「…ああ、よろしくな!」
にこやかな笑顔、穏やかな挨拶。
だが、その裏に隠されているのは…紛れもない、闘志。
それが証拠に…お互いを要注意チームと目した三チームの目は、目だけは、決して笑ってはいなかった。
例えその表情が笑顔であっても。
「…」
「…」
「…」
「…」
「…!」
無言。無音。
三チームの視線が絡み合う。
静かな闘争。戦いへの前哨戦。



神奈川県代表・私立百鬼帝国青龍学園チーム。
鹿児島県代表・私立マ・メール高校チーム。
栃木県代表・県立鉄橋高校チーム…
三チームの間で、火花がひらめく。
青白い火花が、静かな空間を疾走する―



―そう、いつの間にか。



いつの間にか―だった。
もはや、俺たちのことを気にかけている奴は、ただの一人もいなかった。



「…」
「…ちょ、」



激しくにらみ合う、百鬼帝国の鬼どもと、マ・メールの奴らと、鉄橋高校の奴ら。
そして、まったくの蚊帳の外の、俺たち浅間学園ゲッターチーム。
そう、俺たちは…今や、完全に無視られていた



「ちょっと、何だよこれ…」
「…」
「こ、この小説、『ゲッターロボG』の小説だろ〜!な、何で俺たちがのけ者みたいになってんだよ!」
「…」
ベンケイが、わけのわからないことを言っている。
リョウは、困惑と闘志がない交ぜになったような複雑な顔で、鉄甲鬼たちを睨みつけている。
―そして、俺は。
「…は、ハヤト?」
「…くっくっくっ…!」
「!」
刹那、二人が俺のほうに振り向く。
…振り向くなり、ぎょっとしたような顔になる。
それほどまでに、俺の浮かべていた表情が凄まじかったのか。
「面白い…面白いじゃないか」
「あ、あの〜、ハヤトさん?」
「いいだろう、燃えてきたぜ…!」
いいや、俺は笑っていたはずだ。
だって。
だって、こんなチャンスが来るなんて思ってもみなかったからな―!
あの時。
あの、ゲッターロボGを丸ごとパクったかのような百鬼メカ。
そいつに、そしてそいつを操縦していたこいつらに、俺たちゲッターチームは―実力でいえば、負けてしまっていた。
あの時の勝ちは、ただ拾っただけだ。
ヒドラーの横槍がなければ、俺たちは負けていたはずなんだから!
だから…あの時のことは、今でもよく覚えている。
あんな腑に落ちない形で終わった俺たちの戦いを…
―けれど。
今、こんな形で、こんな形でとはいえ、再戦が叶うとは!
鉄甲鬼!
胡蝶鬼!
自雷鬼!
今度こそ、俺たちは―!
「リョウ!ベンケイ!」
自分たちの力で、お前たちを倒してやる!
『お、おう!』
例えゲッターロボに乗っていなくとも―百鬼の奴らに、俺たちは負けない!
「…俺たちで、あいつらを倒すんだ!」
俺の声には、いつしか力と熱がこもっていた…
自分でも意外に思えるぐらいに。
(あの時「してやられた」借り、今返してやる!)
俺は、ぐっ、とこぶしを握り締めた―




「…本当の『主人公』の実力、思い知らせてやるッッ!!」




=====全国大会進出!!( )内はチームリーダー名=====
北海道立札幌北東高校(大谷) 北海道立北見南都高校(笹)
青森県立四本木高校(国松) 秋田県立明田高校(佐賀)
山形県立山形東南高校(竹田) 岩手県立森岡第一高校(千野)
宮城県立千対第二高校(富家) 福島県立愛馬高校(諏訪谷)
新潟県立五条高校(山林) 富山県立丘高高校(小田)
石川県国立沢金大学教育学部付属高校(大田) 群馬県立田王女子高校(小西)
福井県立羊歯高校(大昏) 栃木県立鉄橋高校(松木)
茨城県私立淀川学園(原笹) 埼玉県立越川女子高校(鹿山)
東京都私立弁天女子高校(下木) 東京都私立海山大学付属高校(荒瀬)
千葉県立橋船高校(北島) 神奈川県私立百鬼帝国青龍学園(霧伊)
山梨県立公武南高校(中条) 静岡県私立制法大学第二高校(宮路)
愛知県立古川高校(海谷) 長野県私立浅間学園(流)
岐阜県立鴨川高校(跡部) 三重県立伊勢島高校(伊豆)
滋賀県立石達山高校(川村) 京都府私立士同社高校(宇野辺)
奈良県私立正大寺学園高校(日野) 大阪府立小手前高校(川吉)
兵庫県立古歌川東高校(大嶺) 鳥取県立取鳥東高校(本田)
和歌山県私立近々大学付属河山高校(辻北)
島根県立雲出高校(狩野) 広島県立十五日市高校(上田)
山口県立狩日高校(森藤) 岡山県立岡山東城高校(松本)
香川県立松高北高校(谷脇) 愛媛県立東条高校(田富士)
徳島県立南城高校(長門) 高知県私立高知芸学高校(藤原)
福岡県私立北九州国際大学付属高校(武義)
佐賀県立佐賀西南高校(村下) 長崎県立長崎北西高校(道也)
熊本県私立熊本愛心女学院高校(宮元)
大分県立卯座高校(林田) 宮崎県私立日向学園高校(満岩)
鹿児島県私立マ・メール高校(村松)
沖縄県私立沖縄聖楽高校(古雅)