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Who Wants to Be a Millionaire?(富を掴むのは誰の手か?)(3)


ぴよぴよぴよぴよ、ぴよぴよぴよぴよ!
電子音で編まれた通信呼び出しが、光子力研究所のコントロールタワー・司令室の空気を震わせた。
その通信に答えたもりもり博士ら、三博士。
が、すぐにその表情が怪訝なものになる。
「…ん?何かね?」
「甲児君からなんですが…何やら非常に慌てているようでして」
そんな彼らを振り返るのは、この光子力研究所所長・弓弦之助教授だ。
甲児からとの通信に、弓の顔つきが一瞬険しくなった。
「何?緊急の用件か…まさか、機械獣?!」
時刻は既に午後八時半近い。
まさか、敵の夜襲か…?!
「しかし、機械獣が現れたというような報もありませんし…」
「…どれどれ」
ともかく、彼から詳しく話を聞けばはっきりする。
弓教授はもりもり博士から通信機を受け取った。
「あー、甲児君?私だ、弓だ」
『せ、せ、せ、先生!た、大変なんですッ!』
が…その途端に返ってきたのは、明らかに泡を喰った様子の甲児の声。
尋常でない彼の動揺に、弓も思わず声を荒げて問い返していた。
「どうした甲児君、一体何があったというのかね?!」
『や、奴が!奴がテレビに…!』
「落ち着きたまえ!テレビがどうしたのかね?」
『テレビを!テレビをつけてみてくださいッ!』
「…?」
何やら、テレビに誰かが出ているらしいが…何故そんなにも慌てているのだろう?
三博士をかえりみた弓教授、近くにあるテレビをつけるように頼む。
「せわし博士。ちょっと、テレビをつけてみてくれ」
「はい、わかりました」
せわし博士がスイッチをひねると、ぶん…、という鈍い音を立て、走査線に電気が走る。
「それで甲児君、何が…」
『おわああああああああああああああああーーーッッ?!』
「?!…どうした、三人ともッ?!」
一斉にハモってあがった驚愕の声に耳をつんざかれ、弓教授は飛び上がった。
見ると、そこにはテレビ画面を凝視したままがたがたと震える三博士の姿…!
「あ、あ、あ…」
「これは…ッ?!」
その指差された先、ブラウン管に映し出された動画像を見つめるその目は、信じられぬ光景を見たショックで見開かれている。
慌てて駆け寄った弓教授も、その画面を見る…
や、否や。




「?!…な、何ーーーーーーーーーーーーーーーーッ?!」




「世界征服」の夢をかなえるため、機械獣を造る資金を狙うドクター・ヘルさん!
第8問までをクリア、50万円に到達!
大台100万円、250万円はもうすぐ間近!
見事1000万円を獲得する事はできるのか—?!





「次のうち、川端康成の小説でないものはどれ?
A:伊豆の踊子 B:雪国 C:古都 D:細雪」
「ヤスナリ・カワバタじゃな。『イズのオドリコ』は読んだぞ…」
「ふむふむ」
「だが、この『ササメユキ』も読んだことがある。これは、だが…ジュンイチロウ・タニザキの作品じゃろう」
「…」
「Dじゃな、これで決まりじゃ」
「ファイナル・アンサー?」
「ファイナル・アンサー!」
「…正解!」
危なげなく答えを選択するドクター・ヘル、当たり前のように正解を勝ち取る。


「はああ〜〜〜、そうだったのか!」
「俺はてっきりBだと思ってたわよ!」
「ボシュ〜、日本人としてはずかしいよ〜〜〜!」
「う、うるさぁ〜〜〜〜いッッ!!」


「次のうち、スペインのファッションブランドはどれ?
A:コーチ B:エトロ C:ロエベ D:バリー 」
「…ふむ、おそらくCじゃ、『ロエベ』じゃ!」
「ファイナル・アンサー?」
「ファイナル・アンサーッ!」
「…その通りッ!」
迷いなく答えを選択するドクター・ヘル、当たり前のように正解をもぎ取る。


「…」
「…知りませんでしたな」
「ええ…」
「…」
「…まだまだ、私たちも学ばねばならんことがある、という事か」


「おめでとうございます…100万到達です」
「ふん…まだまだじゃ」
第10問目をクリア、とうとう獲得賞金は七桁に到達した。
しかし、司会者・ものみんたの祝いの言葉に、ヘルはわずかに眉をうごめかせるだけ。
「ほほう…」
「わしの目標は、あくまで1000万。まだまだ油断禁物ですわい」
その表情は、いまだ油断を寄せ付けぬ厳しさを保っている。
そう。
彼が目指すは、最高賞金1000万円。
100万円など、そこへつながるただの道程に過ぎない。
それ故—彼には、まだまだ安堵する事は許されないのだ!
「それでは、次の問題…11問目です!」
「来いッ!」
そして、第11問目!
「湯川秀樹博士のノーベル賞受賞理由となった研究はどれ?
A:トンネル効果 B:くりこみ理論 C:中間子理論 D:フロンティア電子理論」
「ふふん、こんなもの常識よ!答えはユカワの『中間子理論』、無論Cに決まっておる!」
だが、それは科学者のヘルにとってはまさにラッキー問題!
常識中の常識たるその問題に、彼は間髪入れず答え返す!
「では、この100万円の小切手は…」
「いらぬ!ファイナル・アンサーじゃ!」
ものが、「\1,000,000-」という数字が既に記入された小切手を…それは、現在のドクター・ヘルの獲得賞金…見せるも、彼はすぐさまにそれを拒絶し、更なる高みを選び取る!
「…では、この100万円の小切手はもう手に入りません」
「…!」
ばりっ。
その紙を引きちぎる乾いた音が、驚くほどに大きくスタジオに響き渡った。
いや、そうではない—
その小さな音すら響き渡るほどに、スタジオが静まり返っているのだ。
そう観客もあしゅらもそしてドクター・ヘルも皆、その決断の結果を待ちわびて—!
「では、答えはどうなるか…!」
「…!」
何処かより、地面を揺るがす音が聞こえてきた。
「…」
「…」
向かい合う二人。
視線すら外さずに。
「……」
「……」
鳴り渡るドラムロール。
早鐘のごとく鳴り渡る、まるでそれは心臓の鼓動のように。
「…………」
「………………!」
ものみんたは無表情のままドクター・ヘルを見据え、
ドクター・ヘルはその視線を真っ向から受け止め—
鳴る鳴る鳴る鳴る鳴り渡るドラムロール、そして—!
「…………………………正解!」
「…ふん!」
間違いなく答えを選択するドクター・ヘル、当たり前のように正解をつかみ取る—!


「えっ、そうだったのかよ〜、Aじゃないのか…くっそー何か悔しいなあ!」
「…お兄ちゃん、ドクターヘルに負けてるようじゃ駄目だよー!」
「う、うるせいやい!」


スポットライトが踊り狂う!
舞い狂う光が、老科学者を祝福する…!
「さあ、250万円ですよヘルさん…!」
「…後、何問だ」
「後4問で、1000万円です」
「…」
ごくり、と、息を呑むドクター・ヘル。
後、4問。
彼が目指す登頂。
その頂まで登らねば鳴らぬきざはしは…後、4問。
「12問目です」
ものみんたの低い声が、スタジオの緊張感を否応無く盛り立てる。
彼の口から放たれるのは、第12問目—
「『ドレミの歌』の日本語版を作詞した人は誰?
A:黒柳徹子 B:ペギー葉山 C:由紀さおり D:梓みちよ」
「…?!」
が、その時。
視聴者の見守るテレビ画面の中、ドクター・ヘルの表情がはっきり歪むのがわかった。
「ど…」
かすれ声が、老科学者の喉から漏れる。
「『ドレミの歌』の、日本語版?!」
「おや、ご存じない?」
まったく意外ですなあ、といった表情のもの、だが当のヘルは軽く混乱しているようだ。
「ど、『ドレミの歌』…『どー、あでぃー、あふぃーめーでぃーあ』という奴じゃろう?!」
「あー、メロディーはそれなんですけどねー、それは英語版なんですよー」
「これに日本語版があるのか?!」
「あるんですよー」
あっさりとものみんたに返され、はあー、とため息をつくドクター・ヘル。
そう、この歌はミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」内で使われたオスカー・ハマースタイン二世作詞、リチャード・ロジャース作曲の楽曲であるが、ヘルが知っているのはあくまでもともとの英語のバージョンのみ…
それに日本語版があるなど、彼にとっては青天の霹靂であった。
「あ、あしゅら!お前知っとったか?!」
「い、いえ…」
「そうですねー、外国の方だと厳しいかもですねー」
思わず応援シートのあしゅらを振り返り(本来は反則なのだが)問うヘル、やはり困ったような顔で首を振るあしゅら。
そんな二人に、さもありなん、といった様子で苦笑して見せるものみんた…
どうやら、ヘルひとりではどうしようもない問題のようだ。
「さあ、如何なさいます?」
「ぐ…に、日本のことなら、日本人に聞けばいい!」
それ故、彼のとるべき行動は決まっている—
「お、オーディエンスじゃ!」
「わかりました」
Yes..."Ask the Audience".
観客に聞けばいいのだ、それだけでいい。
「それでは…会場の観客の皆様に、ボタンを押していただきます」
そして、会場の皆を仰ぎ見る司会者もの。
カメラが映し出していく観客の手には…いつのまにか、ボタンスイッチが握られていた。
「では、スタジオの皆さん…ボタンをどうぞ!」
ものみんたの声とともに、電子音がスピーカーを震わす。
押されたボタン回数が瞬時に計算され、集計され、数秒の間をおいて後—
「!」
効果音とともに、結果がグラフ画面となって表示された。
大差、と言うほどではないものの、はっきりと偏りが見てとれる。
「Aが12%、Bが54%、Cが16%、Dが18%ですね」
「ふむ、決まりだな」
その結果を受けたヘルは、ぐっ、と拳を握り締め、笑顔でうなずいた。
「わしは信じるぞ!このオーディエンスの皆の力をッ!」
『おおおーーーーーーーーッッ!』
ヘルの言葉は瞬時にテロップとなり画面下に表示され、全国に放映される…
思わぬいいセリフの登場に、スタジオが拍手と歓声で沸いた。
「おおっと、これはいいセリフですね〜、それではヘルさん!」
「おお!」
そして、その拍手の波と勢いに乗って、ヘルは叫ぶ!
「ファイナル・アンサー?!」
「…ファイナル・アンサーッ!」
もちろん、それは最後の答え!
キーフレーズ「ファイナル・アンサー」が、誇らかにスタジオに響き渡る—!
「…………」
「………………!」
ライトを浴びるものみんた、
ライトを浴びるドクター・ヘル、
絡み合う両者の視線、
空白の時間、それを断ち割る—
ものみんたが、笑顔を見せる!
「…………………………正解!」
先ほどのものよりも、はるかに大きい歓声—!
観客たちの力を得、悪の科学者ドクター・ヘルは…また一つ、野望への階段を上がったのだ!
「さあ、いよいよ次は500万円に挑戦!」
「…!」
「大詰めです…第13問目!」




ドクターヘルさんの挑戦の結果や、如何にッ?!