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Great Bookmaker's table(偉大なる胴元の円卓)(2)


「ところで巴武蔵よ」
「ん?」
赤チーム、あしゅら男爵と巴武蔵。
博士たちの紹介を司会者・小橋小泉がしている間、あしゅらがムサシにぼそぼそと小さな声で呼びかけた。
「今一度、このゲームのルールを説明してくれぬか?」
「お、おお」
あしゅらに問われ、うなずくムサシ。
斜め向かいにある解答者席を指差して答える。
「まあ、要するに…クイズ番組なんだけど、答えるのは『解答者』の早乙女博士たちなんだ」
「ふむ」
「で、オイラたちは何するかってえと、今持ってるポイントを博士たちに賭けるんだ」
彼らのついている出場者席には、ランプで作られた点数板がついている。
その点数板には、現在赤・黄色・緑チームともに「3000」という数字がともっていた。
この3000ポイントを最初の持ち点として、解答者にベットしていくことになる。
「選んだ人がクイズに正解したら、あらかじめ決められた倍率でポイントが返ってくる、ってわけ」
「…なるほど、理解した」
納得したらしく、微笑するあしゅら。
何となく、つられてムサシも微笑ってしまった…
同じような説明を剣鉄也から受けていたバット将軍も、軽くうなずきながら再度確認する。
「つまり、答えを知っていそうな者を我々は選ばねばならん、ということか」
「そうだ」
が、バット将軍は眉根を寄せ、小声で不快そうに吐き捨てる。
「ぐ…しかし、わしは早乙女博士しか知らんぞ。残りの奴は初対面だ、そんなことわかるか!」
「そんなのは俺だって同じだ!大体5枠…見ろ」
しかし、バットの嘆きは出場者皆が思っているのと同じである(他作品のキャラクターなど、そうよく知っているわけでもあるまい!)。
「スーパーロボット大戦」シリーズでちょこっと共演したからと言って、その相手のことなどしっかりわかるわけでもなし。
そして、何より…5枠の男は、そんな範疇にすらなかった。
マンガ版「ゲッターロボ」に登場する、「敷島博士」と名乗った老爺…
禿げた頭に白い蓬髪、にやり、と笑んでいるその表情は、笑みでありながら柔和さを一切感じさせない。
だが、それにもまして怪しい何かを感じさせるのは…彼の、何処か遠いところへとぶっ飛んでしまっている「目」だった。
「…」
「…」
思わず、無言になってしまうバットと鉄也。
「…明らか、俺たちと違うだろう…何かが」
「あ、ああ…違うな、何かが」
「くそッ、作者・ゆどうふめ…普段は俺たちダイナミック勢を70'TVアニメ版で統一しているくせに
こういう時だけイシカワ・ケンか!」
「何にせよ、厳しい戦いになりそうだぜ」
鉄也の言葉に、バット将軍も同じく同意する。
そう、先が見えないこれは「戦い」だ―!
さて、そんなうふふと微笑する赤チームとやたら猛っている緑チームにはさまれている黄色チーム。
炎ジュンと早乙女ミチルは、やや呆れ顔で未だ紹介の続く解答者席を眺めていた。
「…んもー、まさか所長がこんなこと引き受けるなんて、思いもしなかったわ」
「うちのお父様もよ」
「弓教授や早乙女博士はよくTVにも出ていらっしゃるからいいけれど…
うちの所長公式には死んでるんだからまずいんじゃないのかしら」
「ど、どうなのかしら…」
乙女たちのため息が、静かに空中に散る。
…とはいえ、彼女たちも、こうやって自分たちがテレビ番組に出ることについてはまんざらではなさそうだ。
いつもの決まりきった服装ではなく、当然のようにおニューの洋服を身にまとっての登場である。
―と。
ちょうど、司会による解答者の紹介が終わったようだ。
「はい、それではいってみましょう」
小泉のセリフとともに、ゆっくりパンアウトしていくテレビカメラが、5つ並んだ解答者席を映し出した。
フォスターの「草競馬」のメロディーが、小泉の読み上げる問題の背後で軽やかに流れ出す。

「さて、世界のコンピューター市場でもっとも多いシェアを誇るOS(オペレーション・システム)と言えば、ご存知マイクロソフトのWindows。
今年の1月30日に発売された新OS"Windows Vista"も売り上げ好調とのこと。…さて、」


ここで、一拍置き。

「この"Vista"とは、一体どんな意味でしょう?」

にっ、と笑んだ小泉の口から、高らかに開始の合図が放たれる。
「それでは解答者の皆さん、お書きください〜」
言われた途端、解答者である博士たちは、答えを書くべくかつかつとペンを走らせる。
「ただいま解答中!」と書かれたパネルに埋められた5つのモニターが、5人がそれぞれ答えを書く過程を映し出す…
と、カメラが再び小泉に戻る。
「それじゃ回答出揃ったようです…倍率ドン!」
解答者席上部に設置されたモニターが、一斉に回線を開かればらばらの数字を映し出した。
これが「倍率」であり、もし出場者が選んだ解答者が問題に正解した場合、賭けたポイントにこの倍率を換算したものが返ってくるわけだ。
それぞれその倍率は…
弓教授が2、早乙女博士が2、たらはいらが3、兜所長が2、敷島博士が3。
まあ、博士なら知っていても当然だろう…ということか、倍率は軒並み低いものに。
「では、それじゃ出場者の方に選んでもらいましょうか」
次は、出場者のベット(賭け)の時間である。
「はい、赤チームさん!」
「え、ええっとぉ〜…」
「では、まずはお手並み拝見と言うところだな」
「ほほう、誰に?」
「…弓教授に、500点」
「はい」
あっさり決めてしまったのは、あしゅら男爵である。
女の蒼い瞳、男の黒い瞳が…宿敵・弓教授を見る。
その視線にこめられた意味は何か…
「ちょ、ちょっと!オイラの意見も聞いてくれよ〜!」
「わかったわかった、次はお前が決めろ」
ムサシに文句を言われ受け流すあしゅらを尻目に、次は黄色チームの番である。
「じゃ、黄色チームさん!」
「…どうしよっか?」
「うーん…」
「はじめは堅く行こうか?」
「そうねー」
「じゃ、」
「いつも素敵なたらはいらさんに、500点!」
ジュンとミチルは、どうやら安全策に出たようだ。
ミスター・クイズダービーことたらはいらに500点。
堅い、これは堅い。
そして、緑チーム。
「最後に、緑チームさん!」
「ど、どうする、剣鉄也?!」
「…しょ、所長なら、きっと所長なら何とかしてくれるはずだ!」
「!」
「か、兜所長に1000点!」
「はい!」
剣鉄也、いきなりの大勝負。
1問目から、何と持ち点の1/3を投入した…当然、自らの敬愛する兜剣造所長に。
「お、おい!しょっぱなから、賭け過ぎではないか?!」
「何を言ってる…男は度胸だぜ!」
何やらわやわややっている緑チーム。
が、小泉はそんなことにはかまわずにさっさと番組を進行してしまう。
「では、解答見てみましょう〜」
…と、カメラが5枠・敷島博士を映し出した。
「それじゃ、敷島博士ですけど〜…」
小泉がそう言うと、5枠の解答モニターが切り替わった。
すると、そこには…読めるか読めないかぎりぎりの線といったふうな乱筆で、なにやら解答が書いてある。
ところが、よーく見るとそれは解答ではない…
「そんなもん知らん!」と、無駄に力強く書かれたギブアップ宣言だった。
「ありゃありゃ〜、敷島博士、これはいけませんねぇ」
「何を言う!わしゃうぃんどぉずなんぞ認めんぞ!」
「おやおや〜」
「な〜にが『びすたー』じゃい!漢(おとこ)は黙って、Linux!じゃ!」
たしなめる小泉をよそに、全国ネットでわけのわからん主張をがなる敷島博士。
対する司会者小泉は笑顔を絶やそうとはしないが、微妙にそのこめかみがぴくぴくしている。
しかし、この爺さんにかまっても無駄だ…と悟ったようだ。
カメラのほうに目線を向け、合図代わりに右手を高く上げた。
「それじゃ、残りは一気に開けてしまいましょう、どうぞ!」
言うなり、1枠・2枠・3枠・4枠のモニターが一挙に答えを開く…
「眺望」「展望」「見通し」「予想」…
統一された答えではないが、確かにそれはVistaの語意である。
よって…4つのモニターは、まったく同じように真っ赤に変わる!
鳴り渡るジングル…正解者をたたえる効果音!
正答をもぎとった博士たち(1名除く)の表情に、安堵と喜びが垣間見える。
同様に、彼ら正解者に点数をベットしていたすべてのチームも…
カメラが映し出す出場者ブースの点数板がぱっ、とその表示を変える。
全員正解した解答者を選んでいたので、全てのチームの得点が加算された。
赤チーム・4000点、黄色チーム・4500点、緑チーム・5000点。
幸先のいいスタートを切った解答者陣(しつこいが、1名除く)、出場者チーム。
場の雰囲気がいい感じに和んだところで…第2問目だ。

「最近では、インターネットでひょんなことから人気を博し、そこからひろまっていくと言う現象が見られます。
さて、2006年、あまりにひどい作画がネットで評判を生み、人気を得たと言われるアニメは次のうちどれ?
1、ロスト・ユニバース
2、MUSASHI-GUN道-(むさし・がんどう)
3、ガンドレス」


2問目はたいていいつも三択問題となっている。
そのため、解答者にとっては答えやすい問題なのだが…
如何せん、こんなマニアック問題ではさすがの博士たちも困り顔だ。
難しい表情で解答を書く姿が、お茶の間に放映された。
気になる倍率は…1枠から、5、5、3、5、10(一気に敷島博士の倍率が跳ね上がったことに注目)。
出場者チーム、赤チームは(ムサシが)早乙女博士に500点、黄色チームは弓教授に1000点、そして緑チームがまたもや兜所長にベット1000点。
と、緑チームはまたもや何か小競り合いをしているようだが、小泉はもはやそっちを見てもいなかった。
「では、見てみましょう…三つに分かれました、1が一人、2が二人、3が二人!」
どうやら、解答がバラけたようである…
事前の知識がなければ勘に頼るしかない、これは当然の結果だろう。
そして、小泉が右手を上げた―
モニターの映し出す画面が、瞬時に解答者パネルに移る!
「それでは、一斉に開けましょう!」
そして、同時に解答者パネルモニターが…彼らの解答を映し出す。
…3、1、2、2、3!
次の瞬間、「2」と書かれたモニター画面の背景が、ぱっと鮮やかな赤に変わった!
正解の印である赤く染まった画面…
それは、3枠・たらはいらのモニター、そして4枠・兜所長のモニターだ!
「たらさん、知ってたんですね〜?」
「まあ、漫画家ですからね、もちろん」
ミスター・パーフェクトことたらはいらはもしかして…と思わせるところだが、意外や意外。
こんな話題とは遥かに遠いところにいそうな人物である兜所長まで正解とは!
それは司会の小泉も同じであったらしく、視聴者同様目を見張る。
「いやあ、すごいですね兜所長!よくご存知でしたね〜」
「いやいや…しかし、まったくあのアニメはひどかった。特にケンジャの舞が」
「…」
にこにこと答える兜所長、侮れないサイボーグ。
具体的にシーンの内容まで答えたところを見ると、もう絶対勘ではない…
侮れない男、科学要塞研究所(一体何を研究しているのか)所長兜剣造である。
「では、その評判のアニメをちょっと見てみましょう〜」
そして、小泉のセリフとともに流された当該アニメのシーン。
光ってもないのに「うおっまぶしっ」と抜かす主人公、
空中浮遊かと疑いたくなる人物の落下速度(「すげー…あの爺さん、落ちながら戦ってる!」)、
人間の喰い物とは思えぬ青と赤で彩られた「信玄餅」
製作陣がやけになったのかと見ているこっちが胸が痛くなる捨て身ギャグ(「地震、雷、火事、チョイ悪オヤジ」)…
1分間ほどに編集されたアニメ映像。
わずか1分間ながら兜所長の言うとおりその破壊力はすさまじく、それを見た視聴者の精神力を静かに削り取っていったのだった。