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◆ the last battle(2)
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「ハヤトッ!オイラがいく!」
「おお!」
どしどしと音を立て自分たちに向かって走ってくるメカザウルス・ラルを前に、ムサシがまず口火を切った。
「?!」
リョウの目が驚愕の色で染まる。だが、彼の狼狽などに構うひまもなく、ムサシとハヤトは合体準備に入っていた。
「チェーンジ・ゲッター3!スイッチ・オォォン!」
ムサシは掛け声とともに、合体ボタンを思い切り押した…
ジャガー号にイーグル号が合体し、そしてその上からベアー号が重なり…ゲッター3が完成する。
そして、メカザウルス・ラルの前に降り立った。
「お…おい?!…お前ら、まさか…本気でエルレーンと戦うつもりなのかッ?!」
リョウが絶叫する。
「…ああ!」
ハヤトは一瞬躊躇したが、だが力強くうなずいた…ムサシも、同様だ。
その返答に、リョウの顔色が見る見るうちに変わっていく…
「?!…ば、馬鹿野郎!…お、俺は嫌だ!…俺は、エルレーンと戦いたくないッ!」
リョウの絶叫が、必死の拒絶が通信機を伝わって空気を裂く。
そして、それはメカザウルス・ラルを駆るエルレーンの耳にも聞こえる…
「俺はエルレーンを助けたいんだ!…戦うなんて、許さない!」
「…リョウ…!…わかってくれ!」
「オイラたちだって、オイラたち、だって…!」
ハヤトとムサシの声も震えている。
だが、それは約束だったから。目の前に立つ、メカザウルス・ラルの中にいるエルレーン自身との…
「エルレーンと、戦うなんて…!…ムサシッ!合体を解除するんだ!」
「ダメだ!…オイラたち、約束したんだ!」
「…何を言っている?!…クッ、ハヤトッ!」
自分の命令を聞かず、合体を解除しないままエルレーンと戦う姿勢を崩さないムサシ。
リョウは望みをかけ、今度はハヤトに命じる。
「合体を解除するんだ!」
「リョウ!…もう、ダメなんだ!…もう、どうしようもねえんだッ!」
心底から振り絞るようにハヤトも怒鳴り返す。
「…!!」
自分の仲間二人ともが、エルレーンと本気で戦うつもりだ…そのことをとうとう彼は認識せざるを得なかった。
…一瞬、彼の目に絶望が浮かぶ。だが、リョウはすぐさまコックピットをにらみつけ、強硬手段をとることを選んだ。
「…!…もういい!…お前たちがそういうつもりでも…こっちで、無理やり解除してやる!」
そういいながら、リョウは強制合体解除の手続きをとろうとする…
「!」
ハヤトがそのことにはっと気づいた。急いで手元のボタンでなにやら操作している…
「…?!」
唐突に、イーグル号の全ての操縦系統が反応しなくなった。
ボタンをいくら押しても、ゲッター3の合体は解除されない…
「…くそッ、くそッ…どうしてだ?!…何故、合体が解除できない?!」
「無駄だリョウ…!…イーグル号は今、自動操縦に切り替えた!」
「…?!」
ハヤトの通信に、驚愕の表情を浮かべるリョウ。
慌ててその他の操縦系統を思いつくまま動かすが、イーグル号は何も反応しない…まったくの無反応だ。
「は、ハヤト君?!何を…」
事の成り行きを見ていた博士が、驚きを隠せないまま通信機にがなりたてる。
「博士!…俺たちは、戦わなきゃならないんです!」
「ハヤト!…畜生ッ、自動操縦を解除しろッ!」
リョウが叫ぶ。だが、ハヤトはそれを拒絶する…!
「ムサシィッ!」
「おお!」ムサシは操縦桿を握りなおした。きっと見据える先には、メカザウルス・ラル、エルレーン…!
「行くぞ、エルレーン!」
「…ええ!」メカザウルス・ラルも背中に装備した長剣を抜き、ゲッター3に向けて構えた…!
「…うおぉぉおおぉっ!!」
「わぁああぁぁあぁぁっっ!」
ムサシもエルレーンも、己を奮い立たせるかのように声の限り絶叫する。
そして、メカザウルス・ラルとゲッター3は同時に仕掛けた…!
ゲッター3のパンチ、ゲッターミサイルが次々と繰り出される。
メカザウルス・ラルは剣を振りかざし、それを打ち払うなりさらに相手に切りかかる…その攻撃を受け止め、再び反撃を仕掛けるゲッター3。
金属と金属がぶつかりあう硬質な音、そしてそのたびにゲッターロボを揺るがす衝撃が全身に伝わる。
激しいその戦いを、ムサシとエルレーンの本気の戦いを…リョウは何もできないまま、絶望に彩られた表情で見ている…
「やめろ、二人とも…やめるんだッ!」
「り、リョウ君…落ちついてぇッ!」
ミチルの懇願も、リョウには聞こえない。
「うおぉぉぉっっ!」
「ムサシ君ッ…!!」
「…や、やめろ…やめてくれぇぇぇっっ!!」
ガンッ、という鈍い音がイーグル号内部に響く。
…リョウが思いきり両拳をコンソールに叩きつけていた。
だが、自動操縦に切り替えられたイーグル号は何の変化も起こさない…
ゲッター3を操縦するムサシにも、だがその悲痛な叫び声は届く…しかし、彼は引き下がるわけには行かなかった。
「エルレーーーンッ!」
ムサシはゲッター3の腕をぐっと伸ばし、メカザウルス・ラルの両肩をとうとうつかんだ!
「…いくぞおぉぉぉぉぉ!」
「…!」
「…大・雪・山・おろしぃぃぃぃぃっっ!!」
そして、ゲッター3はその怪力を持ってメカザウルス・ラルの身体を大きくぶんぶんとふりまわす…
ムサシの必殺技、一撃必殺の投げ技、大雪山おろし…!
「…!」エルレーンは…一瞬、ほんの一瞬だけ…全身の力をふっと抜いた。…しかし、再び操縦桿を握る手に力を込める。
「ていっ!」
「?!」
メカザウルス・ラルの剣が一閃する。
肩をつかまれていながらも、手首だけを回転させるようにして剣を振るう…
鋭利な刃はゲッター3の左腕を切り落とした!
バーニアを噴射させ、素早くその隙にゲッター3から距離をとる。
「うわあぁぁっ?!」
ゲッター3がバーニアの炎に焼かれ、ムサシが絶叫する。
「…む、ムサシ君ッ…!」
その悲鳴がエルレーンの心を切り裂く。大切な「トモダチ」の苦痛の絶叫が。
「ムサシ!大丈夫かっ!」
「…あ、ああ!」
「…今度は、俺がやるッ!ゲッター2で行くぞ!」
「やめろ、やめろ…ッ!やめてくれ、ハヤトォッ!!」
リョウの必死の叫び声。
その頬にはいつのまにか、熱い涙が流れつづけていた。
本気で戦う、本気でお互いを殺そうとする仲間、ハヤトとムサシ、そしてエルレーン…彼らを止めようと、必死で彼は叫びつづける。
だが、二人はそれでも、戦いを続けることを選んだ。
「オープン・ゲーット!」
「チェーンジ・ゲッター2!スイッチ・オォン!」
ベアー号、ジャガー号、そしてフルオートになったイーグル号が合体を解除し、今度はハヤトの操縦する陸戦用モードゲッター2に姿を変えた!
「エルレーン!今度は、俺が相手だ!」
「ハヤト君…!…そうよ、私と戦うの…!」
メカザウルス・ラルとゲッター2はお互いに向かって加速した!
ゲッター2のドリルアームとメカザウルス・ラルの剣が空中で激しく打ち鳴らされる。青空に銀色の火花が散る。
その戦いを横目で見ながら、リョウはイーグル号の自動操縦モードを解除しようと躍起になっていた…
早くイーグル号のフルオート操縦を解除して、合体を強制解除して、この馬鹿げた戦いを、悲しみしか生まない戦いを止めさせようと…
「クッ…!…動け、動け、動け、動いてくれぇぇッッ!!」
思いつくままそこら中にあるボタンやスイッチを乱暴に入れまくる。
しかし、自動操縦に切り替えられたイーグル号は、内部の操縦機構からの指令を一切受け入れない…
「…!」
ばっ、とリョウはコックピットの背後をふりかえった。
…そこには、ゲッターロボ内部、ひいては…ムサシやハヤトのコックピットにつながる入り口がある…!
リョウはすぐさまコックピットから飛び降り、その入り口に飛びついた。
(…ここからハヤトのコックピットに行って、無理やり戦いを止めさせてやる…!)
焦る心を何とか落ち着かせようとしながら、入り口のハンドルをまわし、リョウはその扉を開けようとした…!
「?!」
…その扉は、開かない。いや、ロックは開いているのだが、開かない…
「リョウ、ダメだ!…ダメなんだよッ…!」
その扉の向こうから、涙混じりの声が聞こえた。
…それは、いつのまにかベアー号のコックピットから出てきた、ムサシだった!彼は体全体でそのイーグル号の扉をふさいでいたのだ。
「ムサシ!お前…!」
「リョウ!オイラたちは、約束したんだ!」
「何を言っている?!…畜生ッ!そこをどけぇっ!」
ムサシが必死に抑えている扉に、リョウは全力で体当たりを繰り返す。
しかし、ムサシは引かない。強烈な衝撃に体中で耐える。
その間にも、ゲッターロボの内部通路に鈍い衝撃が伝わってくる…エルレーンとハヤトが交わす、激しい剣戟の衝撃が。
「…オイラたちは、本気で戦うって…あいつと約束したんだ!エルレーンと、約束したんだァッ!」
「…!…ば、馬鹿野郎…!…それじゃあ、お前ら…あいつを、あいつを俺たちの手で殺すっていうのかよォォッ!」
「し…仕方ないじゃないかよォォォッッ!!」
そのムサシの絶叫が、扉越しにリョウの耳に届く。
ムサシは泣いていた。止まることのない涙をぬぐうこともせず、哀しみと矛盾に身を裂かれそうになりながら。
「ムサシ…!」
「リョウ、オイラたちは、…っぐうっ、オイラたちは…ううっ…!」
「…」
ムサシに阻まれていた扉を開こうとしていたリョウの動きが、ふっと止まった。
「うっく…リョウ…わかってくれよ…!」
すすり泣きの合間から、ムサシがそういうのが聞こえた。
「…ムサシ…」
リョウだって、本当はとっくに気づいている。
ムサシも、ハヤトも、本当はエルレーンと戦いたくなどないのだ。エルレーンを殺したくないのだ…
だが、彼らはゲッターチームとして、人類の敵・恐竜帝国と戦わねばならない…
そして、エルレーンは…「人間」として自分たちの側につくことを選ばず、恐竜帝国の「兵器」として、自分たちと戦うことを選んだのだ。
だから、もう彼らにできることは何もなくなってしまった…ならば、戦うしかない。
それくらいのことは、リョウにも痛いほどわかっていた。そして自分もまた、エルレーンの心を変えられなかった…
「…!」
だが、リョウは再び力を奮い起こし、再び扉に体当たりをはじめた!
「?!…りょ、リョウッ!」
「…ダメだッ!やっぱり、こんなの…おかしすぎるッ!…どくんだ、ムサシ!…ハヤトに、戦いを止めさせるんだッ!!」
「リョウッ…!…ま、まだ、わからないのか?!…エルレーンは、エルレーンは…」
「ムサシ!エルレーンを救うんだ!…俺たちが、あいつを救うんだ!」
「リョウ!いいかげんにしやがれッ…!…い、いいかげん、わかれよおぉぉっっ!」
「…わからない!わかってたまるもんかッ!」
リョウはばさっとヘルメットを脱ぎ捨て、それを思いきり扉に投げつけた…
ガンッ、と激しい音をたて、ヘルメットが床に転がる。
涙で濡れる瞳が、強い意思の炎で燃えている。
そして、彼は扉にすがりつき、全力で力をかける…!
「俺は、絶対に…嫌だ!…エルレーンを、殺す、なんて…嫌だああああァァァァッッ!!」
リョウは全身でその扉に体重をかける。ムサシはそうはさせまいとそれを押しとどめる…二人の間を隔てる鉄の扉を、リョウの絶叫が裂いた。
「…リョウ…!」
ゲッター2で戦うハヤトにも、それが聞こえる。
「リョウ…ッ」
メカザウルス・ラルを駆るエルレーンにも。
「…!」
そして、それは研究所司令室の早乙女博士の胸にも…
その絶叫、そして必死にこの戦いを止めようとするリョウのその姿が、博士に決断を迫った。
…博士は、とうとう決意した。
「…ムサシ君!急いでベアー号のコックピットに戻りたまえ!」
「?!」
唐突に入った博士からの通信にムサシの顔色が変わる。
「…リョウ君!…今から、イーグル号の自動操縦を、解除する!」
「?!」
「は、博士!…そ、そんなッ!」
ハヤトがその思わぬ通信に悲痛な叫びをあげる。
今、イーグル号の自動操縦を解除すればどうなるか、目に見えてわかっていた。
「ハヤト君!…リョウ君に、やらせてみるんだ!」
「博士!ダメです!解除しないでください!」
「博士!早く解除を!」
急いでコックピットについたリョウがハヤトに負けじと怒鳴り返す。
「…イーグル号自動操縦モード、解除!」
「オープン・ゲーット!」
モードが切り替えられるや否や、リョウはゲッター2の合体を強制解除した!
「ぐッ!」
突然の合体解除の衝撃に揺さぶられ、ハヤトはたまらずうめき声をあげた。
「り、リョウ…!」
ベアー号のコックピットに戻ったムサシも、リョウをもはや止めることができないまま、ただ呆然とモニターを見ている。
「チェーンジ・ゲッター1ッ!…スイッチ・オォォン!」
そして、リョウは三機に戻ったゲットマシンを、今度は自らが操縦するゲッター1に変形合体させる。
エルレーンは、ゲットマシンが宙を舞いゲッター1に変わる様を見ている…
攻撃を仕掛けることも、しないままに。
ゲッター1が音もなく地上に降り立つ。数十メートルの距離をおいて、メカザウルス・ラルと対峙する…
「…」
「…」
無言でお互いを見つめあう。
リョウ、そしてエルレーン。オリジナルの「人間」と、そのクローン。
戦場で相対するのはこれで5度目になる。そして、これが最後になる…
先に口を開いたのは、メカザウルス・ラルに乗るエルレーンだった。
「来たわね…流竜馬、私の…オリジナル!…」
「エルレーン…!」
「…違う!…私は、お前のクローン、恐竜帝国の『兵器』、『No.39』…!
…とうとう、その時が来た…私は、ゲッターロボを破壊し、お前たちゲッターチームを抹殺する!」
エルレーンは…「No.39」は、冷酷な口調で自分の分身に向かいそう言い放つ。なるべく感情を表さないように、内心必死になりながら。
「止めろエルレーン!…俺は、お前と戦うつもりはない!」
だがリョウには、そんなうわっつらの冷たさなど何の意味もなかった。
彼女の痛み、彼女の苦しさ、彼女の心を知る彼には、エルレーンのその演技が痛々しく映る。
「…!」
リョウの言葉に、一瞬エルレーンは困惑の表情を見せた。だが、すぐにそれを冷酷な「兵器」の顔で押し隠す。
「『戦わない』…?!」
「ああ…!…俺は、お前を救いたいんだ!」
エルレーンを真剣な目で見据え、リョウは呼びかける。
「エルレーン…!俺たちのもとに来るんだ!…こんな戦いに、意味なんてない!
…俺は、俺たちは…お前を殺したくないんだ!」
「殺したく…ない…?」
胸のどこかがその言葉に震える。しかし、彼女はそれに気づかないふりをした。…いや、しようとした。
「そうだ…!…俺は、お前とは戦わない!」
リョウは繰り返し、そうきっぱりと言う。その瞳、燃えるような炎の瞳に、揺らがない決意。
「…馬鹿だよ、オリジナル…流、竜馬!」
エルレーンは必死に平静を装い、リョウをあざ笑った。
「敵を目の前にして、『戦わない』…?…本当に、馬鹿だよ…!」
「…エルレーン」
「私は、戦うために、造られた…だから、戦う!」
「嘘だ!…お前は、本当はそんなことを望んでないはずだッ!」
「…な、何を言ってるの…?…わ、私は…『No.39』…お、お前たち、ゲッターチームを殺すために、
ゲッターロボを破壊するために造られた、『兵器』…だから、戦う、ことだけが、私の…」
エルレーンの声が、震えている。しかし、それでも彼女は繰り返す…自分の精神に深く刻まれたあの使命、自分の存在意義。
まるで壊れた機械のように…
「嘘だ!」
だが、リョウはそれをきっぱりと否定した。
「う、嘘じゃない!私は…!」
「いいやエルレーン!お前は、そんなことを望んでない…!
もしそうじゃなきゃ、なんで…なんで、お前は今、泣いているんだッ?!」
「…?!」
リョウのその言葉にはっとするエルレーン。
右手で頬に触れると、そこにはいつのまにか止まることのない涙が流れ出していた。
自分でも気がつかないうちに…
「…!!」
それに気づいた途端、必死で押しとめてきた心の堰が一気に切れた。
今まで抑えていた感情の波が、どっと表にあふれだす。
エルレーンの表情に言い知れない哀しみがあふれだす…そして彼女は声を出さないまま泣く。
いやいやをするように首を振り、声が漏れないように必死で歯を食いしばって泣く…
その姿が、ハヤトの、ムサシの、ミチルの、博士の、帝王ゴールの、そしてリョウの目に映る…
「エルレーン…!」
「…リョウ…リョウ…!」
エルレーンが涙に濡れた目でモニターのリョウを見た。
そこには、先ほどまで必死に装っていた「兵器」としての顔はなかった。
かわりにそこにあったのは、哀しみと苦しみに恐怖する、あのやさしく可憐な、そしてどうしようもなく酷薄な宿命を負った少女の顔…
「エルレーン…!…さあ、こんな戦いはもう止めよう…!…俺は、もう…お前を、決してひとりにはしないから…!」
「リョウ…私は…私は…!!」
その途端、エルレーンの身体が鞭で打たれたようにびくっ、と跳ねる。
唐突に激しく咳き込み出した彼女の喉から、真っ赤な血液がほとばしり出た。
その末期の吐血は、強烈な苦痛とともに幾度も幾度も繰り返される…
コックピットに音を立ててまきちらされる、エルレーンの血。彼女の生命…
「…!…エルレーン!エルレーンッ!」
「ッ…はぁ、っ、はッ…りょ、リョウ…もう、遅いよ!…遅すぎるよ!」
荒い呼吸を整えながら唇の血を拭い去り、エルレーンはそうつぶやいた。
彼女の顔にかすかな自嘲の笑みが浮かんだ。
それは、全てをあきらめきった覚悟の表情にも見える…
「エルレーン!」
それでもなお、リョウは叫びつづける。エルレーンに叫びつづける…
「…!!…ハヤト君、ムサシ君ッ…!」
エルレーンは頭を抱え、首を振って拒絶する。
リョウの叫びを、今だ自分を救おうとする彼の叫びを…
そして、彼女は彼らの名を呼んだ。…あの「約束」を、果たしてくれるはずの彼らの名を。
「…!」
その彼女の言葉が、二人のやり取りを見守っていたハヤトとムサシを現実に引き戻した。
そして、あの約束を思い出させる…
(…エルレーン…!…オイラたちは、やっぱりお前を…!!)
だが、ムサシは動けないでいる。
リョウの言葉に涙し、「兵器」として戦うことに身を引き裂かれそうに苦しむエルレーンを見た彼の心に、惑いが再び生まれた…
「…!」
そのムサシの様子を見るハヤト。
…しかし、彼はそれでも、あの約束を果たそうとした!
(お前にも、もうどうしようもできない!…そして、俺たちもお前を…
だから、俺は…俺たちは、お前と本気で戦うべきなんだ!それが、お前との約束だった…!)
それが、あの少女を…自分たちの「トモダチ」を殺す結果となったとしても!
「こんちくしょおおぉぉぉぉっっ!!」
やりきれない思いをたたきつけるように、ハヤトは合体解除(オープン・ゲット)のボタンを殴りつけた…!


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