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Zwei silberne Ringe, ewige Liebesbande(3)


Zwei silberne Ringe, ewige Liebesbande(3)


あの夜から、二人の歩く道は…二つから、一つになった。
二人の日々は、とても甘やかなものになった。
手を触れる。唇を重ねる。肌を合わせる…
その度に、お互いの絆が深まっていく、そんな気すらして。
ラウラの両親は、自分の主人の息子が我が娘の恋人となったことを知り、最初のうちはひっくりかえりそうなほどに驚いていたが…
それでも、ミヒャエルを拒絶することなく受け止めてくれた。
特に、ラウラの弟・マックスは大喜びだった。
何でも、彼はとっくに気づいていたらしい…
姉がまったく気づかないまま、延々と時間を無駄にしているのを見て、一人で腹を立てていたようだ!
ブロッケン家の人間はというと…何となく二人の仲をうかがい知っているのか、それとも気づかないのか…
ともかく、彼らからは何のモーションもかけては来なかった
(また、それはミヒャエルにとっても好都合だった…彼は、何かにつけ両親にうるさく言われることをひどく嫌っていたから)。
やさしい時間が流れ続けていく。ミヒャエルとラウラ、二人の時間が。
そして、身体を幾度も重ねる度…ともに過ごした時間、それが長くなっていく度に、彼の中でその思いがはっきりしたものになっていく。
だから、彼にとって…それは何の不思議でもなく、当然の帰結だった。
ミヒャエルは、かつてからの願いを…とうとう、現実のものにすることを決めた。
そう、その願いは…もはや神にかなえてもらうものではない、自分で成し遂げるものなのだ。

「…」
「何なの?今日はやけに神妙じゃない?」
「いや…」
「?…変なの」
その日。彼はラウラを連れ、あの池のほとりへと来ていた。
木々の合間から射し込む光が水面ではじけ、まぶしいきらめきを放っている…
その水面を見つめたまま、ずいぶんと長い間…ミヒャエルは、何も言わないままでいた。
一方のラウラは、自分をここに誘っておきながら何もしゃべろうとしないミヒャエルを、少しいぶかしんでいるようだ。
そのまま、二人で。ずっとその場所にいた。
時間は穏やかに流れていく。聞こえるものは、鳥たちの歌声…そして、風が通り抜けていく音だけ。
時間は穏やかに流れていく。二人は、ずっとその場所にいる。
そうして…ようやく、ミヒャエルの中で、こころの準備が整った。
「ラウラ」
「何?」




「…結婚しよう」




風が、ざあっ、とざわめいた。
まるで、あの夜の時のようだった。




「…え、」
「俺と…結婚してくれ、ラウラ」
「み、ミヒャエル…あ、あの、ッ」
「ずっと…考えてたんだ」
思いもしなかった告白の言葉に、動揺もあらわなラウラ。
そのラウラを、まっすぐな瞳で見つめ…ミヒャエルは、もう一度、はっきりと繰り返した。
「…俺と、結婚してくれ…ラウラ」
「…あ、アンタ…本気なの?!」
「!…本気に決まってるだろ」
「だ、だって、私は…」
「ラウラ、俺は、」
「!」
ミヒャエルの手が、ラウラの両肩に触れた。
触れられたそこから、驚くほどの熱を感じた。
まるで、愛を交わす時のような…それぐらいの熱。
ラウラの身体が、驚きで硬く強張った。
「…俺は、愛してもいない女を抱くような趣味はないよ」
「…!」
「愛してる。…俺の花嫁になってくれ、ラウラ」
「…」
ミヒャエルは、まっすぐにラウラの瞳を見つめ、もう一度愛の言葉を繰り返す。
一瞬、ラウラの視界が揺らめいた…
にじんできた涙の向こうに、誰よりもいとしい男が揺らめきながら在る。
その男の姿は、たくましく、凛としていて、血の熱さを思わせる魅力に満ちあふれていて―


…ああ。
こいつ、いつの間に…こんな男になっちゃったんだろう?
昔は、私の後ろでぴーぴー泣いてた泣き虫のミヒャエルちゃんだったのに。
なのに、今は…こんなにも、男らしくなっちゃってさ。
自信たっぷりで、絶対私が断るはずなんてない、って顔しちゃって…!
ああ。
そうよね、ミヒャエル―
アンタは、そういう男になったんだね。
私を自分勝手に引っ張りまわす、いつも驚かせる、嫌になるくらいわがままで…たまらないくらい、かわいい男なんだ!


「?!…ど、どうした、ラウラ?!な、何で泣くんだ?!」
「…」
突如、ミヒャエルを見かえすラウラの両瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちてきた。
突然の落涙に、さすがのミヒャエルも度肝を抜かれる。
こんなことはまったく自分の予想外だったのか、明らかに大慌ての様子だ。
「あ、あ、あ、あの!や、やっぱり、嫌なのか?!…で、でも、俺は…!」
「…」
「な、泣かないでくれ、ラウラ!お、俺は、その…!」
「…」
先ほどとは打って変わって、動揺もあらわなミヒャエル。
はたから見ていてみっともないぐらいに慌てている今の彼には、先ほどまで全身に満たしていた自信などかけらもみあたらない。


…ああ、ミヒャエル。
自分勝手で、わがままで、自信家の―私のかわいい、お馬鹿さん。
だけど…私に泣かれただけで、アンタはこんなになっちゃうんだね。
そう思うと、何だかそれが妙におかしくて、うれしくて―!


「…あははは、ッ!うふふふ、あははは…!」
「…ら、ラウラ?!」
泣いていた顔が一転、突如けらけらと笑い出すラウラ…
いきなり笑い出した彼女に、ミヒャエルはすっかりあっけにとられている。
「ふふ…アンタのそんなに慌てたカオ、子どもの時以来だね」
「は、はあ…?!」
「ああ、アンタと来たら!ガキのころはてんで気弱のへなちょこだったくせに、いつの間にやらこんな偉そうな男になっちまって…!」
「ら、ラウラッ!お、俺は真剣なん…?!」
自分の真摯な告白を、冗談だと思われている…からかわれている、はぐらかされていると思ったミヒャエルの頬に、ぱあっと朱がさす。
だが、彼が抗議の言葉を口にする前に…その音をつむぐ唇を、女のやわらかな唇が黙らせた。
…ミヒャエルの瞳が、びっくりしたように大きく見開いた。
「…」
「いつだかのお返しだよ、ミヒャエル」
「ら、ラウラ…」
そう囁きかけるラウラの声。
ミヒャエルの耳をくすぐり、彼の脳内で甘く散っていった。
そのかけらに酔ったミヒャエルに、なおもラウラは意地悪を続ける。
「アンタみたいな自分勝手な男相手じゃあ、苦労するだろうな」
「…そ、そんなこと…」
「…だから、」
ラウラの表情が、いたずらっぽいものに変わる。
それはまるで、子どもの頃のような―
「私みたいな、気の強い女でないと務まらないか…そんな役!」
「!…ラウラ!」
「ああ、ミヒャエル…!私、アンタのために毎日祈るよ!私のいとしいアンタが、ずうっと無事でいられるように、
…ずうっと幸せでいられるように、ってさ!」
「ラウラ、それじゃあ…!」
ミヒャエルの表情が、歓喜に満ちあふれる。
ラウラは、笑顔で―こっくりと一回、うなずいた。
「ミヒャエル!私、神様にお祈りするよ!アンタのために…!」
「ラウラ…!」
満面の笑顔。ミヒャエルは、思い切り愛する女をその腕に抱いた。
抱きしめられたラウラも、頬を感激で紅潮させ…ミヒャエルの身体を、強く強く抱きしめた。
と…あることに気づいたラウラが、はっとなる。
「で、でも、私と結婚なんて…は、反対されるんじゃ」
「いいさ、家を出りゃいいんだから」
「?!…だ、ダメだよミヒャエル!」
あまりにあっさりと「家を出る」と言ってのけたミヒャエル…むしろそれにはラウラのほうが驚いた。
それはそうだろう、ミヒャエルはブロッケン家の長男…つまり、爵位を継ぐべき者なのだ。
その彼が、自分のような女のために、その権利と地位を捨てるとは…!
だが、ミヒャエルにとって、いとしい女と比べれば…そんなものは、カビの生えた時代遅れの遺物同然であった。
「俺の花嫁を認めないような家なんて、こっちのほうからお断りだ」
「だ、だけど…」
「…まあ、とにかく早く式を挙げてしまおう?先に事実を作ってしまえば、何とかなるものさ」
にいっ、と笑ってそう促したミヒャエルに、ラウラは思わず笑みを誘われた。
…いつもミヒャエルはこうだ。
何にでも自信満々で…俺が失敗するはずなんかない、って自惚れてる。
やれやれ、その裏にどんなまともな算段があるんだか!
恋人の子どもっぽい、だがかわいらしい面。
ラウラの胸に、ミヒャエルのそんな表情が焼きつく…
「…あいかわらず自信家だね、アンタは…」
「…ふふん、そうか?…ああ、それとも、ラウラ…」
と、何だかいたずらっぽい表情になったミヒャエル…
彼は、ラウラを抱きしめたまま、そっと彼女の下腹部をなでながら…意味ありげに、こんなことを言ってのけた。
「もっとはっきりした『事実』を作る、ってのもいいかもしれないけれどな…!」
「…!!…な、何言ってるんだ、…このスケベッ!」
「はは、冗談だって!怒るなよラウラ!」
その「事実」の表す意味を理解してしまったラウラの表情が、一気に真っ赤に変わる。
そんないとしい女の純な反応を見て…ミヒャエルは、心底おかしそうに笑うのだった。

「ミヒャエル!」
「ああ、マックスか?」
それから、また数日たったある日。
ラウラに会いに行こうと彼女の家に向かったミヒャエルは、途中で彼女の弟・マックスに声をかけられた。
「なあ、アンタ旅に出るんだって?姉ちゃんから聞いたぞ」
「ああ…上官の付き添いでな。三ヶ月くらい北部に行ってくる」
マックスにそう問われたミヒャエルは、いかにも面倒くさそうにそう言った。
結婚を誓い合い、結婚式を挙げようと計画を始めたその矢先だった。
ミヒャエルは上官の命令で、北部への視察に付き合わされることになってしまったのだった。
「姉ちゃん怒ってたぞ。式を挙げるとか自分で言っときながら、自分は用意も何もしないままどっかにいっちまうのか、って…」
「…うるさぁい、マックスの阿呆!」
「いでぇ?!」
べらべらしゃべるマックス…だが、突然襲った後頭部への一撃が、否応なく彼を黙らせた。
「あ、アンタねえ!何ベラベラいらないことしゃべってるんだいッ?!」
「…ラウラ!」
見ると、それはいつの間に来ていたのか…噂の張本人、ラウラだった。
身内に漏らした愚痴を、こともあろうに本人にばらされてしまった彼女…相当動揺しているのか、明らかに顔が真っ赤だ。
「み、ミヒャエル…マックスの言ったことは気にしないでよ。私、別に…」
「いや、本当なら俺もいろいろ手伝わなきゃならないことだし…ごめんな、ラウラ?」
「い、い、いいんだ!わ、私に任せといてよ!…さ、三ヶ月だよね?!」
「ああ。…帰ってきたら、早速式を挙げよう?そうして、二人で暮らそう…」
「み、ミヒャエル…」
ミヒャエルに、穏やかな声で囁くようにそう言われ…顔を赤らめるラウラ。
ラウラの照れた表情に、ミヒャエルもふっと微笑する。
そして、すっかり魅入られたような風情で、お互いを見つめあう二人…
その光景を眼前で見せつけられたマックスは…正直、鼻白んだ。
なので、わざと大声を出してその雰囲気に首を無理やり突っ込んでやった。
「…あ〜あ〜、昼間ッから頭のねじがゆるんでること!あーお盛んお盛ん!」
「!…ま、マックス!」
「あーあ、でもさぁ…三ヶ月かぁ、長いよなぁ?」
「ああ、まあな…行きたくなかったんだが、しょうがない」
「いや〜、そうでもないんじゃないの?」
「…?」
にやり、と意地悪く笑ったマックス。
その意味がわからず、ミヒャエルたちはきょとんとする…
が、マックスが次にこう言ってくるのにつけ、ラウラの顔色がざあっと変わった。
「だって、あっちのほうにはさあ?そりゃあ美人の女の人もいっぱいいるだろうし、」
「?!」
「…はあ?」
話を振られたミヒャエル本人は、「何をわけのわからないことを」というような顔をしているが…
「ミヒャエルはハンサムだから、モテモテになっちゃったりして…」
「おいおい、何言ってるんだマッ…ぐ、げふッ?!」
…きつい一撃が、今度はミヒャエルの後頭部に飛んできた。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、アンタ!そそそ、そんな真似したら、私一生恨むわよ?!」
「ら、ラウラ?!な、何こんな冗談を真に受けてるんだ!」
頭をさすりながら振り向くと、そこにはぶるぶると震えて怒っているラウラの姿。
自分の想像で大ショックを受けてしまったのか、すっかり涙目になってしまっている。
「わ、私というものがありながら!う、う、浮気なんて…」
「馬鹿だな、ラウラ…俺が浮気なんて、するはずないだろう?」
「…」
ラウラの動転に苦笑しながらも、ミヒャエルが彼女を見つめる視線は、何処までも甘い。
その視線にやさしくなぜられ、ラウラも少しは落ち着いたようだ。
「どうした?そんなに俺が信じられない?」
「そ、そうじゃないけど!…は、離れているからって、絶対浮気なんかするんじゃないわよ?!」
「ああ、わかってる」
「『約束』だからね!」
「ああ、『約束』するって…!」
何度も何度も念押ししてくるラウラに、ミヒャエルは笑ってうなずく。
交わした「約束」の手形代わりだ、とでも言うように、ラウラの頬に軽く口づけしてやった。
「…本当だからね、…信じてるよ」
「ああ、信じてろよ。…待っててくれよな、ラウラ。帰ってきたら、結婚式だ」
「ミヒャエル…」
そして、再びお互いをうっとりと見つめあう恋人同士。
「…」
…一方、いつの間にやら蚊帳の外へと追い出されていたマックスはというと。
彼は、その光景をぼんやり見ながらも…天下の往来でこれ以上発展したコトをしようものなら、
二人とも思いっきりはたき倒してやろう、と思っていたのだった(さっきの仕返しも含めて)。

ミヒャエルの出立から、三ヶ月あまりの日々…それは、実にけだるく、だらだらと過ぎていった。
特に、いとしい恋人と引き離されてしまい、見知らぬ街で鬱々としているミヒャエルにとっては。
仕事をこなしたその後になっても、彼のやることといえば…
街に繰り出すでもなく、あてがわれた部屋のベッドの上にねっ転がり、ぼやっと空想をしているくらいだ。
…そのほとんどが、この旅の後、新たに始まる旅…ラウラとの新婚生活についてだったのが、いかにも恋に狂った男のやることらしいといえばらしいが。
そんなこんなで、ミヒャエルは派遣先での日々を、ただ無為に過ごしていたのだった。
あれやこれや空想するほかに、彼が旅先で為した実のあることと言えば…
最後に滞在した街で、偶然見つけた雰囲気のよい装身具店…
そこで、「結婚指輪」をつくったことぐらいだろうか。
通りがかった街角で見かけたその店は、どことなくひなびていて…だが、それでいて歴史と深みを漂わせていた。
その店でミヒャエルが注文したのは、シンプルな銀の指輪…それを、二つ。
…同じモノを、サイズを違えて、二つ。
注文を請け負った年老いた彫金師は、すぐにその指輪の意味を悟り…穏やかに微笑み、素晴らしいものを作ってやるから任せろ、と胸を張ったのだ。
そして、約束の日。
ミヒャエルは、再びその店のドアを叩いた。
「…やあ、こんにちわ」
「!…おお、来たねブロッケンさん!」
「どうだい、頼んでおいた奴は?」
「ああ、もちろん出来とるよ!今出来たばっかりじゃ!」
にっこりと笑った彫金師。
彼は、作業机のそばの棚から、真っ白い布に包まれた何かを取り出す。
そして、それをミヒャエルに手渡した。
「…!」
白い布に包まれていたそれは、光そのものがきらめくような銀色をしていた。
なだらかな流線を描く細工が表面に施されているが、決してそれは派手ではない。
優美さと、そして何より、強い力そのもののようなその銀の指輪のきらめき…
それは、まったくミヒャエルの望みにかなうものだった。
「どうです?気に入りましたかな?」
「…ああ。とても気に入った…」
その銀の指輪を見つめ、陶酔したため息をつくミヒャエル…
そんな彼の様子を満足そうに眺めながら、老人は最後の仕上げをその指輪に施すべく、彼に問いかけた。
「えぇと、それじゃ…何て彫るかね?」
「え?」
「リングの内側に。何て彫るんだね?」
「…そうだな…」




"Ich gelobe es, dich zu lieben―――AUF EWIG."
あなたを愛し続けることを誓う―――永遠に。





「よしよし、了解…それじゃ、少し待ってておくんなさいよ」
「ああ」
気のよさそうな老彫金師は、早速仕事に取り掛かった…
再び指輪を受け取り、細かな作業に入る彼。
そんな彼の様子を、見るとはなしに見ながら…そのうち、ミヒャエルのこころは、遥か故郷に飛んでいた。
故郷の街、そしてそこで自分の帰りを待っている…美しい花嫁へと。
ラウラは気に入ってくれるだろうか、この贈り物を…?
任務から帰ったら、さっそく彼女の元に走っていこう。
ラウラのあのたおやかな左手に、その薬指に…この指輪をはめてやるのだ。
そうして、自分たちは「夫婦」になるのだ…
永い時をともに生きていく永遠の親友、久遠の恋人として…
ミヒャエルの脳裏に、ふっ、と…さまざまなイメージが浮かんでは消え、消えては浮かび続ける。
その全ては愛する女の姿となり、ミヒャエルのこころに望郷の念を呼び覚ますのだった。