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あしゅら男爵の最期
〜束の間の輝き、栄光の綺羅星〜


第78話「あしゅら男爵 太平洋に散る!!」
愚かで、間抜けで、しかし愛すべき敵であったあしゅら男爵のために


「過去、現在、未来に続く、永遠の星よ。私に束の間の輝きを与えたまえ…」
「私を見つめるDr.ヘルのあの冷たい目、ブロッケン伯爵のあの蔑みの目を、炎と打ち砕く栄光の輝きを…」
「…」
「…私は、もう疲れ果ててしまった…」


薄暗闇。広がる雲を裂ききらめく星々…視線をその闇の中に彷徨わせながら、あしゅら男爵はこころの内でこう呟いた。
そして、これが彼の最期の戦いの始まりだった…

話は、その前話にさかのぼる。
ブロッケン伯爵が自らの指揮官機・飛行要塞グールに搭乗しての作戦行動中のことだった。
マジンガーZと交戦中、彼はジェットスクランダーに胴体を真っ二つにされてしまったのだ。
重傷を負った彼の替わりに、グールの指揮を担当したのは…他でもない、あしゅら男爵だった。
しかし、彼の無茶な命令により、グールは大破。
そしてその巻き添えをくった形となり、Dr.ヘルの基地である地獄城も損害を出してしまった。
当然のことながら、これはDr.ヘルを激怒させた。
それは指揮官機を破壊されたブロッケン伯爵も同様であったが、
今までの繰り返された失敗に加え、今回の大失策―
Dr.ヘルですら、もはやあしゅら男爵に何の信頼もおくことは出来なくなってしまった。

これは、彼自身の愚かさが招いた苦境。
そして、彼の運命を大きく分けた転機となったのだ。

夜空を見上げていたあしゅら男爵を、突如襲う凶弾!
それは、何と鉄十字軍団の者…
自らの上官であるブロッケン伯爵の搭乗機グールを破壊したのは、
ブロッケン伯爵の追い落としを狙ってのものだ―
そう確信した、一部の「跳ねっかえり」の所業だった。
しかし、鉄十字軍団ごときにみすみす殺されるあしゅら男爵ではない。
彼らをバードスの杖から出る破壊光線で返り討ちにした…
そこにあらわれたブロッケン伯爵に、当然のことながら敵意を剥き出しにするあしゅら男爵。
しかし、この事件はブロッケン伯爵の意図するものではなかった―
そう彼が述べても、あしゅら男爵の耳にはもはや届かない。
先の失策により地獄城での立場も居場所も失っていたあしゅら男爵には、
もはやそのような言葉をまともに受け取れるだけの余裕もなかった。

あしゅら男爵「Dr.ヘルにも伝えてもらおう、後悔するなとな…!」

この言葉を最後に、あしゅら男爵は地獄城から姿を消した―
鉄仮面軍団十数人と、潜水艦ブードを伴って。
脱走の罪を負う身となったあしゅらを追撃すべきだと主張するブロッケン。
だが、Dr.ヘルはただ嘲笑うのみだった…
「血迷ったか」と。
そして、あしゅらを罰するのは奴が何をするのか見届けてからでも遅くはない、と言うのだった。



甲児と研究所間の通信を傍受するブード。その内部に、甲児の軽口が響き渡る―
あしゅら男爵を蔑み小馬鹿にするその若僧のセリフに、鉄仮面たちは拳を握り締めた。
鉄仮面「あしゅら男爵、やらせてください!」
そう猛る鉄仮面をあしゅら男爵はいさめる。
チャンスはまだある、と。
そして、両の瞳…女の青い瞳、男の黒い瞳から流れ落ちるのは滂沱の涙。
あしゅら男爵「残された戦いは一回しかないのだ」
…彼は、そう吐き出し、涙を流した―

だが、地獄城を脱出してきたあしゅらには、潜水艦ブードはあっても機械獣がない。
もはやDr.ヘルには頼れぬ身となったあしゅら男爵…
彼が助けを求めたのは、地獄の用心棒・ゴーゴン大公だった。
あしゅら男爵は機械獣を貸してほしいと彼に頼む。
あしゅら男爵「万一この作戦に失敗したら、生きては帰らぬ覚悟!」
だが、ゴーゴン大公はすでに知っていた―
あしゅら男爵が地獄城を抜け出してきたということを。
ゴーゴン大公はにべもなく言った、
脱走者に機械獣を貸す事はできない、と。

追い詰められたあしゅら男爵。
機械獣を借りられぬなら、と、その場を立ち去ろうときびすを返す…

ゴーゴン大公「待て!…あしゅら男爵、早まるな!」

だが、その時。
ゴーゴン大公の大声が、あしゅらの足を止めさせた。

あしゅら男爵「ゴーゴン大公…」
ゴーゴン大公「死を覚悟してきたものを放ってはおけん!」


何が彼の心を動かしめたのだろう、
今まで無能のあまりに機械獣を散々無駄に壊しまくってきたあしゅら…
だが。
ゴーゴン大公は、その彼に己が力を分け与える事を選んだのだ。

ゴーゴン大公「完成したばかりのエレファンスγ3がある。これを盗んでゆけ!
わしは何も知らぬ事にしておいてやる!」
あしゅら男爵「ゴーゴン大公!」
ゴーゴン大公「成功を祈るぞ、あしゅら男爵…!」




ゴーゴン大公から妖機械獣を借り受け、戦いの準備は全て整った。
あしゅら男爵「我々にはもはや帰るべき場所はない!
みんな最後まで勇敢に戦ってくれ!…いいな!!」
鉄仮面軍団『おおッ!』

エレファンスγ3は海岸で待機、そしてあしゅらのブード自体は太平洋上に待機。
マジンガーZをおびき寄せ、研究所から引き離す…!
そう、今回の彼の作戦は、まさしく背水の陣そのもの…
大将である自らの指揮官機・ブードをおとりとし、マジンガーZを光子力研究所から引き離すのだ!
あしゅら男爵「鉄仮面、一歩も退くな!
エレファンスγ3が存分に働けるよう、マジンガーZをひきつけ、ミサイルを撃って撃って撃ちまくれッ!」

果たせるかな、マジンガーZはブードを攻撃するために出現、
ブードを相手に激しい戦闘に突入する。
その戦場には、ゴーゴン大公の姿もあった…
あしゅら男爵の戦いを見届けるために。

そして、マジンガーが光子力研究所から十分はなれたころ。
妖機械獣エレファンスγ3は、光子力研究所撃滅のために動き出した。

一方、光子力研究所。
エレファンスγ3を迎え撃つため、出撃するダイアナンAとボスボロット…
だが、妖機械獣の力にかなうはずもなく、軽く一蹴される。
唯一対抗できうるマジンガーZは…必死のあしゅら軍団の奮闘によって、遠く離れた海上に釘付けになっている!
(しかし甲児といいこの場面でのボスといい、どうもマジンガー側のパイロットにはたるんだ雰囲気が漂っています。
それは、決死の覚悟で戦いを挑むあしゅら男爵側と並べられているゆえ、なおさらに際立って見えます)



マジンガーと戦うブード、その様子をDr.ヘルたちも見ていた―
Dr.ヘル「あしゅら男爵…わしはお前を誤解しておったようじゃの」
ブロッケン伯爵「ふん…格好ばかりつけおって…!」
Dr.ヘル「あいつは、死を覚悟でマジンガーZの攻撃を耐えておるのじゃ。
そこまで思いつめておったのか、あしゅら男爵…」




マジンガーの猛攻に傷つくブード!
外壁がやられ、被弾箇所からは水が流れ出してくる…
だが、鉄仮面たちは必死に耐える、彼らが指揮官・あしゅら男爵とともに戦う!

と、弓教授から「研究所が妖機械獣に襲われている。これは(マジンガーを引き離す)罠だ」と甲児に通信が。
それを受けた甲児は、すぐに研究所に戻ると返す。
いったん海上に浮上したブード、それを追ってマジンガーも海中から飛び出す。
どよめく鉄仮面たち…
あしゅら男爵「落ち着け鉄仮面!」
あしゅら男爵は鉄仮面を制する。
そして彼は何の惑いもなく、よどみすらなく言い切った…!
あしゅら男爵「今度は急速潜行すると見せかけて、突っ込んでくるマジンガーZと体当たりだ!」
鉄仮面「あしゅら男爵、それでは…!」
あしゅら男爵「そうだ!…マジンガーZとともに、自爆するッ!」


潜行するブードを追い、海中に沈むマジンガーZ。
だが、そうなるや否や、ブードは機首を180度旋回させ、マジンガー目がけて全速力で突っ込んだ―!!







そして、静かな海を強烈な爆発音が切り裂いた。







やがて海面に浮かんでくるのは、粉々になったブード。
マジンガーZの機体は、波間には見当たらない―
だが、ゴーゴン大公は、ブードの残骸の中、ぼろきれのようになって揺らめいているあしゅら男爵を見つけ出した!
すぐさま彼を海から救い出し、必死に呼びかけるゴーゴン大公。

ゴーゴン大公「あしゅら男爵、あしゅら男爵!しっかりしろ!」
あしゅら男爵「…おお、ゴーゴン大公…マジンガーZは、」
ゴーゴン大公「安心しろ、マジンガーZは海の底で眠っておる」
あしゅら男爵「…」
ゴーゴン大公「あしゅら男爵!エレファンスγ3はすでにコントロールタワーを攻撃しておる!
さあ、お前も行って光子力研究所の最後を見届けるのだ!」


瀕死のあしゅら男爵を抱え、ゴーゴン大公は光子力研究所に飛んだ。
だが、あしゅらはもはや全ての力を使い果たしていた…
彼のいのちの炎は、風に吹き消されるかのように静かに消えた、
丘の上から滅びゆく光子力研究所の様を見ながら。
しかし、あしゅら男爵は幸福であったのだろう。
彼は…マジンガーが海底から舞い戻り、妖機械獣を破壊するその様を見る事がなかったのだから。
その前に、ゴーゴン大公の腕の中、最期にこう一言言い残し…あしゅら男爵は、その二度目の死を遂げた。

「…Dr.ヘルに伝えて下さい…あしゅらは、最期まで勇敢に戦ったと…!」

彼の死はDr.ヘルに衝撃を与え、ゴーゴン大公にその弔いを誓わせる。

そして、マジンガー打倒のために戦い、それを果たす事の出来ないまま散華した指揮官、あしゅら男爵は…
Dr.ヘルの居城、地獄城の海岸沿いで…石像となって、彼らを見守っている。



Dr.ヘル「鉄仮面軍団!鉄十字軍団!
我が勇敢なるあしゅら男爵の名誉に対して…敬礼!!」