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vsゆどうふ 第十三試合 <vsBGM>


音楽。
それは、人のこころを動かしめるメッセージ。
音楽を愛さぬ人間など、この世にいるのだろうか?
だから街には音楽があふれる。BGMという形で。
これは、人類の英知がそのBGMの魔力に打ち勝てなかった哀しき事例である。

私のバイト先のコンビニでは、ご多分に漏れずノンストップで有線ヒットチャートが流れている。
今流行りの歌謡曲をエンドレスで流してくれるわけだが…
それがまた毎日毎日同じ曲ばかり流してくれるので、
さすがの歌謡曲オンチの私も、自然に新譜を覚えてしまうほどだ。
好きな曲が流れるとやはりゴキゲンになるし…
だが、それはうれしい反面、ちょっと問題でもある。

その日、私は電卓と伝票を相手に、懸命に集計作業をしていた。
「39たす、87、たす、19…」
手元の大きめの業務電卓を叩きながら、計算ミスをしないように注意深く。
伝票と電卓の液晶画面に交互に目を走らせながら、
早いことこの手間な作業を終わらせてしまおうと、私は必死になっていた。

…だが、その時だった。
天井に備え付けられたスピーカーが、あの妙なる旋律を奏で始めたのだ!
『ちゃらりらちゃ〜ら〜り〜ら〜ちゃ〜ら〜りらりるら〜ら〜ら〜ら〜ら〜♪』
「!!」
こ…これは!
い、今有線ヒットチャートで流れている曲の中で、私が一番お気に入りの曲…
Perseus−ペルセウス−(島谷ひとみ)〜ッ?!
(や、ヤバい!こ、これは…ァッ!)
いや、うれしくないと言うわけではない。好きな曲がかかるのはむしろうれしい。
(しかし、しかし…い、今は勘弁してくれッ!)
そうこう煩悶しているうちに、歌が始まってしまった。
『Rise 空には太陽が Force あなたには強さが 似合う♪』
「9、97たす、32…たす…」
次のフレーズは、『Days』だったっけ。それとも『Stars』だったっけ。
ふっと頭をよぎるそんな疑問。
電卓のボタンを叩いていた手が、止まった。
『Days 涙は夢をみて Stage 未来を描いては 掴む』
(をを、あってたよ)
納得して作業に戻る。
…が、私の脳内メモリは、小さい。
歌の歌詞に気をとられた瞬間、何処まで計算したかという記憶が吹っ飛んでいた。
私「い…いかんいかん」
改めて、もう一度最初から…
「39たす、87、たす、19…」
だが、音の誘惑は容赦ない。
『世界中 風さえあるのなら どこまでも ぼくらは飛べると誓い合う♪』
あ、来るぞ、来るぞ…
『絆が見えた』
「み〜え〜た〜っ♪」

…とうとう、参加してしまった。
もう、ダメである。何故なら、次からは…一番おいしい箇所、「サビ」だからだ…
「ダイアモン〜ド〜か〜らぁ ゆ〜め〜を放つ ペ〜ル〜セ〜ウ〜ス〜♪」
『まだ見ぬチカラを その瞳に秘めて』

思わずハモってしまう。島谷ひとみと一緒にサビを熱唱(小声で)。
『光の翼が 虹をかけて』
「ゆ〜く〜 ふぃーるどおぶどりーむっ♪」

そして、クライマックス!
私は思わず、目線を上にあげ…(←もう目は伝票見てない)
「輝くあ〜な〜た〜を〜し〜ん〜じ〜て〜る〜ぅっ♪」
…じいん、と身体に走る軽い感動。
そして、再びイントロに戻る…
『ちゃらりらちゃ〜ら〜り〜ら〜ちゃ〜ら〜りらりるら〜ら〜ら〜ら〜ら〜♪』
慌てて、伝票計算に戻るものの…もう、私は半分身構えている。
ああ、サビがきたらまたやっちまうだろう。
なんて魔力だ、BGMって奴は…
多分、この伝票計算は、この歌が終わるまで終われないだろう…
そう思いつつも、私の心は既に二番の歌詞に入っていってしまっていた。

…今のところ、有線ヒットチャートに好きな曲がそんなにないので、
こうなることはほとんどないといっていいのだが…
これがアニメソングのチャンネルにされた日なんかにゃ…
多分私、仕事できなくなると思います(自己申告)。
追記:「銀の龍の背に乗って(中島みゆき)」も、私にとってはヤバいです。