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【五千円以内で幸せになる方法】


1、インスタント菓子を作ってみる

 インスタント菓子。それは全国のお子様がおそらくその生涯に一度は食したことがあるであろう、「卵と混ぜて冷蔵庫で冷やすだけ」
「牛乳を混ぜるだけでプルルンチョ☆」といった、どこか子供じみた、それでいて強烈にこころをひきつける、ふしぎな風情の食物である。
ご家庭で簡単に「手作り」できるブキッチョ母さん御用達おやつですな。
 商品名をいくつか挙げてみよう。「あ、これナツカシィー!!」という名がいくつかあるはずだ。
『フルーチェ』『プリンエル』『プリンミクス』『クールン』『ゼリーエル』…
 今回はおそらく大多数の人がご存知であろう『フルーチェ』の話をしよう。をを、あの白い記憶の扉は今開かれたり(大ゲサ)

 夏のある日、私はふと重大な事実に気がついてしまった。
「そういえばもう六年もフルーチェ食ってねぇ!!」
考えてみればまさしくその通りである。私のフルーチェ歴は中学一年あたりで停止したままであった!
私の青春時代にフルーチェというものはまったくその存在感を残してはいなかったのだ。
「うむ、そうと知ったら急に食べたくなったぞ。食そうではないかフルーチェを」
体言止めを使用した大仰な言い回しと共に私は近所のスーパーへチャリンコを走らせた。
 夏のまだ朝早くとあって、客の少ないスーパーでフルーチェを発見するのは実に容易であった。
昔どおりのネーミング。ブドウなどの見慣れないフレイバーなどもお目見えし、私のフルーチェブランクの長さをひしひしと感じさせる。
『フルーチェメロン味』をつつがなく購入し家に帰還した私はさっそく製作に取り掛かった。
銀色の袋からキラキラと光るフルーチェ粉が流れ出す。
そして緊張の一瞬…冷たい牛乳をそうっとその中へと注ぎ込んでいく…
「うわっ」そんな効果音が思い浮かぶほどの勢いであった。
フルーチェ粉は牛乳に侵食されモコモコした謎の形状をなす。慌ててそいつをかき混ぜた。
「ええいこしゃくな!」
私の一撃により木ベラに絡みつくフルーチェ粉も謎のふよふよ物体に飲み込まれた。
 金属ボールいっぱいにできた白くてらてらと光るフルーチェ完成体。
さながら恐怖に身を震わせる乙女のように、「ふるふる…ふるふる…」とはかなげにゆれる様がいとおしい。
「くっくっく、今喰ろうてくれようぞ」
ぎらりと光るスプーン一閃。ふにゅりとゆがむフルーチェ群…一口大に切り取られた快楽が口の中でゆっくりと溶けていく…
その甘さと幸福感!!
 私は「うまひ、うまひ」などといいながら次々とスプーンを進めていった。
そのたびプルプルとたゆたうフルーチェ群、。そのたび広がる優しい口内の快楽…
 しかし快楽は長くは続かなかった。優しく甘いが単一でしかないフルーチェ群は次第に私を圧迫し始めたのだ。
 増大していく焦りに戸惑いながらも私はスプーンを止めない。
嗚呼先ほどまでははかなき乙女に見えたフルーチェ完成体はもはやどあつかましい熟女…
いや、オバハンのぶよぶよした脂肪を思わせるすがたをしているではないか!
 金属ボールいっぱいのフルーチェ群よ。間の悪いことに家族もいない。
いや、いい大学生の私が一人でフルーチェ作って食べようとしていたなんてとてもではないがいえない。
 もはや「ノルマ」と化したフルーチェ群は喜びや幸福の象徴ではなかった。
ぺたりと張り付く甘さと意外にずっしりとおなかにたまる重量感。
すくってもすくっても一向に減らない無限機関のような…
『白い悪魔』そう、モンスターではないか!
 私は押し黙ってそれをからだに押し込んでいった。
からだにフルーチェが進入していく。あの、あのふよふよ物体が私を飲み込んでいく…
「すぎたるは及ばざるがごとし」
昔の人は実によい、真実たることを言うではないか?
 苦い私の後悔の念を、ときおり舌を滑り落ちていくメロン味の果肉が強烈な甘味でごまかそうとした。

(ワンポイントアドバイス)一箱は大体3〜4人分なので無理はしないようにしよう。