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俺たちゲッターロボマニア>ヒャッキーロボG第五話


<♪ヒャッキーロボ!(『ヒャッキーロボG』オープニングテーマ)>

ガン! ガン! ガン! ガン!
若いいのちが 真っ赤に燃え〜て〜
ヒャッキースパーク〜 そ〜ら〜たか〜く〜
見〜たか〜 合体〜 ヒャッキーロ〜ボ〜だ〜
ガッツ! ガッツ! ヒャッキーガーッツ!
みーっつ〜の〜こ〜ころ〜が〜 ひとつになれ〜ば〜
ひ〜とつ〜の〜正義は〜 百万パーワーアー
あ〜く〜を許〜すな〜 ヒャッキーパ〜ン〜チ〜
ヒャッキ! ヒャッキ! て〜い〜こ〜く〜 ヒャーッキーロボ〜♪



ヒャッキーロボG 第五話 百鬼勇者は死なず


渾身の、トライデント(三叉槍)の一撃をすり抜けて。
ヒャッキードラゴンの懐にもぐりこむようにして。
鉄甲鬼は、見た。
ゲッタードラゴンの動きを、全て。
「―――」
それはまるでスローモーションのように見えた。
ゲッタードラゴンのスピンカッターが、ヒャッキードラゴンのどてっ腹を、真横一文字に切り裂いていく。
鋼鉄の鋸は深く深く喰い込み、彼が魂を込めて作り上げた機構をいともたやすく破壊していく―
鉄甲鬼は、知った。
自らの造り上げた最強のロボット、ヒャッキーロボG…
その最後の時が今来たのだ、と。
「―――」
やがて、スピンカッターは、ヒャッキードラゴンの左腕をも切り裂いて止まる…
ばたん、と大地に落ちた黒金(くろがね)の腕。
「…」
己の勝利を確信したか…ゲッタードラゴンは、そのまま空高くへと飛び去っていった。
せめて、その死に様だけは。
誇り高い勇者たちの無残な死に様だけは、「敵」である自分たちの目にさらさぬようにと。
飛びすさっていくゲッタードラゴン、その姿を見ながら…
鉄甲鬼は、悟った。
彼の頬を、一筋の涙が伝った―
「…俺の、…負けだ…!」
鉄甲鬼は、そうつぶやいた。
コックピット中にアラームが鳴り響き、そのつぶやきをもかき消した。
黒曜石色(オブシディアン)の瞳が、何の光をも映さなくなった―
「胡蝶鬼!」
「ああッ!」
自雷鬼の叫びに、胡蝶鬼が応じる。
もはや一刻の猶予もならない。
自らのコックピットを出た二人が向かったのは―ドラゴン号のコックピットだった。
「鉄甲鬼ッ!脱出するぞッ!」
「…」
「何を呆けている?!ほら、早く立てッ!」
だが。
胡蝶鬼の必死の呼びかけにもかかわらず、鉄甲鬼は何も答えない…
振り返りもせず、シートに身を沈めたまま。
ただ、虚空を見つめている。
壊れてしまった、機械仕掛けの人形のように。
胡蝶鬼は泣きそうになりながら叫ぶ、懸命に鉄甲鬼をゆすぶる。
「鉄甲鬼ィッ!脱出するんだ!…死んでしまうぞ!」
「…」
「…〜〜ッッ!」
無気力な人形と化した鉄甲鬼を、自雷鬼が思い切り殴りつけた。
「うぐ…ッ?!」
自雷鬼の強烈なブロウを腹に喰らった鉄甲鬼は、そのまま失神した。
すぐさま人事不省の鉄甲鬼を肩に抱え上げる自雷鬼。
「自雷鬼!」
「出るぞ、胡蝶鬼!」
自雷鬼の言葉に、胡蝶鬼もすぐさま同意した―
…その、数秒後。
研究所へ帰還するゲッタードラゴン、それを駆るゲッターチームの耳に、背後から…鈍い一つの爆発音が届いた。
「…」
「…」
「…」
三人は、何も言わなかった。
振り返ることもしないまま、ただ、ただ、前を向いて、研究所に向かった。
(…鉄甲鬼)
リョウは、胸のうちだけで呼びかける。
何処までも己の信念を貫こうとし、そして散ったあの好敵手に…
(今度は、「人間」に生まれてくるんだぜ…
そして、今度は。
今度は、サッカーで「正々堂々」と勝負しようじゃないか…!)


「いやあ、『人間』の発明も捨てたもんじゃないなあ…すごいな、あの『ジドウハンバイキ』って奴は」
「…まったく、名門が窃盗なんてしていいのか?自雷鬼」
「仕方ないだろう、非常時だ。非常時には、多少のことは許される…と、思う」
夜。草原。
やわらかな月明かりと、焚き火の炎とが、三人の姿をぼうっと照らし出す。
機体を破壊されてしまったヒャッキーチームは、自力で百鬼帝国に戻ることはもはやかなわない。
「人間」の街にある秘密支部に行き、そこから移動するしかないのだが…
見知らぬ土地を夜動くのは無謀に過ぎる、ともかく夜が明けるまではここにいようということになり、人気のない草原の片隅にとどまっている。
炎を囲む自雷鬼と胡蝶鬼は、缶コーヒーを片手に他愛のない会話を交わしている。
路肩に立っていた自動販売機から失敬したものだが(自雷鬼が思い切り蹴りを連発したのだ)、「人間」のモノとは言え、割とそのコーヒーは美味しかった。
…が。
彼らがそんなことを話しているのは、何もコーヒーに感動したからではない。
この気まずい雰囲気をどうにかしたくて、とにかく口を動かしているだけのことなのだ。
「…」
石膏作りの彫刻のように、押し黙ったまま、うつむいたまま、自分たちと目を合わせないまま。
鉄甲鬼は、先ほどから一言も口をきこうとしなかった。
いや…ヒャッキーロボGが破壊されてから、彼の心血を注いだヒャッキーロボGが、ゲッタードラゴンのスピンカッターで切り裂かれてから。
彼は、言葉を失ってしまったかのように、口を開かなくなっていた。
もの言わぬ人形のように、魂を失ったかのような表情で。
自雷鬼に渡された缶コーヒーは、プルトップすら開けられていなかった。
「…」
「…」
「…」
話の接ぎ穂が、見つけられずに。
三人の間に、また暗い沈黙が流れ出す。
ぱち、ぱち、という焚き火の放つ音だけが、その闇に在る。
「…」
「…」
「…あ、あのさ…胡蝶鬼、」
「!…な、何だ?!」
しかし、耐えかねた二人は、再び何とか会話をつなぐ。
無理やりひねり出したセリフは、驚くほど演技くさかった。
「お、俺、やっぱりカプチーノの方がよかったなあ。取り替えてくれないか?」
「ふざけるな、もう半分飲んでしまった。言うのが遅い」
「そんなこと言わずにさあ、俺のエスプレッソと…」
「…っぐ」
が。
その時。
つまったような、息を殺すような、うめくような声が、聞こえた。
「…!」
「鉄甲鬼」
二人の視線が、その音の発信源に向く。
…鉄甲鬼が、泣いていた。
うつむいたまま、自分たちと目を合わせないまま、缶コーヒーを両手で握りしめたまま…声を殺して、泣いていた。
胡蝶鬼と自雷鬼の表情が、曇る。
「ぐ…う、ううッ…!」
「…」
「…」
それは、木っ端のような悲しみや苦しみが流させるものではなくて。
悔恨が、己の魂すらひねり潰すような重い重い悔恨が流させるもの。
鉄甲鬼が、泣いていた。
およそ彼には似つかわしくない、それはどうしようもなく重い涙だった…
「て、鉄甲鬼…悔しいのはわかるがな、もう泣くなよ」
「そうだ。自慢のロボットが壊されて、つらいだろうが…ま、また、造ればいいじゃないか!」
「…がう」
「え…?」
「ち、がう…お、おれは、ッ、俺は…じ、自分が、」
ひゅううっ、と、音を立てて、彼は必死で息をする。
その苦しい呼吸の中で、彼は搾り出すように言葉を放った…
「じぶんが、ゆるせないんだ…!」
「…鉄甲鬼。自分をそんなに責めるなよ…」
「あのヒドラーがしゃしゃり出てこなければ、私たちが勝っていたはずだ。だから、お前のヒャッキーロボGが、ゲッターロボGに比べて劣っていたわけでは…」
「…違うッ!」
だが。
慰める自雷鬼と胡蝶鬼の言葉を、鉄甲鬼は強く強く否定した。
「?!」
「お、俺が、自分が許せないのは…お、おれのせいで、俺たちは負けた、俺は、俺の…」
そして。
震える声で、まわらない舌で、頭を抱え、砕けそうなこころを抱え、
鉄甲鬼は、吐き出した―
「…俺のせいで、俺は…お前たちまで、巻き添えにしてしまったんだ…ッ!」
「…?!」
思いもしない鉄甲鬼の告白に、虚を突かれる二人。
が、いったん堰が切れてしまった鉄甲鬼の思いは、止まることはない。
勢いのままに、涙の流れるままに、彼はうめくように言うのだ。
「お、れは、あ、あの時…ヒドラーのやり口にかあっとなって、それで…思わず、ゲッターロボをかばってしまった。
…自分でも、自分の身体が勝手に動くのを、止められなかった!」
「…」
「俺のせいだ!俺の失敗なんだから、俺だけが処刑されればいい!…け、けれど!」
鉄甲鬼の瞳が、慙愧と罪悪感に濁る―
「ひ、百鬼帝国では、『敗北』はすなわち『死』…」
そう。
百鬼帝国には、負けた者のための場所などない。
掟は、非情。敗北には死を、それが掟。
今、ゲッターに敗北を喫した自分たち…
その自分たちが帝国に帰れば、死の運命を遇されるだけなのだ。
「おれのせいで、俺があんなことをしちまったせいで!お前たちにまで、お前たちにまで『敗北』の罪が、ッ」
「…」
「すまない…二人とも、すまない…ッ!」
悲鳴のような、そんなセリフを最後に。
鉄甲鬼は…むせぶ涙で、言葉を紡ぐことすらできなくなった。
「…」
「…」
「…」
「…ふう」
しばし、自雷鬼と胡蝶鬼は、そのままうつむいてしまった鉄甲鬼を前に、無言のままでいたが…
やがて、お互いを見つめ、苦笑とともにため息をついた。
と…胡蝶鬼が、やわらかな声で呼びかけた。
「鉄甲鬼」
「え…ん、んがッ?!」
思わず鉄甲鬼がそちらに目を上げた…その途端。
すうっと伸びてきた胡蝶鬼の指。
あっ、という間すらなく、その指は思い切り鉄甲鬼の鼻柱をつかんでひっぱりあげた。
力を込めてひっぱられ、痛みと驚きで目を白黒させる鉄甲鬼。
「こっちを向け」
「な…なにふるんだ、こちょうき…?!」
半泣きの顔で自分を見てくる鉄甲鬼。
彼を碧の目で見据え、彼女はふっ、と微笑ってやった。
「まあったく、お前は!…いつまでたっても、一人よがりか?」
「…?!」
鉄甲鬼をお仕置きから解放してやりながら、胡蝶鬼は呆れたように言った。
そんな彼女に面食らう鉄甲鬼の肩を叩きながら、自雷鬼も言う…
「俺たちは『チーム』、…『仲間』、なんだろ?」
「…」
「だったら、」
自雷鬼が、にやっ、と笑った。
えらく自身ありげなその風は、まるでいつもと同じふうで―
「だったら、いつもいっしょにわけあうんだ…それが、『勝利』であろうと『敗北』であろうとな」
「…」
「自分ひとりで格好つけるな、…私たちにも、それぐらいの器量はある」
「うむ。ここで『仲間』を見捨てるような真似をしては、あの世に行ったときに父上に顔が立たん」
「…」
自雷鬼と胡蝶鬼は、はっきりとそう言った。
揺らがない瞳で。
微笑すら浮かべて。
…何と、言うことだろう。
こいつらは…
こいつらは、何の後悔もしていないのだ。
自分がやった失敗のせいで、死の罪をかぶるというのに。
にもかかわらず…こいつらは、それをわけあうというのだ…
それが、「仲間」というものだから!
「それとも、お前にとって…俺たちは、『仲間』じゃないとでも言うのか?」
「そ…そんな!」
「だろう?」
首を振って拒絶する鉄甲鬼に、当然だろう、という顔をしてみせる自雷鬼。
「だったら、いいじゃないか!」
「そうだ。一人で気負うな、鉄甲鬼…」
「さあ、明日は揃って百鬼帝国に帰るぜ?」
「私たちは何も間違ってはいない!…胸を張って帰るぞ、…『正々堂々』、とな!」
「自雷鬼、胡蝶鬼…」
鉄甲鬼の黒曜石色(オブシディアン)の瞳に、ようやく光が映りこむ。
映りこむ、光の正体―
それは、胡蝶鬼。
それは、自雷鬼。
それは、「仲間」の姿―
自分を守ってくれる、助けてくれる、信じてくれる、ともに戦う、ともに在る―それは、光!
「ああ…そうだな、そうだ…!」
うなずく。何度も、何度も。
鉄甲鬼の頬を、新たな涙が伝う―後悔でも、悲憤の故でもない涙が。
「そうだな…俺たちは、『仲間』だものな…!」
「…」
「おうよ、…最期まで、いっしょだぜ」
自雷鬼は、それだけ言ってから…わざと、がらっと変わった明るい口調でこう続ける。
「さ、お前も飲めよ、なかなか美味いぞあの『ジドウハンバイキ』とやらは」
「まだ言うかそれを」
「…」
二人の軽口を聞きながら、ようやく鉄甲鬼は…のろのろと、渡された缶コーヒーのプルトップを開けた。
そして、一口すすりこむ。
…あたたかかった。
だから余計に、身にしみた…
焚き火の炎が、ぱち、ぱち、とはぜて、闇に火の粉を飛ばした。


「…」
かっ、かっ、という、規則的な音が、止まることなく部屋に響く。
3つの音が、不規則なリズムをかなでながら。
…そして、その音が一斉に止まる。
百鬼帝国の長、ブライ大帝の前に馳せ参じたヒャッキーチーム、鉄甲鬼、胡蝶鬼、自雷鬼の三人。
彼らは、再び生きてこの帝国に舞い戻った。
…もっとも唾棄され、死罪しか与えられぬ、生きる価値の無い…「敗残兵」として。
「…」
「…」
「…」
しかし。
三人の顔には、生存を請うような哀願じみたモノも、恐怖にまみれた動揺めいたモノも、なかった。
ただ、まっすぐな瞳で。
まっすぐな瞳で、ブライ大帝に相対した。
「…」
「…ぶ、ブライ様!こ奴らは、先日ご覧のごとく、私の命令を無視した挙句『人間』どもめに…」
「お前は黙っておれ、ヒドラー」
しばし無言であったブライ大帝に、そばにはべるヒドラー元帥が何やらぐちゃぐちゃ述べようとする。
が、それを一言で黙らせ、ブライ大帝は改めて三人に目をやった。
玉座の大帝の瞳が、戦士たちを見下ろす―
「…鉄甲鬼」
「…」
「何か、言いたいことはないか」
「…いいえ、ブライ大帝」
鉄甲鬼は、首を振って答えた。
「俺は、俺の全力を尽くして造ったヒャッキーロボGで、そして…俺の信頼できる大切な『仲間』たちとともに戦い、そして敗れました。…原因はいろいろあれど、言い訳はしません。…俺は、」
晴れやかな、静かな笑みさえ浮かべて答えた―
「俺たちは、『正々堂々』と戦いました…それだけで、俺は満足です!」
…その、鉄甲鬼の黒曜石色(オブシディアン)の瞳。
深い黒曜石色(オブシディアン)の瞳は、怖じることなくまっすぐにブライ大帝を見返す―
「…胡蝶鬼」
「私も同じです、ブライ大帝」
隣に立つ胡蝶鬼も、微笑を持って答えた。
「私は、最高の…『一番』の『仲間』たちと戦えたのですから。悔いなど、何もありません!」
…その、胡蝶鬼の翠玉色(エメラルド)の瞳。
澄んだ翠玉色(エメラルド)の瞳は、逃げることなくまっすぐにブライ大帝を見返す―
「…自雷鬼」
「俺も二人に同じです」
自雷鬼もまた、さっぱりとした笑顔で答える。
「俺は、祖先に恥ずかしくない戦いができたと思っています。…冥府に行っても、俺は父にそれを誇ることができるでしょう!」
…その、自雷鬼の虎目石(タイガーアイ)の瞳。
強い虎目石(タイガーアイ)の瞳は、退くことなくまっすぐにブライ大帝を見返す―
彼らの目は、揺らがなかった。
彼らは、逃げないのだ。
彼らは、決して逃げないのだ―
己の敗北からも、その不名誉からも、それによって下される己の死ですらも―!
…ブライ大帝は、決して無能で無理解な王ではなかった。
それ故―彼は、瞳を閉じた。
「…」
「…」
「…」
「…いかんな」
そして。
いかにも大儀そうに、半ば呆れたような口調で言うのだ。
「え…」
かすかに惑う三人を前に、重々しい声で言う。
「お前たちの考えは、まったくもっていかん。…まるで、」
その口元が、ふっ、と微笑の形を作った―
「…もう死んでもかまわん、と言わんばかりではないか」
「…!」
「そ、それじゃあ」
驚きの声をあげる三人に、ブライ大帝は告げる。
「確かに…お前たちは、あのゲッターチームに肉薄した実力を持つ。
今死んで、どうするというのだ!
その拾った命を惜しみ!新たなヒャッキーロボを造り上げ!」
ブライ大帝の瞳が、くわっ、と見開かれた―
「そして、次こそ勝て!ゲッターロボGに、ゲッターチームに打ち勝つのだ!」
『…はい!!』
下された命に、声の限り応える三人。
大帝を見返す彼らの瞳には、燃えるような闘志…!
「では、下がってよろしい!」
『はい!』
三人の声が、同調し…大帝の間に響く。
彼らは、ブライ大帝に一礼し、その場を去った。
と…今の決定に不服げなヒドラーが、またいつものごとく口を挟みだした。
「ぶ、ブライ大帝!そ、それでは、他の兵に示しが…」
「やかましいわ、お前は黙っとれ!…まったく、余計な手出しばっかりしおってからに!」
「…」
が、ブライ大帝に一喝され、黙り込むヒドラー元帥。
そんなヒドラーなど気にかけることもなく…いつになくご機嫌なブライ大帝は、実に楽しそうにこんな独り言を漏らしたのだった。
「ふふ…次回が楽しみじゃの、青二才どもめ!」

大帝の間を辞した三人。
と…鉄甲鬼が、何処かに向かって歩き出した。
はじめはゆっくりとしていた彼の歩みは、どんどんスピードを増し…やがて、疾走へと変わる。
彼は、肩からさげたポータブルラジカセのスイッチを入れる。刹那、音楽がスピーカーを力強く震わせる。


<♪GET WILD(『CITY HUNTER』より)>


走り出した彼を見咎め、慌てて後を追う胡蝶鬼と自雷鬼。
「おい鉄甲鬼!何処行くんだよー?!」
「決まってる!海底研究所だ!」
「な…ま、まさか、もう作業をはじめるつもりか?!」
「当たり前だ!一分一秒だって、俺は惜しいんだ!…何ならお前らはいいんだぜ、ついてこなくったって!」
そう鉄甲鬼は言い捨てるが、もう二人は慣れたものだ。
全力疾走で鉄甲鬼を追いかけながら、大声で言い返す。
「はっ、素直じゃないな!…『手伝ってくれ』って、素直に言えよ!」
「どうせやることがあるわけでもなし…お前たちのアホ面を見ているほうが、ずっと退屈しのぎになる」
「まったくよく言うぜ、これほどの美男子捕まえて!」
「…!」
走る速度をゆるめないまま、背中で二人の会話を聞きながら…鉄甲鬼は、自然に口元に微笑が浮かび上がってくるのを感じていた。
こうやって、一緒に走れる誰か。
そういう奴らがいることの心地よさ。
今までは知らなかったその感触を噛みしめながら、鉄甲鬼は走った。
もう一度、新しいヒャッキーロボGを造るために。
今度こそ、ゲッターロボGを倒すために。
今度こそ、ゲッターチームを倒すために…
今度こそ。
今度こそ、やってみせる。
今度こそ、必ず勝つ―
何故なら、自分はもう一人ではないからだ。
そう。
自分たちは、「チーム」なのだから―!


彼らの戦いは、今はじまったばかり―
自雷鬼。
胡蝶鬼。
鉄甲鬼。
三人の勇士、百鬼帝国ヒャッキーチーム…


彼らの「未来」に何が待ち受けているか、それは神のみぞが知るお話だ。




<To be continued? ... Nobody knows! >




<♪不滅のマシーンヒャッキーロボ(『ヒャッキーロボG』エンディングテーマ)>

あ〜おく輝く 地球を狙い
百鬼帝国 躍進だ〜
い〜そげ〜 三人の〜 わーかものたちよ〜
せーぎのこころで合体だ〜
おーおぞら高く〜 ひ〜ばなをちらし〜
へ〜いわのーたーめーにー あーくーをーうつ〜
お〜おヒャッキー ヒャッキー ヒャッキー
ふ〜めつ〜の〜マッシ〜ン ヒャーッキーロッボ〜!