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俺たちゲッターロボマニア>ヒャッキーロボG第三話


<♪ヒャッキーロボ!(『ヒャッキーロボG』オープニングテーマ)>

ガン! ガン! ガン! ガン!
若いいのちが 真っ赤に燃え〜て〜
ヒャッキースパーク〜 そ〜ら〜たか〜く〜
見〜たか〜 合体〜 ヒャッキーロ〜ボ〜だ〜
ガッツ! ガッツ! ヒャッキーガーッツ!
みーっつ〜の〜こ〜ころ〜が〜 ひとつになれ〜ば〜
ひ〜とつ〜の〜正義は〜 百万パーワーアー
あ〜く〜を許〜すな〜 ヒャッキーパ〜ン〜チ〜
ヒャッキ! ヒャッキ! て〜い〜こ〜く〜 ヒャーッキーロボ〜♪



ヒャッキーロボG 第三話 遥かなる荒野の決闘!


早乙女研究所・司令室。
巨大モニターが映し出す画面の中に、ゲッターチーム…流竜馬・神隼人・車弁慶は、信じられないモノを見ていた。
「な、あ、ッ…!」
「さ…三機の戦闘機だと?!」
「な、何かよ…ゲットマシンと似てねえか?!」
そこに映っていたのは、編隊を組む三機の戦闘機。
今、早乙女研究所にまっすぐ向かってきている不審飛行物体は…まるで、自分たちのゲッターロボの分離形態・ゲットマシンとまったく同じように造られたかのように、そっくりだった。
先陣を切るは真紅。その背後に控える、輝蒼と鮮黄。
そうこうしているうちにも、その三機は研究所に近づいてくる…
そして、やがて肉眼でも見えるようになり…研究所と少し距離をとったところで、止まった。
と、その戦闘機から、拡声器が三つの声でがなりたてた!
「…出て来い、ゲッターチーム!」
「今日こそ、お前たちに引導を渡し!」
「ゲッター線増幅装置をもらいうける!」
そのセリフで、司令室中の人間の表情が堅く強張った。
「…!」
「百鬼帝国かッ!」
それを察知した途端、早乙女博士の指令を待たずに駆け出す三人。
向かうは当然格納庫、自分たちのゲットマシンのある場所…!
ほどなくして、早乙女研究所ゲットマシン発射口から、三つの光の矢が飛び出す!
「…!」
そして、鉄甲鬼はタイミングよくそのスイッチを入れた。


<♪アニメじゃない(『機動戦士ZZガンダム』より)>


「な、何だコレ?」
「…気にしてる場合じゃない、ベンケイッ!」
いきなり流れ出した大音声のBGMに、きょろきょろするベンケイ。
が、リョウは…そういう演出などを解するゆとりを持ちえない男は、一言のもとにそれを切り捨てた。
「貴様ら…百鬼百人衆かッ!」
「イカにもタコにもウツボにも!…俺は、百鬼百人衆が一人、自雷鬼!」
「同じく、胡蝶鬼…!」
「そして!」
自雷鬼、胡蝶鬼。
そして、ワンテンポおいて、不適に笑うあの男が声高らかに吼える―!
「百鬼百人衆が一人、鉄甲鬼!」
黒曜石色(オブシディアン)の瞳が、灼熱の闘争心を抱き込んで光る―!
「俺の造ったこのヒャッキーロボGと!…『正々堂々』と戦え、ゲッターチーム!
俺たちは、お前たちゲッターチームに一対一の決闘を申し込むッ!」
「…!」
「ふん…!」
「決闘、だとよ!…どうする、リョウ!」
「決まってる!…チェーンジ・ゲッタードラゴン!スイッチ・オーンッ!」
鉄甲鬼の挑戦に、ゲッターチームはそう応じた。
三機のゲットマシンが華麗に空を舞い、自慢の変形合体を見せ付ける…
が、今回ばかりは、それは彼らだけの十八番ではないのだ!
「!」
「こっちも行くぞッ!チェーンジ・ヒャッキードラゴン!スイッチ・オンッ!」
鉄甲鬼にあわせ、胡蝶鬼のライガー号がドラゴン号に合体、そしてその後ろから自雷鬼のポセイドン号が合体する。
三機の戦闘機は瞬く間にその姿を変え、一体の巨大ロボットに変化する…!


<♪我が青春のアルカディア『宇宙海賊キャプテンハーロック我が青春のアルカディア』より>


鉄甲鬼の今日のテーマソングにあわせゲッターチームの眼前に降り立ったその勇姿は、そう、まるで―!
「ぱ…」
『PAKURIだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!』
「違ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうッッ!!」

ゲッタードラゴンそのまんまだった(ただし、ツノが一本になっております!)。
「な、何が『違う』だッ!…その姿!もろにゲッタードラゴンそのまんまじゃないかッ!」
「ぱ、パクリじゃないもんッ!」
「じゃあ何なんだ!」
「い…」
リョウたちの強烈な批判を前に、鉄甲鬼は口をとんがらせながら…こうのたまった。
「『インスパイア』だもん!」


【パクリ】
他人の作品を真似すること。盗作。
【インスパイア】
思想・感情を吹き込むこと。鼓吹。
→【―される】他人の作品に触発される。



「わけわからんこと言ってんじゃねーーーーーーーーーーーーーッ!」
「わ、わからんのはお前たちのほうだッ!ふんだ!家帰って辞書引け、辞書ッ!」
「…リョウ〜、さっさと終わらせて帰ろうぜ〜?」
「ああそうだな!付き合ってるのも時間が惜しいしな」
「上手くやれば、『怪傑!えみチャンネル』までに帰れるな」
どうやら、鉄甲鬼の懸命の主張にもかかわらず…ゲッターチームの三人は、すっかり彼らをアホ扱いしてしまったようだ。
ハヤトなどは、今から今夜のテレビ番組のことを気にしている。
「…テッちゃん、俺たち随分バカにされてるぞ」
「なあにライちゃん!俺たちのヒャッキーロボGの実力で、あいつらを黙らせてやろうぜ!」
「おお、そうだな!…チョーさんも準備はいいか?!」
「…ああ十分だただしそのダッサイそのあだな以外はなッ!
「ふん…!」
三人の間で交わされる馬鹿な会話を聞きながら、鼻で笑うリョウ。
ゲッタードラゴンは、得意のトマホークを取り出した…
この馬鹿者どもを、さっさと倒してしまおうと。
…が。
そんなリョウを皮肉げに嘲笑ったのは、鉄甲鬼のほうだった。
「馬鹿の一つ覚えみたいに、また『ゲッタートマホーク』か?」
「?!…なッ」
「意外に進歩がないな、ゲッターチーム!」
嘲笑う鉄甲鬼のセリフに、表情を変えるリョウ。
が…鉄甲鬼の頭脳は、とっくにそのゲッターの神器を押さえ込む術を練り上げていたのだ。
「来い!トライデント!」
そして、彼の武器が姿をあらわす…
それは青銅、海神が右手にすなる、そしてパイロットの鉄甲鬼自身がその扱いに習熟した武器―
「『とらいでんと』?!」
「…槍か!」
「そうさ!俺のトライデントに勝てるか、流竜馬ッ!」
「くっ…そんな歯磨き粉みたいな武器などォッ!」
先が三つに分かれた長槍を掲げ、相手を挑発する鉄甲鬼。
対するリョウも、トマホークを両手にし、打ちかかる―!
一挙に高まる緊張感。
ヒャッキーチーム、ゲッターチーム、全身に緊迫が走る!
戦いの緊張感が電撃支配した戦場で、誰もリョウに「それを言うなら『入れ歯接着剤みたいな武器』だリョウ!」とは突っ込んでくれなかった。
そして、ゲッタートマホークとトライデントが激しくぶつかり合った瞬間!
「…ッ?!」
―吹っ飛ばされたのは、リョウのトマホーク。
ヒャッキードラゴンのコックピット中で、鉄甲鬼がにやり、と笑った―
負けじとリョウは新たなるトマホークを取り出し、果敢に挑んでいく。
が―
その刃は、ヒャッキードラゴンにかすりもしなかった。
それどころか、ヒャッキードラゴンの繰り出す槍撃を受け止めるので精一杯だ。
長い柄を振り回し放たれるその攻撃は、自然に…敵が切り込めない絶対領域を、ヒャッキードラゴンの周りに作り出す。
「くっ、間合いに入れねぇ!」
「ふふん…所詮、ゲッタードラゴンの得物はトマホーク、つまりは『手斧』!
いくらその手斧が強力だったとしても、…相手にあたらなきゃ意味無いんだぜッ!」
「ううッ…!」
リョウの額を、嫌な汗が一筋伝っていった。
だが、動揺している暇などない…
鉄甲鬼操るヒャッキードラゴンのトライデントは、今なお隙すら見せず、その鋭い切っ先をゲッタードラゴンの前に突きつけている!
「リョウッ!ゲッターライガーに!」
「あ、ああッ!…オープン・ゲーット!」
「チェーンジ・ゲッターライガーッ!スイッチ・オーンッ!」
ハヤトの叫びに、すぐさま反応するリョウ。
分散すると同時に、今度はゲッターライガーに変形、体制の立て直しを図る!
が…それも、鉄甲鬼の思惑通りだ!
「胡蝶鬼ッ!」
「わかっているッ!」
「オープン・フォーメーションッ!」
「チェーンジ・ヒャッキーライガーッ!スイッチ・オンッ!」
同様に、ヒャッキードラゴンも分散、合体。
今度は、ライガー号の胡蝶鬼がメインパイロットとなる、それはヒャッキーロボG陸戦用モード・ヒャッキーライガー…!
…目の前に立つゲッターライガーと、とってもそっくりな形状とカラーリングの。
「…!」
「くっ、これもまたパクりかッ!」
「…い〜ん〜すぱいあ〜〜〜〜ッ!!」

鉄甲鬼の主張もむなしく、再び「パクリ」扱いのヒャッキーロボG。
ともかく、主権を握った胡蝶鬼…
彼女の美しい貌に、闘志の色が浮かび上がる!
「ふっ…それでは、行くぞ神はや…」
が、その時。
ヒャッキーライガーの背中部分に内蔵されたスピーカーが、軽快なジングルを打ち鳴らした。


<♪キューティーハニー『キューティーハニー』より>



「?!」
「え…っと…」
目を白黒させる胡蝶鬼、そしてゲッターチーム。
そうこうしている間に、曲はスムーズにAメロに入った。
「♪このごろはやりのおんなのこぉ〜」これは、鉄甲鬼。
「♪おしりのちーさなおんなのこぉ〜」これは、自雷鬼。
『♪こっちをむいてよハニィ〜♪』
このフレイズは、二人同時で。
「♪だってなんだかぁ だってだってなんだもぐごふぅッ!
そして、ゴキゲンな鉄甲鬼のソロ部分は、大変嫌な感じの断末魔をエンドマークとして、突如ブチきれた。
「?!…て、テッちゃーーーーーーーんッ!」
「…貴様ら、何を考えている」
絶叫する自雷鬼の目にするモニター画面の中では、鉄甲鬼に強烈なかかと落としを喰らわせた胡蝶鬼が、まさしく「鬼女」と言える形相でこちらをにらみつけていた。
「あ、あわわ…そそそ、そのですね、あの…胡蝶鬼さんに似合うテーマソングは何かなーって思ってですね、
二人で夕べ一生懸命考えて、あの、いろいろ候補はあったんですけど、やっぱこれかなーって…」
「私がヒャッキーライガーで戦っている間は死にたくなければ貴様らは黙って操縦桿を握っていろ余計なことは一切せずになッ!!
「ははははははい、すすすすすすすみません…」
「…」
一気呵成に怒鳴りつけられ、半泣きでこくこくうなずく自雷鬼。
言うだけ言うと、胡蝶鬼は足音も荒くドラゴン号のコックピットを後にする。
ばったあああああんっ、と、強烈な音を立てて扉を閉めると、後には半死半生の鉄甲鬼だけが残された。
…ややあって、再びライガー号のコックピットに彼女が戻ってきた。
「…ッ、待たせたな神隼人!」
「…いな」
…が。
思わぬ言葉が、そんな胡蝶鬼のこころを貫いた。
「…何?」
「いいな、それ!」
『は、はあぁ?!』

そのわけのわからん感想に、思わず叫び声をあげてしまう胡蝶鬼(と、リョウ)。
だが、どうやらハヤトは真剣らしい…自分でうなずきながら、感嘆しているもようだ。
「いやいや、歌詞といい曲といい…ぴったりあんたにあうな」
「…!」
…胡蝶鬼の蛾尾が、ぴくり、と動いた。
ボインなあんたによくあってるじゃねえか…え、胡蝶鬼さんとやら!」
「…〜〜ッッ!」
そして、彼の発言の意味を理解した、その刹那。
胡蝶鬼の白い肌が、怒りと屈辱でかあっ、と染まっていく…!
「だ、だまれこのセクハラ男め!…世界中の全女性を代表して!私が貴様に正義の鉄槌を食らわせてやるッ!」
「ふっ、やれるもんならやってみな!…いくぞ、マッハスペシャル!」
怒りの胡蝶鬼を前に、悪役みたいなセリフを吐くやいなや…ハヤトは、思い切り操縦桿を倒す!
すると、駆動するゲッターライガーの機関は、音速をも超えるスピードをライガーの脚に生み出した!
「!」
「ついてこれるか!このゲッターライガーの加速にッ!」
風のごとく疾走するゲッターライガーは、ヒャッキーライガーを取り囲むように移動し続ける。
いったん、そのスピードに面食らったものの…胡蝶鬼は、微笑した。
それは、自信と勝利の感覚のさせるモノ。
彼女は、思い切り操縦桿を倒した―ゲッターライガー同様に。
瞬時。
ハヤトの視界から、ヒャッキーライガーの姿が消えうせた。
「?!」
「な…」
惑ったハヤトの目に、さらに信じられないものが映る。
それは、ヒャッキーライガー…
消えうせたのではない、それは一瞬で移動したのだ。
光速で走るゲッターライガーのその隣に、同様の光速で疾走して!
「ら、ライガーについてきているなんてッ?!」
「はあッ!」
「…がッ?!」
驚愕したハヤトが油断したその隙を、胡蝶鬼は見逃さない。
素早く伸ばされた右腕が、ゲッターライガーを打ちのめす。
喰らわされたパンチのショックに、無様に地面に転がるゲッターライガー。
何とか必死で立ち上がるが、高速移動のスピードのまま地面と激突したダメージは、ゲッターライガーを随分傷つけていた。
「な、何故だ?!何故、ライガーに…」
「ふん、神隼人…お前の目は節穴か?このヒャッキーライガーとお前のゲッターライガーの違いがわからんか?」
嘲笑う胡蝶鬼。
その意味深な言葉に、ハヤトたちは改めて眼前の敵の姿に目を走らせる。
…と。
「…!」
彼らの瞳は、ようやく解答を見つけ出した。
「ど、ドリルが…」
「ドリルがないだと?!」
ヒャッキーライガー。ゲッターライガーを模した、巨大ロボット。
だが、ヒャッキーライガーはドリル装備を持っていない…右腕にも、左腕にも。
地中を掘り進むための、敵を粉砕するためのドリル…ゲッターシリーズの陸戦用モードなら、どれもが持つドリルを、ヒャッキーライガーは持っていないのだ!
「そうだ。スピードが何よりの武器ならば、スピードを上げるために重い武器など装備していられない。…そして、」
「?!」
「…例え、ドリルなどなくとも!私には、この細剣(レイピア)があるッ!」
言うなり、しゃらん、と涼やかな音を立て、ヒャッキーライガーは何処かより細身の剣を取り出した…
剣の柄を、ヒャッキーライガーの右手が握る。
スピードとそれを可能にする軽さを得るため極限まで軽量化したヒャッキーライガー、その右腕が、まるで神速がごとき速さで繰り出される!
「ほらほらほらほら!どうしたどうしたァ!」
「う…ぐ…!」
その鋭い突きを避けることもできず、為すがままに穿(うが)たれていくゲッターライガー。
その一手一手のダメージは小さくとも、このままでは全身蜂の巣にされるだけだ!
「は、ハヤトッ!」
「よしッ、今度は俺だあッ!」
「OK!…オープン・ゲーット!」
「チェーンジ・ゲッターポセイドンッ!スイッチ・オンッ!」
たまらず、今度はポセイドンに変形するゲッターロボ。
それに遅れること1秒、ヒャッキーチームもそれを追う。
「自雷鬼ッ!」
「まかせろぉッ!」
「オープン・フォーメーションッ!」
「チェーンジ・ヒャッキーポセイドーンッ!スイッチ・オォンッ!」
…ずしん、ずしん、と、重い音が連続して大地に鳴り響く。
そして…完成したヒャッキーポセイドンの両肩から、自雷鬼が指定したテーマソングが凄まじい音量で流れ出した。


<♪宇宙の王者!ゴッドマーズ(『六神合体ゴッドマーズ』より)>


「!」
「またパクり」
「inspire――――――――――――――ッ!!」

ベンケイのもっともなツッコミを、鉄甲鬼の絶叫がかき消した。
が、それを上回る音量のテーマソングを背後に、燃える闘志の自雷鬼が吼える。
「さあいくぜ車弁慶!」
「う…?!」
そう言った自雷鬼が取り出してきた武具…
それを見た瞬間、ゲッターチームの表情が一変した。
「お…」
「斧?!」
「そうさ、車弁慶!…三形態の中で、もっともパワーがあるのがこの形態!なら…」
そう、それは巨大な刃、長い柄を持つ、両手持ちの戦斧(せんぷ)だった。
黒金の柄をしっかと握りしめ、力いっぱい振りかざし―ヒャッキーポセイドンはうちかかる!
「力を活かせる武器を選ぶのが道理ってもんだろっ!」
「くああッ?!」
初撃を何とか転がって避けるゲッターポセイドン。
が、今の一撃で、戦斧は堅い大地を易々と、大きくえぐっていった。
避けるのが、あと一秒でも遅ければ…その威力の元にえぐられていたのは、ゲッターポセイドンなのだ!
…普段、おおらかさをめったに失わないベンケイの表情から、一切のゆとりが消えうせた。
「べ、ベンケイッ!」
「ぐ…こ、こりゃ、結構、やばいかも…ッ」
「はあッ!」
「?!…ふぃ、フィンガーネッ」
戦斧の一撃は、それを捕らえこもうとしたポセイドンのフィンガーネットよりも早く放たれた。
刹那。
「がああッ!」
「う、腕があッ…?!」
激震。同時に、両腕への油圧状態を監視するセンサーが、一瞬で沈黙した。
ゲッターポセイドンのむなしく伸ばされた両腕は、無念そうに…そのまま、真下に落ちていった。
両腕を一断されたゲッターポセイドン、その切断面から赤黒いオイルがぼたぼたと滝のように落ちていく―
これから流される勇者たちの血そのものであるかのように、ぼたぼたと、限りなく。
「ふははははは…手も足も出ない、とはこのことだな、ゲッターチーム?」
自雷鬼の哄笑に、ベンケイは悔しさに奥歯を噛みしめた。
が…彼の言葉は、まさにその通り。
ゲッタードラゴン。ゲッターライガー。ゲッターポセイドン。
自分たちのゲッターは、どれ一つとしてあいつらにかなわなかった…どれ一つとして!
「さあ、冥土へ行く覚悟は出来たか?今その首を落としてやろう!」
「…〜〜ッッ!」
三度振りかざされる強大な斧のきらめきを前に、まともに動けぬ三人は―一瞬、死を覚悟した。
「喰らえぇええッ!」
が、その瞬間。
きらり、と何かがひらめくのを、鉄甲鬼の瞳は見た―
「?!」
「やあああッ?!」
「な、何いッ?!」
そして、ヒャッキーポセイドンを襲う爆撃!
思いもしなかった突然の衝撃に、悲鳴をあげる三人。
しかし、驚いたのはゲッターチームも同様。
慌てて振り返ると、そこには…見覚えのある物体の姿があった!
「…!」
「ひ、ひょっとして…」
「ゲッター、ナバロン砲…?!」
研究所のふもとより伸びた長い砲身、その砲口からあがる白い煙…
それはゲッターナバロン砲、かつて早乙女研究所が開発した、天下無双の大砲だ!
「リョウ君、ハヤト君、ベンケイ君!」
「早乙女博士!」
「今すぐゲットマシンに分散して戻って来るんだ!」
戦況を見かね、ナバロン砲を発射した早乙女博士…
彼の指令に、ひるむゲッターチーム。
「し、しかし!」
「今のゲッターの状態では、まともに戦えはしないッ!戻るんだ、リョウ君ッ!」
「…はいっ!」
だが、今の彼らには対抗できる武器は、もはやない。
敗北感に唇をかみしめながら、彼らはそれを選択した―
「オープン・ゲーット!」
「!」
鉄甲鬼の目の前で、ゲッターポセイドンがほどけていく。
そして、再び三機のゲットマシン形態となった彼らは、何と…こともあろうに、研究所に逃げ帰っていくではないか!
…自分たちに、背を向けて!
「ま、待て!逃げる気か、ゲッターチームッ!」
鉄甲鬼の叫びに、ゲッターチームは答えなかった。
「…〜〜ッッ!待てえええッ!」
「て、鉄甲鬼!」
「卑怯者!一対一の決闘に、狙撃を用意するなんて!…挙句の果てには、逃げるのかッ?!」
「鉄甲鬼!俺たちの機体も、今は戦える状態じゃない!」
「逃げるなゲッターチーム!俺たちと、『正々堂々』と戦ええェェェッ!」
「鉄甲鬼…!無理だ、我々もいったん百鬼帝国に引き返すぞ!」
「ぐうッ…!」
声を限りに叫び続ける鉄甲鬼を、まだ冷静さを残している二人が必死に説得する…
確かに、彼らの言うとおり…今のゲッターナバロン砲の一撃は、ヒャッキーロボGの機能を半壊させていた。
百鬼帝国に戻りメンテナンスをしなければ、戦闘など望むべくもないだろう…
鉄甲鬼は、怒りのあまり呼吸をすることすら忘れた。
そして、浅間山に彼の絶叫が哀しく響き渡る―
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおッ!」


早乙女研究所。
司令室、堅い表情の早乙女博士を前にして…三人の戦士は、やはり無言。
「…」
「…」
「…」
「…恐ろしい敵が、あらわれたもんだな」
「…ええ」
リョウの顔に、苦みばしった表情が浮かぶ。
「『ヒャッキーロボG』、か。ゲッターの全てを上回るというのか…」
「…」
「…」
「…」
博士の嘆息に、三人は無言。
もはや、三人のうちの誰もが、ヒャッキーロボGを「単なるパクリ」などとは言えなくなっていた。
次に、あの三人と…ヒャッキーロボGと合間見えた時、その時は。
おそらく、それは死闘となるだろう。
まさしく、血で血を洗うような、血煙あがる陰惨な…
そして、その血を流すのは、もしかしたら自分たちゲッターチームのほうかもしれないのだ…!




<To be continued...!!>




<♪不滅のマシーンヒャッキーロボ(『ヒャッキーロボG』エンディングテーマ)>

あ〜おく輝く 地球を狙い
百鬼帝国 躍進だ〜
い〜そげ〜 三人の〜 わーかものたちよ〜
せーぎのこころで合体だ〜
おーおぞら高く〜 ひ〜ばなをちらし〜
へ〜いわのーたーめーにー あーくーをーうつ〜
お〜おヒャッキー ヒャッキー ヒャッキー
ふ〜めつ〜の〜マッシ〜ン ヒャーッキーロッボ〜!