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TOP俺たちゲッターロボマニア>ヒャッキーロボG第一話


<♪ヒャッキーロボ!(『ヒャッキーロボG』オープニングテーマ)>

ガン! ガン! ガン! ガン!
若いいのちが 真っ赤に燃え〜て〜
ヒャッキースパーク〜 そ〜ら〜たか〜く〜
見〜たか〜 合体〜 ヒャッキーロ〜ボ〜だ〜
ガッツ! ガッツ! ヒャッキーガーッツ!
みーっつ〜の〜こ〜ころ〜が〜 ひとつになれ〜ば〜
ひ〜とつ〜の〜正義は〜 百万パーワーアー
あ〜く〜を許〜すな〜 ヒャッキーパ〜ン〜チ〜
ヒャッキ! ヒャッキ! て〜い〜こ〜く〜 ヒャーッキーロボ〜♪



ヒャッキーロボG 第一話 無敵!ヒャッキーロボ登場






「話が、あるんだ…胡蝶鬼」




真剣な目をして
私をじっと見つめて
黒曜石色(オブシディアン)の瞳で私を縫い付けて




「胡蝶鬼」




「お前が、…欲しい」





いきなり、そう、言われたから




私の中の、時間(とき)が 止まった




<♪水の星に愛をこめて(『機動戦士Zガンダム』より)>


「…〜〜ッッ!!」
胡蝶鬼は、今、心の底から、全身全霊で、一点の曇りもなく、全力で後悔していた。
馬鹿だった。
自分は、本当に馬鹿だった。
その時の自分の浅慮、その愚かな選択を思うにつけ、自分に対する怒りの感情が湧いてくる。
「…とゆうわけでぇ、後一人足りないから勧誘に行こうと思うんだ」
が、目の前にいる男は、勝手な自分の話をとうとうと語り続けている。
肩からたすきがけに下げたロングストラップ、そしてそこからぶら下がっているポータブルラジカセからは、ゆるりとした女性ボーカルが印象的な曲が、なぜかエンドレスで流れ続けている。
「やっぱりあっちが三人で来るんなら、こっちも三人で…三対三っていうのがスジだと思うんだよ」
黒髪をかきあげながら、真面目な口調で、瞳を闘志にきらきらさせながら、男は力を込めて言う。
彼女が、同じように力を込めて彼をにらみつけていることにも、微塵も気づいてくれずに。
…馬鹿だった。
自分は、本当に馬鹿だった。
「正々堂々と戦う!どんな戦いにおいても、それだけは譲れんからなあ!」
「…おい!」
うれしそうに誇らしげに、半ば自分を無視して男がしゃべり続けるのに耐えかね…
とうとう、胡蝶鬼は大声を上げていた。
…と、ようやく彼女の存在を再認識したのか、男は不思議そうな顔をして彼女に向き直った。
一瞬、二人の間に空白が流れ…そして、その空白を、ラジカセが奏でるポップスだけが奇妙に埋めた。
「…何だ?胡蝶鬼」
「き、貴様…は、話というのはそれなのかッ?!」
「?…ああ、そうだが?」
「…〜〜ッッ!!」
ぬけぬけと言い放ったその平静そのものといった男のセリフに、一気に頭に血が昇る。
…馬鹿だった。
自分は、本当に馬鹿だった。
ほんの少しでも、微塵でも「何か」を期待した、自分は本当に馬鹿だった。
「か、帰るッ!」
「?!…な、何故だ胡蝶鬼!俺の話はまだ終わっちゃいないぞッ?!」
「うるさい!付き合ってられるか!」
「ままままままま待ってくれ胡蝶鬼!」
踵を返しその場から立ち去ろうとする胡蝶鬼。
彼女のいきなりの変節に慌てた男は、動揺の色も激しく、必死で彼女を止めに入る。
「な、何をそんなに怒っているんだ?!」
「ハッ、さてね!」
「と、ともかく!俺の話を最後まで聞いてくれ!」
「…」
「それからでも遅くはないだろ?」
「…」
自分にすがりつくようにして懸命にいいつのる男の表情に、胡蝶鬼はしばし視線を落とす。
…確かに。
確かに、話を聞くだけなら…何の問題もないだろう。
「…わかった」
「!…それじゃあ」
ぱっ、と笑顔になった男に向かい、胡蝶鬼は軽くうなずいて…彼の「名前」を呼んだ。
「ああ。…じゃあ続きとやらをとっとと聞かせろ、鉄甲鬼」


鉄甲鬼。
それが、男の「名前」だった。
鬼の統べる国家である、この「百鬼帝国」の擁するエリート戦闘集団…「百鬼百人衆」。
男は、老若男女を問わず集められたその精鋭軍団の中でも、ひときわに目立っている存在だった。
それは何故か、と言えば…ひとえに、この男が紛(まご)うことなき変人だからである。
では、どのような変人かというと…実は、彼は、とてつもなく生真面目で剛直な男なのである。
真面目で熱血、正直者。そして、曲がったこと、卑怯なことが大嫌い。
何しろ、コンビニで間違っておつりを1円多く渡されたとて、しかもそれに気づいたのが家に帰って腰を落ち着け、家計簿を付け出した時というとんでもなくタイミング外れの時であったとて、絶対にそれを返しに行ってしまう男なのである。
そういった性格の者なら、鬼の国である百鬼帝国では…珍しいとはいえ、決していないというわけではないのだが。
が、彼の場合…その度合いが、あまりに常人からかけ離れている。
かけ離れているあまり、もはやギャグにしかならないぐらいに。
ギャグにしかならないぐらいに四角四面なので…どうしても、周りとはズレてしまっているのだ。
しかも、当の本人はそんな周りの困惑になど一切気づかない。
気づかないもんだから、なおさらに彼はマイウェイを突っ走り続けるという悪循環。
そんなわけで、この鉄甲鬼は…ある意味で、百鬼百人衆でも異色の存在だ。
…しかし、そのまっすぐで裏表のない気性は、少なくとも「敵」はつくらない。
相手が卑怯者か臆病者でない限りは、彼は素直に、誠実に応対する(もし相手がそういう奴らなら、本当に歯牙にもかけない冷酷な対応をするのだが)。
故に、彼に深い信頼をおく者も数多い。
また、顔立ちもとても整っていてハンサムなので、(黙っていれば)女性にきゃあきゃあ騒がれる器量は十分すぎるほどある。
その上、鉄甲鬼はまさに「文武両道」を地で行く男…
トライデント(三叉槍)を自由自在に操る槍術はおろか、素手での格闘技でもほぼ敵なし。
学術の上でも同様…何と、彼は百鬼帝国技術開発のトップであるグラー博士の愛弟子なのだ。
メカニックとしての知識も豊富で、強力な兵器の開発を今までいくつも手がけている。
おかげでブライ大帝の覚えもめでたく、その奇人っぷりにもかかわらず、彼は百人衆を代表する人物の一人となっているのだ。


…が、その鉄甲鬼とまともに話をするのは、実はこれがはじめてだった。
鉄甲鬼の暑苦しさ(傍から見ていても明らかにそうなので)が性に合わず、話しかけることも今までなかった。
…いや。
実際、胡蝶鬼が…他の百人衆に話しかけることなど、皆無に等しかった。
彼女は、己に高すぎるほどの自負を持つ。誰かに負けることなど、彼女のプライドが許さない。
その鉄壁の誇りは、むしろ彼女に触れるものを傷つける刃だった。
胡蝶鬼は、自分よりも劣る者は平気で蔑む。
自分と拮抗する者は潰しにかかる。
そして、自分に優る者など…その存在すら、認めようとはしなかった。
他人を「競争相手」か「敵」、そして「負け犬」の三色にしか塗り分けない彼女にとって、まわりとの付き合いなど、戦いの連続と同じだった。
敵意をむき出しにし、相手を退けるような…そのような女を愛する者などいない。
だから…男も女も、彼女を避けた。
そのため、彼女の美貌と、女王蜂を思わせる魅惑的なスタイルに目を惹かれる男どもはいても、ともに語るような友を彼女は持たなかった。
彼女は、一人で戦ってきたのだ。今まで、ずっとひとりで。


…だが。
そんな彼女を、鉄甲鬼は求めたのだ。


<♪ゴーショーグン発進せよ(『戦国魔神ゴーショーグン』より)>


「…!!」
「…どうだ?」
思わず目を見はった胡蝶鬼の隣で、満足げに鉄甲鬼は笑んだ。
それは、巨大なロボットだった。
百鬼メカ。百鬼帝国がその強大な科学力を持って造り上げる、鋼鉄の巨人。
それは、巨大な百鬼メカだった。
科学者である鉄甲鬼が、自ら造り上げたのだという。
しかし…その百鬼メカは、今まで彼女が見たものとはまったく違っていた。
大きさではない。形状ではない。
そうではなく…その存在、それ自体が、今までの百鬼メカとは何か違っていた。
胡蝶鬼は、そう感じる理由や、それを表出できる言葉も持たなかったが…しかしながら、その偉大さは強く実感することが出来た。
「…凄い」
「…」
吐息とともに放たれた、賞賛とも言える彼女の言葉。
…鉄甲鬼が、うれしそうな笑みを見せる。
三日月の唇から、こぼれるような小さな白い牙。
「これを、お前一人が造ったというのか?」
「ん…いや、設計したのは俺だけど、造ったのは溶接工のオヤジさんたちだ
「あ…ああ、そ、そうか…」
質問の意図を微妙に違えた鉄甲鬼の返答に、思わず苦笑の胡蝶鬼。
生真面目なのか、アホなのか…
内心、胡蝶鬼は頭を抱えてしまった。
100%のストレートさが、ここまでに妙だとは…
そんな鉄甲鬼についていけず、胡蝶鬼はペースを崩されっぱなしだ。
「このロボットは、ゲッターロボGをモデルに作られている。それぞれ…」
鉄甲鬼が手元のコンピューターを操作すると、モニター画面に録画画像が映し出される。
その画像の中で、三機の戦闘機が合体変形していくシークエンスが、それぞれに違ったモノを生み出しながら続いていく。
「空戦用モード・ゲッタードラゴン」
百鬼帝国が宿敵・ゲッターロボG。パイロット・流竜馬が操縦する、真紅のモード。
「陸戦用モード・ゲッターライガー」
百鬼帝国が宿敵・ゲッターロボG。パイロット・神隼人が操縦する、輝蒼のモード。
「海戦用モード・ゲッターポセイドン」
百鬼帝国が宿敵・ゲッターロボG。パイロット・車弁慶が操縦する、鮮黄のモード。
「奴らの三形態と同じく、戦闘機隊形から合体、各モードに変形することが可能だ」
「そ、それじゃ…」
「そう」
流れるビデオを前に、鉄甲鬼は胡蝶鬼に向かって宣言した。
「こいつは、ゲッターロボGと同等…いや、それ以上の代物なのさ!」
「…」
「胡蝶鬼」
…と、ふっ、と、鉄甲鬼が真顔に戻る。
凛とした表情の彼が、胡蝶鬼を真正面から見つめている。
「…」
「お前が、一人で奴らを倒そうと考えていることは知っている。…だがな、」
鉄甲鬼は、現実を彼女に告げた。
「そうやって、奴らに一人で挑んでいって、どれほどの百人衆が死んだ?」
「…」
「奴らの強さの源…それは、奴らが『ひとりじゃない』ということだ。
奴らは、三人で力をあわせ…三倍、五倍、いや十倍にもそのパワーを高めている」
彼の言葉は、図星をついていた。
胡蝶鬼は、自分の実力に誇りを持っている…
が、有能かつ強力な百鬼帝国の勇士・百鬼百人衆を破り続ける、あのゲッターチーム。
三人が三様の強さを持ち、空・陸・海ともにそれぞれの力を活かし戦う「人間」たち…
一対三で、本当にお前は勝てるのか、と。
鉄甲鬼は、強くはあるが孤独である彼女の弱みを、そのままについた。
黙り込む胡蝶鬼を見据え、彼は…つぶやくように、先を続けた。
「俺は」
高ぶる情熱を無理やりに押さえ込んだその声は、かすかに震えていた。
「俺は、奴らに勝ちたい。…だが、一人では無理だ」
己の作ったロボット。
ゲッターロボGと同じく、三人のパイロットを必要とする…「仲間」を必要とするロボットを見上げ、彼は自分の思いを解き放った。
「俺は、俺の弱さを補ってくれる、俺の強さを支えてくれる…『仲間』が欲しい」
向き直る。
そうして見つけた、一人目の「仲間」に。
「だから、胡蝶鬼。俺に、お前の力を貸してくれ」
「…」
「いや、そうじゃない…俺と、」
鉄甲鬼の両瞳が、胡蝶鬼を映す―
「俺と一緒に、ゲッターロボGを倒そう…!」
「…!」


真剣な目をして
私をじっと見つめて
黒曜石色(オブシディアン)の瞳で私を縫い付けて


ああ、少なくとも。
こいつは、心底に真剣なのだ。
ゲッターロボGを倒すため、ゲッターチームを倒すため、己の持てる力を全て注ぎ込み、独力でこの戦闘ロボットを開発した。
そして、そのロボットを駆り、ともに戦う「仲間」を求めている…
己のいのちとも言うべきこのロボットを託せる、力量ある「仲間」を。
己の結晶とも言うべきこのロボットを託せる、信頼できる「仲間」を。
…こいつは、私を…信じている。
信じているのだ、己の背中を預けられる、真の「仲間」として…!


馬鹿げていると思った。
ふざけていると思った。
それでも…鉄甲鬼の黒曜石色(オブシディアン)の瞳は、まっすぐに自分を見つめていたから、
まっすぐに自分を信じていたから、
まっすぐに自分を求めていたから、
…そんなことは今までになかったから、
そんなことをする奴は今まで誰もいなかったから、


彼女は一瞬、惑った。
惑ったが、それでも…彼女も、まっすぐに鉄甲鬼を見つめ返した。
エメラルドグリーンの瞳が、わずかな喜びの色をたたえて、鉄甲鬼を見つめ返した―


「…わかった」
「!…胡蝶鬼!」
「お前の言うことももっともだ。確かに…一人で戦って、無駄死にするのも私のプライドが許さん。
勝利こそが、私にはふさわしいのだから」
美しい笑みを浮かべ、高揚にかすかにその白い頬を紅潮させながら…胡蝶鬼は、それでも虚勢を張ってみせた。
「それに、少し興味も出てきた…このロボットに」
見上げる鋼鉄の巨人―あのゲッターロボGに比肩しうると言う、鉄甲鬼の作り上げた百鬼メカ。
確かに、それを操縦できるということは、彼女の興味を惹いた。
そして―そのパイロットとして、鉄甲鬼が自分を選んだ、ということも…
「このロボットの『名前』は?」
「ん?」
唐突に、彼女は思い出したように鉄甲鬼に問う。
「このロボット、『名前』は何と言うんだ?」」
「ああ…それか、」
…と、急に何やら腰のバッグをごそごそいじくりだした鉄甲鬼。
その中からカセットテープケースを取り出し、中のカセットを取り出した。
「…何をやっている」
「音源の入れ替え。…よし!」
そして、やにわに肩から下げているラジカセデッキのカセットを交換し…おもむろに、スイッチを入れた。


<♪ターンAターン(『ターンAガンダム』より)>


すると、唐突にラジカセのスピーカーがファンファーレめいた音をがなりたてる。
加え、それに続くような激しいジングルの連続!
流れ出すやたらと勇壮なメロディ、そして日本の歌手ヒデッキー・サイジョーのからみつくような暑苦しい声音を背景音にして、鉄甲鬼は穏やかに笑った。
「…もう一回言ってくれるかな、胡蝶鬼」
「…な、何を?」
「さっきのセリフ」
「…」
そして、やはり穏やかな口調で、微笑みながら…わけのわからんことを胡蝶鬼に促してくる。
「ハイ、どうぞ!」
「…」
「ハイってば!」
「こ、…このロボット、『名前』は何と言うんだ?」
困惑しつつも、しつこい鉄甲鬼の催促に根負けし…胡蝶鬼は、先ほどの自分のセリフをリピートした。
「ふふん…このロボットの『名前』は!」
と、鉄甲鬼は、誇らしげに鼻を鳴らしながら…
曲にあわせるタイミングを計りながら、そのサビ部分の一歩手前で…
力いっぱいとうとうと、自慢のロボットの「名前」を言い放った。




「…『ヒャッキーロボG』だ!」




その途端。
高らかに流れるメロディアスなサビ部分とともに、極めて常識的なセンスの持ち主である胡蝶鬼はそのまままっすぐに崩れ落ちた。




<To be continued...!!>




<♪不滅のマシーンヒャッキーロボ(『ヒャッキーロボG』エンディングテーマ)>

あ〜おく輝く 地球を狙い
百鬼帝国 躍進だ〜
い〜そげ〜 三人の〜 わーかものたちよ〜
せーぎのこころで合体だ〜
おーおぞら高く〜 ひ〜ばなをちらし〜
へ〜いわのーたーめーにー あーくーをーうつ〜
お〜おヒャッキー ヒャッキー ヒャッキー
ふ〜めつ〜の〜マッシ〜ン ヒャーッキーロッボ〜!