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対決!ゲッP−X(げっぴーえっくす)対ゲッターロボ(4)


「何だ、貴様あッ!」
ケイの怒号が、浅間山中に残響する。
黒色の球体に、手足と顔とミサイル発射口がついたような―奇妙で奇怪なロボット。
空中に静止し、こちらを睥睨しているそのロボットこそ…今、ゲッター1を不意打ちした、卑劣な「敵」!
被弾したゲッター1…被害は、思ったよりも重大らしい。
ウイングに幾つもの損傷。それに、左足と右腕にも被弾して、そこから火花が散っている。
先ほどの模擬試合でのダメージもあるのだろうが…それにしても、ひどく傷を負ってしまっている。
それが証拠に、うつぶせに地面に倒れ付したゲッター1は、立ち上がろうと尽力しているにもかかわらず立ち上がらない―立ち上がれない!
「あ、あれは…メカザウルスだ!」
「メカザウルス?!」
リョウの叫びに、ケイたちが色めき立つ。
「俺たちが戦っている、『ハ虫人』の…トカゲ野郎どもの、恐竜帝国のロボット!」
「あいつら、『人間』を皆殺しにして地上を征服するつもりなんだ!」
「それで、オイラたちのゲッターが邪魔なんだ!」
「…!」
リョウたちの言葉を聞くや否や…ケイの瞳に、炎が燃え上がる。
ジン、リキもそれは同じ…
がきゃん、という駆動音を立て、X-1は疾走する。
そして…破損したゲッター1の前に立ちふさがり、両腕を大きく広げた―かばうように!
空中のメカザウルス…メカザウルス・バボのコックピットに座る、キャプテン・キバラの目にも、その姿は映った。
それは―奇妙な光景だった。
地面にくず折れたゲッター1の前に立つ、もう一機のロボット…
まるでゲッターロボのような姿をした、もう一機のロボット!
「何だ、貴様ら…早乙女研究所の新ロボットかあッ?!」
「いいや、違うね!俺たちは…」
「宇宙ロボット研究所の、ゲッP-X(げっぴーえっくす)チームだあッ!」
「げ、げっピーえっクス、だとぉ…?」
ケイたちの絶叫に、困惑しながらその奇妙な「名前」をおうむ返しするキャプテン・キバラ。
「ふ、ふん、そんなことはどうでもいいわ!そこをどけ、邪魔をするな!」
「はん、やなこった!」
「何…?!」
ケイの啖呵に、びくり、とキャプテン・キバラの眉がひくつく。
まったく怯える様子もなく、その蒼いロボットはそこから一歩も動かない。
まるで、ゲッター1に自分を近づけさせまいとしているように!
「関係ないものがしゃしゃり出てくるな、小僧ども!」
「何言ってやがる、トカゲ野郎がよ」
「おお!こんなところに出くわして、見てみぬふりなんて出来るわけないやろがぁ!」
ジンが、リキが、吼える。
戦士の咆哮を、自分たちを守ろうとする彼らの咆哮を―リョウたちは、ゲッターの中で聞いている!
「馬鹿どもが!むざむざ犬死にを選んだ己の愚かさを、地獄で悔いるがいいッ!」
「ほざけ!トカゲ野郎!」
罵声を放つキャプテン・キバラ。
だが、ケイは凛然と怒鳴り返す。
指弾する。醜悪なメカザウルスを。
そして、高らかに言い放つ!
「ゲッP-Xは、俺たちのゲッPは…『悪』と闘うためのロボットなんだッ!」
「例えお前が宇宙ビーストじゃなくってもな…」
「目の前で『悪』がのさばってやがるのを、黙ってみてられない性質(たち)なんでねッ!」
それは、「正義」を守る戦士たちの誓い。
それは、「正義」を信じる若者たちの怒り。
そして、同じく「正義」を掲げる「仲間」のために、立ち上がる勇者たちの雄たけび―!


「正義」の為に生まれた、「正義」の為に在る、そして「正義」の為に戦う―
それが、それこそがゲッP-X!
そして、ゲッP-Xチーム…百舌鳥恵一、放出仁、天王寺力!


「…〜〜ッッ!そ、それでは、ゲッターと仲良くここでくたばるがいいわッ!」
果たして、勇者たちの反抗にキャプテン・キバラは牙を剥く。
メカザウルス・バボが、耳障りな鳴き声をあげた―
「来るぜ、ケイ!」
「わかってるッ!」
高空より迫り来るメカザウルス・バボ!
迎え撃つX-1は…大きく身をそらし、必殺技の発射体制をとる!
「エエックス…ビィームッ!」
「!」
X-1の腹部から、放たれる緑のエネルギー光線!
凄まじい勢いで、そのままメカザウルス・バボの腹部にぶち当たる!
そのままじわじわと溶解していく、メカザウルスの装甲。
危険を悟ったのか、キャプテン・キザラはジェットを噴射させ、バボを空中に飛翔させた…!
「おおっと、逃がしゃしないぜ!」
ケイはすぐさま、X-1から翼を分離させる。そしてエックス・ブレードを再び造り上げ、そのままブレードを逃げるメカザウルス・バボ目がけて投げつける!
「エックス・ブレード・ブゥーメラァンッ!」
「甘いわッ!」
が、真正面からかっ飛んで来る攻撃など、たやすく打ち払われる。
バボの鋼鉄の腕が、やすやすとエックス・ブレード・ブーメランを叩き落した―
「!」
だが、その時!
「ぐわあッ?!」
メカザウルス・バボを後方から襲う衝撃!
思いもしない方向からの攻撃に、たまらずメカザウルス・バボは吹っ飛び、地面に墜落した。
「な…」
しかし、それはケイたちも同じ。
と、驚くケイの耳に…彼らの声が、飛び込んできた。
「…お前らばっかりに、いい格好させてたまるかよ!」
「オイラたちのお株、奪われちゃたまんねえや!」
「ゲッターの力、見せてやるぜ!」
「…!」
振り返る。
たった今、メカザウルス・バボを打ちのめしたゲッタートマホークが―その手の中に戻る。
紅の巨人が、そこに立っていた。
激しく傷つきながらも、それでも敢然と―!
「大丈夫なん、あんたら?!」
「はん、当たり前だい!」
リキの言葉に、ムサシが胸を張って答える。
彼らゲッPチームが必死に戦ってくれているというのに―何故、自分たちがのうのうとおねんねしていられようか!
「ふん、それじゃ…サボらずに、こいつらの相手してもらおうか!」
「言われなくとも!」
ジンお得意の皮肉まじりのセリフ。同様に返すハヤト。
そして―操縦桿を力強く握る、リョウとケイ!
「行くぞ、ケイ君!」
「ああ、まかせな!流君!」


陽光はじく、巨人がそびえたつ。
陽光はじく、巨人がそびえたつ。
変幻自在の変形合体(メタモルフォース)。三つの機神が一つに為った。
空神。地神。海神。
手にすなる剣は―「人間」の「正義」のために!
さあ今こそ目に見よ異形の戦士よ、これが―
人類の切り札(エース・イン・ザ・ホール)ゲッP-X…そして、ゲッターロボだ!


『―行くぞ!』
リョウの叫びとケイの叫びが、完全にシンクロする!


その瞬間、キャプテン・キバラは、かすかに怖じてしまった。
すぐに振り払ったが、それは確かに―
あの、二体の…奇跡のマシンに対する恐怖!
怖じたこころは怯懦を招く。
怯懦に支配されたキャプテン・キバラには―最早、彼らに勝てる道理などなかった。


「エエエックス…ビィイイーーーーームッ!」
「ゲッタァァ・ビーーーーーーーーームッ」


彼が最後に見たのは、驚くほど美しい光景―
ゲッター1より発射される、真紅の光。
X-1より発射される、新緑の光。
二色の光線が連なり、重なり、絡まりあい―二倍にも三倍にもその威力を増し、一閃の輝槍に変わる!
「―!」
悲鳴すらあげることはできなかった。
メカザウルス・バボを貫く輝槍は、あっという間にその機構を全て焼き尽くす…
そして、爆裂。
メカザウルス・バボが爆散する―
その様を、二体の巨人が見守った。
ゲッター1とX-1、二体の「正義」の機神が…




「あ〜あ、ワイめっちゃ腹減ったわぁ。カツ丼喰いたいわ〜」
「まったくまったく!オイラは親子丼のほうがいいなあ!」
戦い終わって、日が暮れて。
ゲッター1とX-1が、暮れなずむ夕闇で、同じ色に染め上げられる。
夕焼け色に染まり始めた浅間の空を見上げながら、ムサシとリキはそんな現実感あふれるコメントをかわしあっている。
「やれやれ…緊張感のない奴らだな」
「まったくだぜ」
そんな二人を呆れ顔で見やる二号機二人、ハヤトとジン。
そして―リョウと、ケイ。
「ケイ君…さっきは、ありがとう」
「なぁに、」
少し照れた表情で、礼を述べるリョウ。
それを受けながら、やはり少し照れた表情をしながら…ケイは、笑って見せた。
「…当たり前のことさ、そうだろ流君?」
「―!」
その笑顔が、その言葉が、あまりにも自然で…
リョウは、理解する。
「ああ、そうだな…!」
そうだ、「当たり前のこと」なんだ。
同じ「正義」の絆で結ばれた者同士なんだ、そのために戦い、助け合うこと―
それは、「当たり前のこと」なんだ…
―どちらからともなく、右手を伸ばす。
そして、ゲッター1と、X-1が交わしたように―握手。
お互いの健闘を称え合う、そしてこれからの友情を誓い合う―
…と、その時だった。
空を見上げていたムサシとリキの目に、何かが映った。
「ん…?」
「あれは…?!」
ちかり、と、夕焼け空に瞬いた光。
その光点は、だんだんと戦闘機のような形状に変わっていき…リョウたちの視界に割り込んできた。
あれよあれよという間に、その戦闘機の影は大きくなる。
そして、ケイたちの姿を認めると、その戦闘機は近くに着陸した…
その戦闘機の胴体部には、「宇宙ロボット研究所」の文字。
―戦闘機のハッチが開き、そこから人影が飛び出てくる。
それは、戦闘スーツらしき(いや、正直「レオタード」みたいな…)服をまとった少女が三人。
はねっ髪の活発そうな女の子に、眼鏡をかけたロングヘアの女の子、それに…ちまっ、とした小柄な女の子。
どの子も皆、かわいらしい顔をした女の子。
唐突な彼女たちの登場に、リョウたちはぽかん、としていたが…
「おお!キョウ、ロミ…それに、委員長!」
「よぉ!お前らが模擬試合やるっていうからよ、応援に来てやったんだが…」
「ひょっとして…終わっちゃった、んでしょうか…」
「えー!つまんなーい!」
「はは、悪い悪い!」
彼女たちの到来に、笑顔を浮かべて迎えるケイたち。
どうやら、彼女たちは彼らゲッPチームの知り合いらしい…
女の子たちの登場で、途端に華やかでなごやかになったその場の雰囲気に戸惑うゲッターチームの男三人。
「え…」
「えっ、と…」
「ああ、紹介するよ!こいつら、ウチの予備パイロットの三人だ!」
そんな彼らに、ケイは笑顔で彼女たちを示して見せた。
…と、そのケイのセリフに、はねっ髪がぞんざいな口調で喰ってかかる。
「うるせぇよ!その内ゲッPは俺たちのものにしてやっからな!」
「おキョウは〜ん、厳しいわぁ〜…」
「おっ!リキ、てめぇあいつらにちゃんと勝ったんだろうな?!」
「!…あ、ああ、その〜…」
「てっめえ…まさか負けたんじゃねえだろうな?!俺は弱い男は大ッ嫌いだぜ?!」
「あ、ええ〜、何と言いますか〜、あの…」
もにょもにょと要領を得ない言動を繰り返すリキを見やりながら、はねっ髪は大仰なため息をついて…にやり、と笑った。
どこかうれしそうに。どこか楽しそうに。
「まったく、だらしねぇ野郎だぜ…リキ!研究所に帰ったら、血反吐吐くほどしごいてやるから覚悟しとけよ!」
「?!…そ、そんなぁ、殺生なぁ〜!」
はねっ髪の言葉に、文字通り青くなるリキ。
そして、真っ青になったそんなリキを見て、けらけらと笑うはねっ髪の少女…
一方、かわいいほっぺたをふくらませてぷんすか怒っているのは、小柄な女の子だ。
「え〜、私、お仕事休んで来たんですよぉ?なのに、何でもう終わっちゃってるんですかぁ?!」
「はは、すまないなロミちゃん…ま、でも、今回は来てくれなくて助かった、ってところだけどな?」
「あっ、ひょっとして…負けちゃったんでしょ〜!」
「ははは、ご明察!」
明るく笑うジンに、困り笑顔の女の子。
眉根をひそめて、やっぱりかわいらしく怒っている。
「も〜う、次はちゃんと教えといてくださいよ〜?そしたら私、今度はがんばって応援しちゃいますからねぇ!」
「ああ、約束するよ!」
それに対し、ジンはあくまでも気障にそう言って微笑を返す…
あくまでも…あくまでも、気障(きざ)に、クールに。
眼鏡の女の子は、ケイに向かってにっこりと笑いかけている。
「どうでしたか、ケイ君?」
「委員長…残念、負けちまったよ!」
「!…えっ…そ、それは、残念だったね…」
ケイの口調はサッパリしたもので、そこからは落胆の色は感じられない。
それでも、それを聞かされた眼鏡の女の子は、ぱっと目を見開き…哀しそうな顔で、ケイを見返す。
が、ケイはけらけらと明るく笑い、そんな彼女に言って見せるのだ。
「いいや、今日から思いっきり特訓だ!そして今度は…俺たちが勝つさ!」
「そうね…!」
「次は、委員長もはじめから来てくれよな!」
「!…もう、『委員長』ってのはやめて、って言ってるでしょ?…『スズ』って呼んでよね?」
「あ、ああ、ごめん…スズ!」
彼女にそう言われ、ケイは少し照れながら…そう言いなおした。
そうして、わずかに苦笑いをする彼の瞳を、彼女は微笑みながら見ている…




…一方。
三人娘の登場で、すっかり蚊帳の外のゲッターチームの三人組は、というと…
「…」
「…」
「…」
ぽつーーーーーん、と、三人寂しく立ち尽くしながら、きゃあきゃあと楽しげなケイたちを見ていた。
目を点にしながら、立ち尽くして…
「…」
「…」
「…」




あれえー、なんか、あっち…楽しそうだねー
なんかー、空気がピンク色ー、ってかんじだねー
なんちゅうかー、華やかっていうかー、うれしそうだねー
ああー、なんかー…なんつーかー…

何だか、何か、…おんなじ三機合体ロボットのパイロットなのに。
何か、俺たちが勝ったのに。俺たちが勝った、はずなのに。
何だろうこの負けた感。何だろうこの敗北感。
何か、違う。あっちは、何か…
何か…何か…なんだか…




う ら や ま し い




ぴゅるるるー、というような、さびしげな風が、リョウたちの後ろを吹きぬけていった。
彼らは…リョウは、ハヤトは、ムサシは、男三人仲良く、ぽつーーーーーんと立ち尽くしているのだった。
点目のままで。




「…ねえ、お父様。どうしてリョウ君たち、さっきからあんなに暗くなってるの?」
「…」
そして、その晩。早乙女研究所。
ケイたちは、呉石博士・予備パイロット三人娘と一緒に宇宙ロボット研究所に帰っていった。
もちろん、いつの日かの再戦を約束して…
しかし、不思議なことに。
対ゲッP-X模擬試合にも勝利し、あらわれたメカザウルスの撃退にも成功したはずのゲッターチーム…
その三人とも、勝利に酔うでもなく浮かれるでもなく、ただただソファーに座り込み…ひたすら、薄暗くなっていた。
その表情は浮かなく、とても大勝をあげた後とは思われない…
その理由がわからないミチルは、不審そうな表情で父親に問うた。
「ゲッP−Xとの模擬試合、勝ったんでしょ?なのに、なんでまた…」
「ミチル」
と、彼らと同じく黙り込んでいた早乙女博士が、口を開いた。
「なあに?」
「あのな…お前の友達に、」
一瞬のためらい。
そのわずかな空白の後、博士は…ぼそぼそ、と小さな声で、こうつぶやいた。
「お前の友達に…ゲッターロボに乗れそうな女の子が、二人ほどいないかな?」
「…は、はあ?!」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまうミチル。
突然わけのわからないことを言い出した父親に目を白黒させている。
「いるわけないでしょ、そんなの!何でまた、そんな…」
「い、いや、いいんだ。すまなかった、気にしないでくれ…」
娘の至極まっとうな返答を途中でさえぎるように、詫びの言葉をかすれる声で口にし…
再び、早乙女博士もうつむいたまま暗くなってしまった。
「…??」
父親の発言、その理由など理解できるはずもなく…
早乙女ミチルは、ただその大きな瞳をぱちくりさせるのみだった。



そんなわけで、ゲッターロボ対ゲッP-Xという、前代未聞の合体変形ロボット対決は…
ゲッターチームの思春期野郎ども三人の心の中に、なにか苦いものを残して終わったのだった。
…率直にそれを聞かされた、早乙女博士の胸にも。



(The End...?)